腐った「熱中時代」暴力の「金八先生」それが『地獄の教頭』

角野 信彦2015年12月12日 印刷向け表示
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地獄の教頭(1) (ヤングガンガンコミックス)
作者:大沼 良太
出版社:スクウェア・エニックス
発売日:2015-08-25
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今ではスカした刑事役の水谷豊さんも、「熱中時代」で教師を演じたときはそれはそれは熱い男という設定だった。熱い男であれば児童が抱えるあらゆる問題が解決できると信じられている時代だったのかもしれない。「熱中時代」の先生編は1978年10月からの半年と1980年7月からの半年間放送された。校長を演じたのは船越英一郎、教頭は小松方正で、校長が大らかなリーダーで、教頭は小うるさい補佐役で、事なかれ主義の官僚という典型的な関係が描かれた。

1979年10月から放送された「金八先生」は、「熱中時代」が小学生の教師だったのに対して、中学校の教師を武田鉄矢さんが演じた。「熱中時代」の問題がどちらかといえば校内に閉じていて、解決できるストーリーだったのに対し、「金八先生」で起こる問題は社会とつながりのあるものが多く、中学生の妊娠、暴走族(実社会では1978年がピーク)などの問題に向き合っている坂本金八(武田鉄矢)の姿に共感した。先生が頑張ればいつかは問題が解決されるという神話があった。もちろんのこと、校長と教頭の関係は「熱中時代」同様の関係性だった。

前置きが長くなったが、『地獄の教頭』の主人公、近衛修文は問題が解決されることがないという絶望が社会を覆う現代に登場してきた、北野広大であり、坂本金八である。彼は、不良教師や生徒の犯罪に、ありとあらゆる手段をもって立ち向かう。その手法のほとんど全ては法の境界線の向こう側、犯罪だ。モンスターペアレンツのPTA会長をたらしこみ、その写真をリークして家庭崩壊に追い込むなど、完全にインテリやくざの世界だ。

大沼良太『地獄の教頭』1巻

それにしても日本人はこうした「スーパースター」をまだ求めているのだろうか。アメリカでは、個人の教師のスーパースター性ではなく、ルールで問題を解決しようとする。校内でのルール運用に一切の弾力性を与えず、一切の寛容性なしに(ゼロ・トレランス)で犯罪予備軍の生徒を排除していく。排除することで、その他の生徒の権利を守ろうとする。

コロラド州のコロンバイン高校銃乱射事件で、犯人グループの生徒が、何度も危険な徴候を出していたにも関わらず、「教育」によって矯正できると考え、悲劇が起こった反省からとられている運営方法だ。

大沼良太『地獄の教頭』1巻

「俺たちは腐ったみかんじゃない」といったのは「金八先生」の加藤まさるだったが、このマンガで描かれる、暴力をつかってでも共同体に留まらせようする教師というのは、日本の教育に残された伝統の過激な形での表出なのかもしれない。それは学校という共同体に「とどまる生徒」にとっても「留まらせる教頭」にとってもやはり「地獄」なのだろう。


大沼良太『地獄の教頭』1巻

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