「もっとゆっくり過ごしたい」中高生8割。放課後、ゆるやかな時間を過ごす二人の帰宅部男子高校生『セトウツミ』

工藤 啓2015年12月16日 印刷向け表示
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セトウツミ 1 (少年チャンピオン・コミックス)
作者:此元 和津也
出版社:秋田書店
発売日:2013-12-06
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 2013年11月、ベネッセ教育総合研究所が全国の小学5年生~高校3年生8,100人を対象に実施した放課後の生活時間調査で、中高生の8割以上が「もっとゆっくり過ごしたい」と感じていると発表した。学校生活以外にも、部活や塾、塾や習い事と多忙な子どもたちの実態が浮き彫りとなった。

同調査では、受験生を除く中1~2年生の90%、高校1~2年生の70%が部活動に加入し、土曜日の大半で通学していることもわかった。学校によってはすべての生徒が何らかの部活動に参加を半ば義務付けられたりもしているようだが、部活動に加入しない「帰宅部」は放課後、どのように時間を過ごしているのだろうか。

『セトウツミ』は、高校二年男子の瀬戸と内海が、いつもの時間にいつもの場所で、ゆるやかに淡々と過ごす放課後を描く。大学受験のため塾に通う内海は、高学歴の姉の存在や家族から冷遇されている。

此元 和津也『セトウツミ1』描き下ろし2

一方の瀬戸は貧しい家庭、両親の離婚騒動、祖父の徘徊など複雑な環境だ。唯一輝けるサッカー部でもひとりの実力者の存在により、部活を辞めることになる。そんな二人が織りなす放課後のひとときは、時間に追われるように生きる現代人とは別空間のようである。

此元 和津也『セトウツミ1』序章1

此元 和津也『セトウツミ1』序章2

此元 和津也『セトウツミ1』序章3

そんな二人のシュールで笑える会話が展開されていくのが『セトウツミ』の醍醐味。淡々としながらも、高校生らしさは失われない。高校生男子は腹が減る。そしてときにはお弁当を忘れることもある。しかし、「忘れた」と素直に言えないのもまた高校時代の一コマだ。

此元 和津也『セトウツミ2』第八話2
此元 和津也『セトウツミ2』第八話3

瀬戸と内海の日常にふらりと現れる脇役も放課後生活に彩りをもたらす。左右対称、まっすぐセンター分け、曲がったことが大嫌いな男、田中真二は友人関係をうまく作れず、女手一つで自分と弟を育ててくれた故郷の母親に手紙を書くような少年だ。

此元 和津也『セトウツミ2』第九話1

由緒あるお寺の長女として生まれた樫村一期(一つ下の妹は一会)は、出会いを大切にする紅一点。内海に想いを寄せるが瀬戸と内海の関係にやきもちを焼く。

此元 和津也『セトウツミ2』番外編

瀬戸に想いを馳せるのは、ハツ美ちゃん。好きな人の前では言葉が出ないシャイネスを持つが、上下関係を超越する二面性を持ち合わせる。

此元 和津也『セトウツミ2』番外編

数字や屁理屈に弱い瀬戸からお金を刈り取ろうとする河原林五郎。瀬戸を簡単に手なずけるも、頭脳明晰な内海はロジカルに追い返す。空気を膨らませるだけでひとと笑顔にする自転車屋さんに一目惚れしたバルーンアート芸人のバルーンさんはベラルーシ出身の29歳。瀬戸が大好き、内海に冷たい。腕っぷしの強さで下級生を牛耳る鳴山は離婚で離ればなれになった父親から最後の慰謝料を受け取る。鳴山が18歳を迎える誕生日までという約束だ。

その他、余命宣告を受けた車いすの少女、顔がどうしても思い出せない野球部の馬場くんなど、ちょい役のキャラクターも何かしら生きづらさを抱えている。“フツウ”であれば、働いていたり、部活や習い事をしていたり、家庭のなかで包摂されていたりする放課後のちょっとした時間。“アタリマエ”「と思われる過ごし方をしていないひとたちが集う場所。そこで繰り広げられるユーモアのある人間関係とおかしみある”どうでもいい”コミュニケーションは、「もっとゆっくり過ごしたい」と訴える80%の中高生、彼らをそのような環境におく社会に対するやわらかな風刺である。

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