エリートが目指したオタク芸術の最前線とはどこにある?『エロゲの太陽』

荒井 健太郎2015年12月21日 印刷向け表示
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「エロゲこそがオタク芸術の最前線なのである」

(『エロゲの太陽』より)

私がこのマンガの中で一番好きなセリフだ。確かに、PC98の時代からエ◯ゲはオタクたちの夢であり、希望であった。それ故、オタクコンテンツを作りたい優秀な戦士たちは暗黒に足を進めたのだろう。そして、「エロゲこそがオタク芸術の最前線である」この言葉はスマホが普及する前までは真であったように思う。一度でもオタクいや、エ◯ゲに踏み込んだ人ならわかるはずだ。 

最近流行しているアニメやラノベにはエ◯ゲ出身のライターさんが多く起用されている。これは裏を返せば、優秀な人材がエ◯ゲ業界では食べていけなくなったために、表の世界に出てきているのだ。

ホワルバの丸戸史明さん、俺つばの王雀孫さん、暁の護衛の衣笠彰梧さん、田中ロミオさん、虚淵玄さんなどなど、オタクであれば誰もが知っているような有名エ◯ゲライターさんが表の世界でブレイク作品を多数輩出して、世の中を賑わしている。(個人的には丸戸さんと衣笠さん推しだ。)エ◯ゲライターが躍進している理由に関しては下記の記事がよくまとまっているのでぜひ一度読んでみて欲しい。「なぜエロゲ出身のライターがアニメやラノベ業界でブレイクしているのか?」

エロゲの太陽(1) (ビッグコミックス)
作者:はまむらとしきり
出版社:小学館
発売日:2014-11-28
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さて今回紹介するこのマンガは、エリート商社マンの主人公が、仕事での失敗から人生どん底に落ち、エ◯ゲ会社で働き始めるというシーンから始まる。エ◯ゲ会社のリアルを描いた作品だ。それがスピリッツに連載されていたのだから驚きである。主人公が就職するエ◯ゲ会社に何故か美少女しかいないのはお約束(笑)。これだからエ◯ゲ脳の作者はだめなんだ。(褒め言葉)

主人公が巻き込まれながらゲームを作り上げていくこのマンガは、エ◯ゲ会社を潰した作者の切実な経験に裏付けられているからか、なぜかとてもリアルだ。たとえば、エ◯ゲは発売日が1ヶ月ずれるのは当たり前なのだが、その裏では何が起こっているのかということがよく分かる。見切り発車で作りはじめるため、地獄のデスマーチが始まるのだ。発売された後も度々修正パッチはでるし、そもそもクリアできないようなバグもよくある。まあ、エ◯ゲなので仕方がない。

(『エロゲの太陽』より)

さらに、ところどころの作者の自虐ネタが共感を呼び起こす。作者が昔ボツにされた企画書なども度々出てくる。個人的なツボは音ゲー×脱衣のゲームであるが、詳しくは本編で確認して欲しい。それゆえ、エロゲに一度は触れたことがある人なら一度は読むべき作品だ。あの時代、仲間と話したくだらない話、ネタゲームが鮮明に思い出されるはず。まあ、エ◯ゲですが。

また、見逃しては行けないのが、主人公の仕事に対しての姿勢だ。さすが、総合商社マン、大事な場所を隠す作業一つも最高のクオリティを求める。この手の作業手を抜くと本当に捕まるので、大切な作業だ。まあ、作っているのはエ◯ゲなんですが。

(『エロゲの太陽』より)

エロゲ業界はコンシュマーゲームと同じく、現在窮地に立たされている。エロゲはモンスターハンターもびっくりなくらい時間がかかる。たとえば、アニメ、映画化もされている『Fate/stay night』であれば60時間は最低でもかかりますし、スマホで短い時間の体験をシェアすることで喜びを覚える人たちは、何十時間もかけてやっと結果を共有できるゲームを好き好んでやることはないでしょう。まあ、エ◯ゲですし、そもそもの人口が少ないのですが。

エロゲ業界は現状のカタチでは生き残るのは厳しいというのが現実だ。現状のモデルでは、緩やかに衰退していってしまう。抱き枕も根本的な解決にはならない。ここで閉じこもって、縮小するのではなく、培ってきたノウハウをオープンにアニメ、ラノベの周辺領域はもちろん、もっと広く活用して活躍して欲しい。エロこそがオタク文化を作りあげてきたことは疑うことなき事実である。たかがエ◯ゲされど、エ◯ゲ。

個人的には、PCが普及すると同時にエ◯ゲが流行ったように、VRが普及するにつれて新しいオタクの夢と希望が生まれることに期待しています。というか作りたいのです。オタク芸術の最前線で戦った者たち、その屍が記録されるこのマンガはオタク史に残すべき迷作となるはずです。

エロゲの太陽 2 (ビッグコミックス)
作者:
出版社:小学館
発売日:2015-03-30
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エロゲの太陽 3 (ビッグコミックス)
作者:
出版社:小学館
発売日:2015-06-30
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エロゲの太陽 4 (ビッグコミックス)
作者:
出版社:小学館
発売日:2015-09-30
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