『ど根性ガエル』の次のヒット作が出るまでのその娘の地獄『ど根性ガエルの娘』 全ての創作者に向けられた地獄の黙示録

菊池 健2015年12月18日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ど根性ガエルの娘 (1)
作者:大月悠祐子
出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
発売日:2015-11-26
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

 壮絶な漫画家人生を送った父を持つ娘が、自身も漫画家になろうと思うものなのでしょうか?

 東京で漫画家向けシェアハウスを運営する我々のところには、日々、様々な形で上京してくる漫画家がいます。

両親の全面的なサポートを受けるもの。反対に全く理解を得られず、自分の住む場所すら親に伝えないもの。条件付で3年間だけと約束して漫画家を目指すと上京してくるもの。親と漫画の話は絶対にしないというもの。逆に少ないのが「親が漫画家」という漫画家志望者です。

会社員、公務員、事業家、教育者や各種士業など、親の仕事を子が継ぐということは、良くあるパターンだと思います。しかし、漫画家の子が漫画家になるケース、どうも少ないみたいなんですね。これまで10年間で360人以上の漫画家を支援してきましたが、私の記憶で両親に漫画家という人は、確か1人だけです。そんな、なかなかいない親子漫画家の形の一つを見せてくれるのが『ど根性ガエルの娘』です。ここには、一つの衝撃的な形がありました。

[引用 以降全て:KADOKAWA『ど根性ガエルの娘』大月悠祐子 ]

娘さんが漫画家だと、編集者からの電話を取り次ぐ人も、プロの漫画家ということになるんですね。ただ、ここから先は、吉沢家の特殊事情となりそうです。

娘、プロの目で現状を把握。娘、父を探す。

父、切れる

娘、なす術なし。

 

吉沢やすみさん、いわずと知れた大ヒット漫画家です。最近も、松山ケンイチさんを主人公に『ど根性ガエル』が実写化されたばかりです。

そんな大ヒット作家にも、人知れず、そして家族をも巻き込んで、大変に悩み苦しむ時期がありました。

知人の漫画家さんたちと話すときに、「ご自身のお子さんを漫画家さんにしたいですか?」と聞くと、大抵は「いやぁ、それはないわぁ~。」と返って来ます。本人が希望すれば、無理にとめることはないのでしょうけども、自分の子供に、自分が通ってきた苦しみを味あわせたくないと考えるのでしょう。それはさながら、このようなイメージでしょうか。

 「無」から「有」を生み出すことが漫画家稼業です。

その苦しみを漫画にすれば正にこうなるのでしょう。本書で数少ない見開き2ページに大ゴマを取った、叫びだと思います。しかし、ぴょん吉だけにカエルの子はカエルと申しましょうか、吉沢家では娘さんも漫画家になり、またその旦那様まで漫画家さんです。家族みんなで地獄を見てきたはずの一家が、そうも漫画という仕事に魅せられている理由は、きっとこれから語られてくるのだと思います。

ちなみに、ちょっとネタばれにもなるのでしょうが、漫画家の田中圭一先生が、ぐるなびサイト上にて『田中圭一の「ペンと箸」』というコーナーで、「漫画家のご子息と思い出の食事を語る」というコーナーをお持ちです。その中に、吉沢やすみ先生の息子さん(本作著者の弟様)がインタビューされている回があります。

【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】
第八話:「ど根性ガエル」吉沢やすみと練馬の焼肉屋 - みんなのごはん

こちらでは、本書第1巻より少し先の、吉沢家が良くなっていく過程のヒントも書かれています。この田中先生の「ペンと箸」コーナーにおいて、多くの漫画家のご子息が紹介されていますが、彼らの中で漫画家やその周辺の仕事についている方は、15人中2‐3人、およそ2割弱というところでしょうか。やっぱりちょっと少ないようには感じますねぇ。

ところで、父と娘が同じ漫画家であれば、父から娘へ伝えられる漫画家としての生様のようなお話にも興味がわきます。例えばこんなお話です。

 漫画ファンの頭の中では、親子漫画家さんがこういったお話をしているシーンこそ萌えポイントのような気がします。本書は壮絶なお話の中で、良くも悪くも父の背中が娘に影響を与えていると思うのです。しかし、その真因がどこにあるのか、お話は2巻以降に続いていくのでした。

本作は以下サイトで連載中です。単行本になった1巻分は一部引き上げられていますが、続きは読める形ですね。しばらく、ご両親の馴れ初め話が続くようですが、それも面白いですよー。

本作は漫画家漫画というよりは、壮絶な家族の戦いが、たまたま漫画家親子の家族にあったという趣ではありますが、それにしてもなかなか垣間見られないノンフィクションを読めたなと思うのでした。つくづく、漫画家になるということは業の深いことだなと再確認しました。だから面白いのだと思うわけですが。あのぴょん吉も、当然電子化されております。

ど根性ガエル:第1巻 男はつらいよの巻
作者:吉沢 やすみ
出版社:オフィス安井
発売日:
  • Amazon Kindle

大月悠祐子さんの作品はこちら。かなり絵のタッチは違いますね、本気モードなのだと思います。なんとamazonレビューはオール5です!

妄想少年観測少女(1)<妄想少年観測少女> (電撃コミックス)
作者:大月 悠祐子
出版社:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
発売日:2013-01-31
  • Amazon Kindle

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

HONZ会員登録はこちら

人気記事