「才能がない人間」が「天才」と共に生きるための処方箋『ボールルームへようこそ』

岡田 篤宜2015年11月02日 印刷向け表示
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ボールルームへようこそ(1) (講談社コミックス月刊マガジン)
作者:竹内 友
出版社:講談社
発売日:2012-05-17
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みなさんは、「自分には才能がないな」って感じたことありますか?僕の場合、趣味でやってるテニスの試合でものすごく上手な人と組んだりすると、思わず感じてしまいます。明らかにラリーの正確さやボレーの鋭さに差がある。一方、自分は一生懸命練習や試合にも打ち込んでいるのに、なぜか成果に結びつかない。果ては自分のプレーの拙さゆえ、相方に迷惑をかけてしまう。とってもいたたまれない気持ちになって、どうしてうまくいかないんだろうと考え込むこともしばしばです。


ですが、たとえ才能を持たずとも、たとえばその相方を引き立たせることに徹するプレーをすれば、おなじフィールドで戦うことができると思います。今回紹介させて頂くマンガでもそのことを学びました。その道も決して楽な道ではないことは確かでしょうが、自分よりはるかに才能ある人たちと肩を並べて仕事(プレー)をするには、有効な手の一つです。ですから、今回はあえて黒子に徹する主人公の姿から学ぶことをレビューしていきます。


その前に、この作品のあらすじをカンタンにご紹介!『ボールルームへようこそ』とは・・・

「平凡な中学生、富士田多々良は何の目標も見出せず、無為な日々を過ごしていた。そんなある日、不良に絡まれているところを謎の男に助けられる。 男が多々良を連れて行った先はなんと、社交ダンスの教室! 同じ学校に通うダンサーの女の子、花岡雫や、そのパートナーで天才ダンサーの兵藤清春らに触発されながら多々良のダンススポーツにかける青春が幕を上げる!!」

「気づく」ことの大切さ

主人公は決して優れたダンスの才能をもっているわけではありません。しかし、彼には「気づく」力がありました。その力を使って、才能あるパートナーとの演技を成立させます。

 竹内 友『ボールルームへようこそ』

本来なら自分が目立ってナンボの競技ダンスの世界で、ましてやリーダーと言われる男役が相方のサポートに徹するなどまずありません。ですが、彼は試合に勝つため、パートナーをより輝かせるためのダンスを踊ろうとします。その際、彼がもともと持っていた「気づく」力が発揮されます。パートナーがどこに行きたいのか、どんな技をしたいのか、持ち前のカンの鋭さで感じ取り演技する。技術や体力で及ばなくても、パートナーと心を一つにすることで、試合を乗り切るのです。


結果、彼自身は入賞することができなかった代わりに、パートナーの赤城真子を入賞させることができました。

竹内 友『ボールルームへようこそ』

「気づく」という力が、自分の技術のなさをカバーしてくれる。だからこそ、「気づく」という力の大切さが、この主人公を見ていて感じました。以前、ナインティナインやロンドンブーツ1号2号のマネージャーをしていた方のお話を聞いたことがあります。その方がおっしゃっていたのは、「新人時代、ナインティナインの二人と仕事をしていて、すごく「気づく」力が鍛えられた。二人のタバコが切れそうになると、すぐに買いに行って、なくなったころを見計らって二人に渡した。それを繰り返していくうちに、だんだんと二人からの信頼を得られるようになった」ということでした。今でもその時培われた技術が役に立っているそうです。「気づく」力がその方を大きく飛躍させるきっかけを作ったことは間違いないと思います。

花と額縁

「花と額縁という言葉があります。作中でも使われているこの言葉は、主にものごとを絵画にたとえて言った言葉です。花となるべき“絵”の周りを、その絵にふさわしい額縁が飾ることで初めて“芸術”として完成する。どちらが欠けても「作品」として成立しないということを表した言葉です。花は女性、額縁は男性のことを指しています。


作中の男性ダンサー(リーダー)と女性ダンサー(フォロワー)の関係性を表したこの言葉をはじめて聞いたとき、僕には作家と編集者の関係が頭をよぎりました。マンガも作家と編集者が協力し合って作る芸術です。作家を花と見たてて、編集者がその額縁となり、作家の魅力をサポートする。このとき編集者には、やはり作家のことに「気づく」力が求められると、インターンを経験して実感したことです。


どうすれば作家さんに気持ち良く作業をしてもらえるのか、いち早く作家の行動を予測して動く。絵の才能がない編集者は、作家の能力を引き出せるような力が必要になります。そこで、恐らく「気づく」力という能力も大事になるでしょう。「気づく」力を高めることを心がけたい。

才能ある人と歩むために

仕事をスムーズにするのは「気づく」力あってのことだと思います。いかに相手が考えていること、どうしてほしいかを考えて、それにふさわしい行動・提案をする。これができれば、たとえ才能を持たずとも同じフィールドに立つことができるのではないでしょうか。来年から多くのクリエイターさんと一緒に働く身として、「気づく」力を高める努力をしていきたいと思います。みなさんももし才能ある人とペアを組むことがあるなら、この作品の主人公のように、「気づく」力を高めておくと、うまく仕事をこなすことができるかもしれませんよ。

竹内 友『ボールルームへようこそ』

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