生死を左右する現代の「神」の物語、オススメ医療マンガ11作品まとめ

兎来 栄寿2015年11月14日 印刷向け表示
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こんにちは、マンガサロン『トリガー』店長の兎来です。

近年、グルメマンガが驚くほどに細分化してきていますね。ファンタジーとグルメを掛け合わせた今年一番の話題作である『ダンジョン飯』を筆頭に、燻製に特化した『いぶり暮らし』、ゆかり料理に特化した『ゆかりちゃん』、戦中戦後の食を描く『戦争めし』、スープに特化した『オリオリスープ』などなど……枚挙に暇がありません。

一方で、医療マンガも同様に細分化してきているのをご存知でしょうか。医療マンガといえば、『ブラックジャック』を始めとして凄腕の医師がメスを振るい、重篤な危機にある命を救う外科の物語が花形です。しかしながら、現在ドラマ放映中の産婦人科を描いた異色の名作『コウノドリ』を始めとして、最近では今までになかった分野の医療マンガの名作が増えてきています。そこで、今回はお薦めの作品を紹介していきます。

フラジャイル(1) (アフタヌーンKC)
作者:恵 三朗
出版社:講談社
発売日:2014-11-21
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1巻の「あなたがガンかどうか診断するのは外科医である。◯か×か」と書かれた帯が目を引く本作。そう、答は×。あなたがガンかどうか診断するのは、この作品で描かれる「病理医」なのです。1巻発売時には「これは確実に近い将来実写ドラマ化される!」と確信し、マンガサロン『トリガー』の「今後確実にメディアミックスされる作品棚」に陳列していました。そして、予想よりも遥かに早く、来年一月から長瀬智也さん主演でのドラマが放映開始だそうです。ただ、それも納得できる程に、他で描かれずこのマンガで描かれる専門知識を活かした話作りは秀逸。病理医という普段縁遠い仕事のことが解りますし、そのテーマを抜きにしたとしても上質で見応えのある人間ドラマが素晴らしく、強くお薦めしたい一作です。

麻酔科医ハナ (1) (アクションコミックス)
作者:なかお 白亜
出版社:双葉社
発売日:2008-06-28
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 「年収3500万円でもやりたくない仕事」とまで言われる、麻酔科医をテーマにしたマンガです。自殺者数も他の科の二倍である麻酔科医を主人公が辞職しようとする冒頭から始まる物語。しかし、人手不足というリアルな事情によって職務を継続していきます。外科医と一緒に手術に立会う重要な仕事ながらも、日本ではあまり日の当たらない麻酔科医の仕事が綿密に描写されます。この作品を読んでおくと、他の作品でのオペシーンの医学用語が一部解るようにも。医局のキャラクターも一人一人立っており、笑える所では笑えます。救急の現場で明滅する命の灯火への向き合い方、そして他人の命の救う仕事によって磨耗する自分自身のケア、普遍的な仕事のやり甲斐や取り組み方についても考えさせられる良い職業マンガです。

ほたる ~真夜中の歯科医~(1) (ニチブンコミックス)
作者:高田靖彦
出版社:日本文芸社
発売日:2013-04-27
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耳鼻科や眼科などは身近すぎて逆にマンガにしにくいのかもしれません。それでも、歯科マンガにはこんな名作が生まれています。人相が悪く口も悪いものの、腕は確かで根底には優しさと真摯さを感じさせる主人公。派手さはないものの、アダルト向けの重過ぎず軽過ぎない丁度良い塩梅の人間ドラマを楽しませてくれる燻し銀のような作品です。1巻で止まっていますが、続けば確実に映像化も果たされるであろうクオリティの隠れた名作。もっと『ほたる』で歯科について勉強させて欲しいです。

ホスピめし みんなのごはん (ジュールコミックス)
作者:野崎 ふみこ
出版社:双葉社
発売日:2011-08-17
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 病院に勤める管理栄養士を描いた作品。「食」という観点から医療を描きます。「食べることは生きること」と繰り返される『ホスピめし』シリーズでは、管理栄養士の仕事を通して様々な人々の「食」と「生」に触れて行きます。減量食から妊娠中の食事まで、老若男女問わず色々な立場の悩み、想いに共感するポイントを見付けられる内容。心地良い読後感と共に、今一度自分の中食生活について見直してみようという気持ちにさせられます。

エーヨーヒーロー (マーガレットコミックス)
作者:宮越 和草
出版社:集英社
発売日:2014-11-25
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こちらも栄養士の職業マンガですが、ある意味「病院食」をテーマにしたグルメマンガと言っても過言ではありません。「『美味しい』は心も体も救う」と信じて活動し、「塩を抜くだけなら猿でもできる」と時に毒舌も放つ美人管理栄養士のバイタリティが素敵な作品です。彼女によって、既存の「粗末で美味しくない」という病院食のイメージが毎話覆されて行きます。ラーメンしか食べないラーメン王に食べさせる病院食など、お金を払って食べたいレベル。食そのものについても改めて考えさせられる作品です。1巻完結なのがもったいない位ですが、その分サクッと楽しめる良作。

看護助手のナナちゃん (ビッグコミックススペシャル)
作者:野村 知紗
出版社:小学館
発売日:2011-03-30
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タイトル通り、看護助手という立場から見た病院業務をエッセイ的に綴った作品です。ゆるキャラのような可愛く親しみが持てる絵柄ですが、それに反して中身はリアルでハードな部分も。認知症になったおばあちゃんに財布を盗まれたと喧伝されてしまったり、病院から脱走したおじいちゃんを必死に探し回ったり、心労や生傷も絶えない現場。介護を経験していると共感する場面も多々あり、ナナちゃんに感情移入しました。それでも、一人一人の患者に心を尽くして笑顔で献身的に前向きに勤め続けるナナちゃんの姿勢に勇気を貰えます。家族や患者本人の心からの感謝される場面は、仕事のやりがいそのものに触れたような嬉しさがあります。読むと、自分も頑張ろうと思える作品。

病室で念仏を唱えないでください 1 (ビッグコミックス)
作者:こやす 珠世
出版社:小学館
発売日:2013-04-30
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坊主でありながられっきとした医者でもある男性を主人公にした異色な作品です。タイトルからするとギャグマンガのようにも思えますし、実際に「やべ!! 聴診器と数珠間違えた!!」といった笑えるシーンも随所にあります。まだまだ修行中で煩悩も多く、悟りの境地には遠い主人公。しかし、読み進めて行く内に彼が抱える過去、そこから生じる命を救いたいという想いが解っていきます。助かる見込みが非常に薄い手術を受けさせるかどうか選択せねばならない家族、虐待を受けた子供……四苦八苦し悩める人々に、仏の教えを説いて悩みに寄り添おうとする姿には心が動かされます。

MF動物病院日誌 1 (MAYS BEST)
作者:たらさわ みち
出版社:少年画報社
発売日:1994-10
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おいでよ動物病院! 1 (オフィスユーコミックス)
作者:たらさわ みち
出版社:創美社
発売日:2007-05-18
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 動物病院ものというのはもうそれほど珍しくはないでしょう。そして、まず誰もが『動物のお医者さん』を思い浮かべると思います。ただ、その次位に私が好きなたらさわみち先生のこの両作品。読んでいないという方も多いと思われるので、今回お薦めしておきたいと思います。オムニバス形式で様々な動物の様々な症状や治療法、獣医や動物を取り巻く環境や現状が描写されて勉強になり、動物を飼う時に求められる責任や獣医という仕事への認識を改めさせられます。うさぎの正しい抱き方なども学べます。そして、命の温かさや尊さに感じ入り、時に目頭が熱くなるシーンも。子供に読ませたくなる、情操教育的意義のある作品です。

余談ですが、たらさわみち先生のTwitterでは日々かわいいネコの画像がアップされているので、猫好きの方にオススメです。

リヒト 光の癒術師-ハイレン-(1) (エッジスタコミックス)
作者:明
出版社:小学館クリエイティブ
発売日:2015-10-10
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最高の癒者(いじゃ)である最高癒術師(ナイチンゲール)を目指し、癒者見習い(リアリン)として日々努力する少女の物語。「癒者にとって最も大切なものは技術ではなく、折れそうになる心を笑顔で支え救おうとする心」という教えを胸に抱き、どんな状況下に置かれても前を向いて進もうとする主人公ティナ。雑用一つとってもそれは患者が心安らぐために必要なことなんだ、とする姿勢が気持ち良いです。王道少年マンガの持つ面白味がありますが、驚くのはこれを描いている明先生が現役看護師であるということ。世界観はファンタジーですが、ファンタジーであるからこそ描ける命の物語を今後も追究して欲しいです。

グランドジャンプ 【無料連載版】
作者:横幕智裕
出版社:集英社
発売日:2015-04-01
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まだ単行本にはなっていませんが、『Smoking Gun 民間科捜研調査員 流田縁』の横幕智裕先生原作・『いでじゅう!』のモリタイシ先生作画という豪華コラボレーションによりグランドジャンプで連載が始まった『ラジエーションハウス』。こちらは、放射線科医と診療放射線技師を描いたという作品です。『フラジャイル』の4巻でも登場しましたが、「ドクターズドクター」とも呼ばれる職種を描く『ラジエーションハウス』の今後にも期待を寄せています。公式サイトで1話試し読みができます。

コウノドリ(1) (モーニング KC)
作者:鈴ノ木 ユウ
出版社:講談社
発売日:2013-06-21
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 もちろん、『コウノドリ』も強くお薦めです。マンガサロン『トリガー』オーナーの、自身に子供ができたことによる実感を伴った熱いレビューはこちら

生きる上で、健康や医療というテーマと無縁でいることはいられません。今は縁がなかったとしても、もしかしたらいずれお世話になるかもしれない世界の事情や起こり得る現象を知っておいて損はないでしょう。そのことは自分のためだけではなく、人のためになる場合もあります。この機会にマンガという形で触れてみては如何でしょうか。

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