『トヨタの自工程完結』新刊超速レビュー

田中 大輔2015年11月27日 印刷向け表示
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『トヨタの自工程完結』というタイトルを見ただけでは、なんのことだかさっぱりわからないと思う。この本を本屋で最初に見たとき、トヨタ・工程というところを見ただけで、なんとなく生産管理やカイゼン関連の本なんだろうなと思い、自分には関係ないからと、本を手にとることはなかった。きっと多くの人も同じように感じているのではないかと思う。

でも待ってほしい。この本は生産管理の本ではなかったのだ。この本は仕事の進め方を劇的に変えることができる新しい取り組みについて書かれたものだ。いろんな本屋でたくさん並んでいたので、序章を立ち読みしてみて驚いた。これが、めちゃくちゃおもしろいのだ。私たちは「実は基本的なことができていない」という認識を持っていなければいけない。とか、みんな無駄なことはしていないつもりです。しかし、それは「やっているつもり」になってしまっているだけだ。と言った刺激的な言葉に引きこまれて購入し、最後まで読み終わったいま、私はこの本を今年No.1のビジネス書として推したいと思っている。

この本はとにかく日本の多くの人に読んでほしい。いや読まれるべきだ。特に経営者やマネジメント層には、この本を読んでもらい、ぜひとも仕事のやり方を改善していってほしいと思う。トヨタが実践している「自工程完結」が多くの企業に広まれば、仕事の質はあがり、ホワイトワーカーの生産性は確実に向上するだろう。さらに一生懸命やったのに、それが結果につながらないというようなこともなくなるので、働いている人のモチベーションもあがるはずだ。

「自工程完結」という言葉を聞いても、正直なところ、なんのことやら?という感じだと思う。でも数年後には、きっとトヨタ生産方式やカイゼン、QCサークルといったトヨタ発のビジネス用語と同じように、様々な企業で使われる新しい概念として認知されていることだろう。

自工程完結とは「良い仕事しかできない、良いものしか作れないという条件は何なのか、ということを徹底的に、科学的に実現しようとする考え方」だ。端的にいうと、仕事の質を高め、失敗をなくす仕事の進め方のことだ。トヨタの中ではカイゼンと両輪をなすものとして、2007年から全社的に導入されている。

工場の仕事に限らず、どんな仕事にも必ずうまくいく仕事の進め方=工程があるという。ホワイトカラーの仕事でいうところの工程は「意思決定」である。では正しい意思決定をして、正しいアウトプットを出すには何が必要なのか?自工程完結は以下の6つのポイントからなる。

[ポイント1]「目的・ゴール」をはっきりさせる
[ポイント2]「最終的なアウトプットイメージ」を明確に描く
[ポイント3]「プロセス/手順」をしっかりと考え、書き出す。
[ポイント4]次の「プロセス/手順」に進んでよいかを判断する基準を決める
[ポイント5]正しい結果を導き出すために「必要なもの」を抜け・漏れなく出す
[ポイント6]仕事を振り返り、得られた知見を伝承する

この中で大事なのは「プロセス/手順」を洗い出すことだ。手順が違っても、なんとなくで物事がうまくいってしまうということはおうおうにあるが、それではダメで、自分がどんなふうに考えて仕事をしているのかをロジカルに分解していかなくてはいけない。誰が見ても、こういう手順で、こういう情報を集めて、こうやって書類を出せばいい。というレベルまで落とし込んでいけば、いつでも誰でもその仕事ができるようになるのだ。

この考え方を取り入れることによって得られるメリットは以下のとおりだ。

[メリット1]部分最適がなくなる
[メリット2]上司が進捗確認できるタイミングが作れる
[メリット3]上下左右のコミュニケーションが深まる
[メリット4]各部署間の固有の強みを最大限に活かせる
[メリット5]部門内の情報共有が進む
[メリット6]会議が減る
[メリット7]理不尽なところがみえる
[メリット8]失敗が減り、妥協がなくなる
[メリット9]生産性が上がる
[メリット10]モチベーションが上がる

いいことばかりである。そんな都合いいことばっかり言って……と思う人もいるかもしれないが、この本を読めば「自工程完結」をおこなうことで、いかに無駄が減り、仕事が効率よくできるようになるかがわかるはずだ。ポイント、メリットともに詳細は割愛した。その部分を読めば、ここに書かれていることが夢物語ではないことがわかるだろう。この本がたくさんの人に読まれることで、「自工程完結」が多くの日本の会社に取り入れられることを切に願う。

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
作者:大野 耐一
出版社:ダイヤモンド社
発売日:1978-05
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トヨタといえばこの本。発売から30年近くたっている、いまなお読み継がれている名著。

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