外交官マンガで学ぶ本物の交渉術『ジャポニカの歩き方』 表面的な勝ちや負けではない実利を交渉から生み出す方法

筧 将英2015年11月17日 印刷向け表示
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ジャポニカの歩き方(1) (イブニングコミックス)
作者:西山優里子
出版社:講談社
発売日:2011-08-23
  • Amazon Kindle


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より
私は広告代理店で働いているのですが、広告プランを検討する前にお客さん/クライアントから「オリエンテーションシート」というものが出されることがあります。(主に競合コンペの場合です)。

オリエンテーションシートには、例えば、

新商品が◯◯が来年発売します。ターゲットは◯◯で、販売目標は◯◯個。
予算は◯◯円で、コミュニケーションプランを提案してください。

実際はデータなどが入りちゃんとしていますが、概ねそのようなことが書かれており、
このオリエンテーションシートに基づいて、広告プランを考えていきます。
さて、実はこのオリエンテーションシートに入っていない情報があったりします。

例えば、
・新しい社長はかっこいいCMが好み
・今までにやってきたことには飽きたから変えたい
・コストは最低限に抑えたい

など。

確かにこのような「個人的な意思や意見」は文章には落としにくいものなので、
しょうがない、というのもわかります。 

予算は◯◯円=建前
コストは抑えたい=本音
かっこいいのが好き・飽きた=もっと言いにくい本音

この本音と建前の間をさまよいながら広告の仕事を進めているというのが実情です。
この本音部分ですが、ぶっちゃけ

それは言われないとマジ想像できないっす。

ってこともたくさんありました。

でも、広告の仕事だけでなく、どんな仕事でも、
友達や家族などの人間関係においても
同じような本音と建前を使い分けているのが普通ですよね。

いろんな状況があると思いますが、その中で、
最もハイプレッシャーな状況で、
本音と建前の世界で交渉しているのが”外交官”だと思います

(国対国の交渉なんて考えるだけでも頭痛そう)

今回紹介する『ジャポニカの歩き方』は、そんな外交官・大使館で働く人々の話。
 

作者の西山さんの実体験に基づく作品

 
『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より

作者西山さんの父親は大使館に勤め、幼少時のラオスで過ごしており、
その経験などを元に描かれています。

楽しさもあるが危険もある、出会う人の国籍も違う、そんな経験を現実とし体験しているだけあって、重みや現実感を感じる部分が多くあります。大使館・外交官という普通の人では知ることができないことをテーマにマンガをかけるのは西山さんぐらいかもしれません。
 

小さくまるくおさめようとする主人公「青海空土」


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より  

青海空土は、日本での生活をこよなく愛する青年。大学4年生の時に仲間と海外旅行へ行くが、現地でトラブルに巻き込まれ、それが原因で内定を取り消されてしまう。再就職も上手くいかず、ある日バイト先で知り合った外交官・横溝に仕事を紹介される。その仕事とはラオ王国での「在外公館派遣員」だった。キャッチコピーは「ゼロからの海外勤務ストーリー」。主人公の青海空土(あおみ からど)は上南大学文学部国文科卒業。小心者でお人好し。小さくまるく収めようとする等、日本人のステレオタイプの塊。 (wikipediaより引用)

この青海が主人公なんですが、ダメダメの若者。あるきっかけから、大使館で働くようになりますが、この手の漫画にありがちな「ありえないほどスムーズな人物成長」は無く、経験不足の中、失敗を重ねながら(という失敗ばかり)、じりじりと経験を積み、じっくりリアルに成長していきます。

主人公は世界の在外公館(大使館や領事館)に2~3年の契約で派遣される「在外公館派遣員」となるのですが、大使館における役職が下記になっているのを知ったのははじめて。興味深い。
 


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より  

三国間のトラブルをどうおさめるか

主人公の青海が大使館で働くきっかけとなったのが以下の状況です。

各国の大使館夫人が集まったバザーにて、フランスとコートジボワールの人が共同で作ったケーキに金属片が入っていました。あなたならどう解決しますか?
 


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より  
あちらを立てればこちらが立たず、そもそもどちらが悪いかもわからない非常に面倒な状況。この状況に対して主人公はこのように発言します。

 


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より

 
『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より


その場ではまるく収まりますが、それに対する日本の大使の反応は、
 


『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より

『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より

『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より

『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より

『ジャポニカの歩き方』1巻(講談社)より

相手の本音と建前と今後の自分(自国)の立場を考えるというのは非常に難しいというのがわかります。その場だけおさめても、彼ら彼女らとの関係は続くからです。

このあと物語では、本音と建前を使い分けなければいけない事態が起こり、
その度に主人公が四苦八苦しながら解決していきます。

現実には、マンガのようにうまくいくことなんてほとんどないかもしれませんが、
「相手の建前と本音を考えながら物事を進める」
ということを意識することにおいて非常に優れた作品です。

と、ここまではまじめに「交渉」という切り口からレビューをさせていただきましたが、
ストーリー・内容だけを見ても、楽しみながら読める作品です。
海外にいく際にでも読んでみるとよいと思います。

ジャポニカの歩き方(1) (イブニングコミックス)
作者:西山優里子
出版社:講談社
発売日:2011-08-23
  • Amazon Kindle
ジャポニカの歩き方(2) (イブニングコミックス)
作者:西山優里子
出版社:講談社
発売日:2012-01-23
  • Amazon Kindle
ジャポニカの歩き方(3) (イブニングコミックス)
作者:西山優里子
出版社:講談社
発売日:2012-04-23
  • Amazon Kindle

また、交渉術に関しては、交渉に関する古典と呼ばれるライフネット生命の岩瀬さん翻訳の『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』と滝本哲史さんの『武器としての交渉思考 』がわかりやすかったので、合わせて読むとよいかと思います。

ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!
作者:ロジャー・フィッシャー 翻訳:岩瀬 大輔
出版社:三笠書房
発売日:2011-12-10
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  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

武器としての交渉思考 (星海社新書)

作者:瀧本 哲史
出版社:講談社
発売日:2012-06-26
武器としての決断思考 (星海社新書)
作者:瀧本 哲史
出版社:講談社
発売日:2011-09-22
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版 (講談社文庫)
作者:瀧本 哲史
出版社:講談社
発売日:2013-11-15
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  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

 作者の西山さんは過去に『Harlem Beat』というバスケットボール漫画を描いていました。バスケ好き、スポーツ好きにはおすすめ。

Harlem Beat (1) (週刊少年マガジンコミックス)
作者:西山優里子
出版社:講談社
発売日:1994-12-14
  • Amazon Kindle

 他にミュージカルをテーマにした『ダーティー・クライスト・スーパースター』も描いています。  

ダーティー・クライスト・スーパースター(1) (モーニング KC)
作者:西山 優里子
出版社:講談社
発売日:2014-02-21
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