「生き方」が自分を苦しめる「呪い」にもなる。そんなファンタジー『BLACK LAGOON』

岡田 篤宜2015年12月23日 印刷向け表示
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あなたは人生を「こう生きていきたい」という意志がありますか?自分に正直に生きたいとか、対立を避けて平穏な日々を過ごしたいとか、いろんな生き方があります。私は、感じたことを大切にして、その思いを伝えていくという生き方がしたいです。


自分の存在を規定する「生き方」というものは、まわりの状況に翻弄されたとしても、自分を見失わないために持つものです。なぜなら、人生はどこか意地の張り合いみたいなところがあるから、ふとしたきっかけで、全く意図していなかった「人生」を送ることがしばしばです。意地の張り合いで、道を外れた自分を守ってくれるはずの、法律、お金、特技、そして仲間がいなければ、最終的には「気合」と「根性」で乗り切るしかありません。その「気合」と「根性」を生み出すもの、それが「自分がこうありたいと思う意志であり、願いであり、欲望」=「生き方」だと思うのです。


ただ、一方で、その「生き方」が自分自身を縛り、苦しめるものでもあると思います。もっと楽な道、安全な道を選ぶこともできたのに、自分の信念がそれを許さない。まったく合理的ではないけれど、それでもその選択をしてしまう。今回ご紹介するマンガも、誰も、何も、自分を守ってくれない状況の中で戦い抜くための唯一の「鎧」であり、ときとして「呪い」でもある「生き方」について深く考えさせられるマンガです。はじめに、今回のレビューとはあまり関係しませんが、このマンガのカンタンなあらすじをご紹介いたします。

日本の一商社・旭日重工(あさひじゅうこう)の社員だった岡島緑郎は、会社の機密ディスクを運ぶ任務中、南シナ海で違法な運び屋・ラグーン商会にディスクを奪われ、自らも拉致されてしまった。商会は、ディスクと緑郎を引き換えに旭日重工からの身代金奪取を狙っていたが、機密漏洩を懸念した旭日重工と彼の上司・景山は、ディスクと緑郎を両方消滅せんと画策する。その後、機転を利かせてピンチを乗り切った岡島は、会社への不信感とまた抹殺されかかるのではという懸念から、表の世界で生きることをあきらめ、商会の船「ブラック・ラグーン号」に乗り込み、危険な任務へ赴くようになる。」

 

 

BLACK LAGOON 1 (サンデーGXコミックス)
作者:広江 礼威
出版社:小学館
発売日:2002-12-12
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「彼女には「生き方」しかなかった」

このマンガに、「ロベルタ」というキャラが登場します。普段はお屋敷のメイドをやっている彼女。一見おとなしそうに見えますが、実はとてもおっかない人なのです・・・

 

 

 

 

 

 

 
 

               (『BLACK LAGOON』より)

登場して早々にチンピラのドテッ腹に風穴をあけたこの人。実は元兵士でテロリスト。祖国の革命を信じて戦い、最後は夢にダマされていたことを知って軍をやめ、匿ってくれたお屋敷で使用人として働いているという経歴の持ち主。やることなすこと想定外なことばかりですが、屋敷の当主とその息子には忠義をつくす。そんなキャラクターです。

彼女はとても真面目でした。真面目すぎるがゆえに祖国を思って戦い、そして大勢の人を殺します。人に対して冷酷になれる彼女の生き方は、戦地での彼女の身を守りました。しかし、その生き方は平穏の訪れとともに、自身を蝕むことになります。

彼女のお屋敷の当主が暗殺されてしまったとき、彼女には選択肢がありました。ひとつは残された当主の息子といっしょに平和な生活を過ごすか、それとも自分の今の仕事を放りだして復讐の鬼となるか。そして、・・・彼女は後者を選びます。結局、そういう生き方しか、彼女は知らなかったのです。
 

 
             (『BLACK LAGOON』より)
 
 
 
ヒトは、誰もが自分でじぶんの「生き方」を規定しているように感じます。けれども、「生き方」が、自分の未来を規定してしまうという現実に直面することも珍しくありません。彼女の場合、守るべきものを放りだしてまで復讐を選ぶのですから、彼女にとっての「生き方」は、彼女の人生を脅かす「呪い」となったのです。

現実世界でも、盗みを繰り返す人や暴力をやめられない人がいます。私が大学で心理学を専攻していて、暴力をふるうことをやめられなくて悩んでいるというクライアントの話を聞きました。結局、そういう人は実は親から暴力を受けていて、暴力をふるうことでしか自分を表せなくなっていることが多いようです。


一度でもいびつな「生き方」をえらべば、それは後々自分の人生を苦しめるものとなります。だからこそ、自分がどう生きたいか、常に考え続ける必要があると思うのです。その生き方次第では、あなたを間違った選択から守る「鎧」になってくれるはずです。作品のなかでも、自暴自棄になった彼女の意識を救ったのも、ひとりの少年の「生き方」でした。

 

               (『BLACK LAGOON』より) 

仇にとどめを刺すことなく、だれも殺さず連れて帰ります。そんな「生き方」をした少年だったからこそ、復讐の鬼になった彼女の暴走を止めることができました。彼もまた、自分の「生き方」を信じぬいていたからこそ、戦場のなかを歩いても、目的を見失わないで生き抜くことができたように思います。


どう生きたいか、何を信じていたいのか、人によって様々です。ですが、この「生き方」というものの力をあなどってはいけないようです。正しく使えば自分をどんな困難からも身を守る「鎧」になってくれるだろうし、間違えれば自分を一生苦しめる「呪い」になります。あなたは、どんな「生き方」をして、セカイと戦っていきますか?「呪い」に動かされる被害者にならないため、「呪い」から身を守ってくれる「鎧」を身に付けるために。。。

BLACK LAGOON 2 (サンデーGXコミックス)
作者:広江 礼威
出版社:小学館
発売日:2003-07-19
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ブラック・ラグーン 10 (サンデーGXコミックス)
作者:広江 礼威
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