『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』 編集部解説

インターシフト2015年11月28日 印刷向け表示
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眠っているとき、脳では凄いことが起きている: 眠りと夢と記憶の秘密
作者:ペネロペ・ルイス 翻訳:西田美緒子
出版社:インターシフト
発売日:2015-11-20
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私たちの脳は、眠っているあいだも休むことなく活動している。それはたんに疲れをとるといった消極的な働きではなく、むしろ私たちの生活に(とりわけ脳自身に)欠かせない積極的な役割を担っていることが解明されつつある。本書はこうした睡眠と脳、記憶や夢とのかかわりを、最新の研究成果を踏まえて紹介した格好の入門書だ。と同時に、「快眠」から「活眠(脳を活かす眠り)」へと発想の転換をうながす刺激的な一冊でもある。

心の大掃除

睡眠の役割として、本書がまず注目するのは、「心の大掃除」である。ゆったりとした徐波睡眠 が脳のニューロン間(シナプス)の結合を<弱める>ことによって、不要な記憶を刈り込んでいくという。いわばラジオのチューニングのように、重要な情報の雑音に対する比率を高め、その記憶を際立たせていくのだ。これは「シナプス恒常性モデル」と呼ばれ、トノーニ(わが国でも話題になった『意識はいつ生まれるのか』の共著者のひとり)らが検証している。 

トノーニらによる実験。睡眠中に、ショウジョウバエの脳の樹状突起(シナプスが多くある)が刈り込まれているのがわかる。トノーニらは人間でもこうしたチューニングが行われていることを示した。

創造力や洞察力を発揮するために

睡眠中の脳は映像や音楽を再生するように記憶を再生しており、その一部は夢となって現れるようだ(夢については 第7章で、アラン・ホブソン以降の最新の知見が紹介されている)。ここでも徐波睡眠が、記憶再生のために重要な役割を果たしている(活動的システム固定化モデル)。

さらに眠りは、新しい情報を古い情報と統合するとともに、さまざまな出来事をトータルに捉え、そこから共通の原則や規則性などを要約するといった高度な作業もこなしている。このことは未来を予測したり、創造性・洞察力を発揮するのに役立つ。著者らは情報オーバーラップ(iOtA)モデルによって、その仕組みに迫っていく。

情報オーバーラップ(iOtA)モデル:共通した記憶の構成要素だけが睡眠によるダウンスケーリング(記憶や情報の刈り込み)後に残る。

記憶力を高め、学習効果を促すには?

睡眠を投薬のように効果的に利用しようとする試みも進んでいる。 たとえば、記憶力を高め、学習効果を促進するさまざまな実験や方法――すぐに使えるやさしいノウハウもあるので、ぜひ試してほしい。興味深いのは、たんに睡眠中に記憶を強化するだけではなく、まったく新しいことがらでも学習できるのを証明した実験だ。このことは本人の意思にかかわりなく、睡眠中に悪事でも無意識に刷り込める危うさを示唆している。
 

嫌な記憶を削除する

睡眠は気分や感情の調整にも大きな働きをしており、それにはレム睡眠が関係しているらしい。また、眠りは記憶を新たに固定(再固定化)し、干渉を受けにくくする。こうした関係を応用して、「嫌な記憶を削除する」という治療が効果をあげている。
 

IQを向上させることができる?

IQと睡眠紡錘波のかかわりも見逃せない。睡眠紡錘波の密度はIQの高さを示すとともに、全般的な知能の尺度にもなることがわかってきた。だとすれば、人工的に睡眠紡錘波の密度を高めることで、知能を向上させられるようになるかもしれない。

睡眠と脳の関係はまだまだ謎も多いが、本書を読めばそこには驚くような可能性も広がっていることがわかるだろう。 

インターシフト はや創業30年になりますが、出版社としてはまだヒヨッコです。自分たちが面白いと思う本だけをコツコツと作り続けて、なんとかどうにかやってます。今後の刊行予定などをちらっと・・・『人類を変えた素晴らしき10の材料』『眠りと夢と脳の秘密』『知能はどこまで伸ばせる? なにが効く?』『脳を操る寄生生物』(タイトルは変わる場合あり)etc
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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