経営者が「金を出すこと」以上の誠実さはあるか!!『スティーブズ』

佐渡島 庸平2015年11月12日 印刷向け表示
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スティーブズ 3 (ビッグコミックススペシャル)
作者:
出版社:小学館
発売日:2015-11-12
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会社を創業して、ぶつかる大きな壁は、組織の壁だ。

サラリーマンの時に組織の壁に限界を感じて起業したのに、すぐにまた組織の壁にぶつかってしまう。しかし、組織の壁と言っても、種類はまったく違う。サラリーマンの時は、組織が固定化してしまって新しいことができない壁だ。でも、ベンチャーの場合、「組織がまだない」という壁だ。

組織としての仕組みや企業文化は、空気みたいなもので、僕が活躍できていたのは、その力なのだということはなかなか意識できない。外にでて、自分ごとになってはじめて、空気だと思っていたものは、誰かが汗水たらして構築しないといけないものだったのかと、気づくことができる。

今、僕が起業したコルクは、組織の壁にぶつかっている。それを乗り越えないかぎり、僕が思い描いている未来を実現することはできない。

そして、あの偉大なるジョブスも、組織の壁にぶつかっている。3巻は、まさにそのジョブスの姿が描かれている。

会社を成功させるためには、アイディアと実行力だけではダメだ。組織を作っていくためには、人間的に成長し、成熟しないといけない。

しかし、成熟するための安全な方法など、どこにも存在しない。壁に思いっきりぶつかり、跳ね返され、傷つき、立ち上がってまた壁にぶつかりにいくことで、成熟していける。

ぶつかるしかない。お利口に、安全地帯にいながら、成熟することなどできない。

そのぶつかる様子を見ながら、僕は自分ごとのように感じて、痛みを感じながら読んだ。

そして、あの偉大なるジョブスですらそうだったのだからと、自分を慰め、励ました。

社員がついてこれるように最大限、ゆっくりのペースで前に進んでいるつもりでも、後ろを振り向くとはるか後ろに社員はいる。

こんな光景は、残念ながら、思い当たる節がないわけじゃない。

 うめ『スティーブズ』3巻

 うめ『スティーブズ』3巻

うめ『スティーブズ』3巻

会社に複数の社員が入ってきて、大きな夢は共有しつつも、社員それぞれの人生もある時、創業者はただの言い出しっぺにすぎない。

そのことを頭と感情で理解していかなければいけないのだ。

 うめ『スティーブズ』3巻

最後に紹介するシーンは、ネタバレが嫌な人は読まない方がいい。

だが、あいにく金を出すこと以外に、俺はまだその誠実さを示す方法を知らない

というセリフが、グッときた。

 うめ『スティーブズ』3巻

このセリフを生み出せた、うめさんは、すごい。

起業したことで、僕は、お金と時間の感覚が大きく変わった。

社員や協力してくれる人々に、感謝を伝えたくても、自分自身が未成熟でお金という手段を使ってしか、その感謝を伝えることができないと痛感することがよくある。

また、お金の道具としての、力の大きさも実感せざるをえない。お金以外にそんな風に使える道具は、他にほとんど思いつけない。

スティーブズの結末は、誰もが知っている。ジョブスは、この後、やはり一度、組織の壁の前に敗退し、また復活する。話の魅力は、結末にはない。何度も立ち上がり、ぶつかりつづけるジョブスの姿にある。そして、うめさんのスティーブズは、それを描こうとしている。

スティーブズ 1 (ビッグコミックス)
作者:うめ
出版社:小学館
発売日:2014-11-28
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スティーブズ 2 (ビッグコミックス)
作者:
出版社:小学館
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スティーブズ 3 (ビッグコミックススペシャル)
作者:
出版社:小学館
発売日:2015-11-12
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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