バフェットは、投資法よりその人生の方が何倍も学びがある。今こそ読みたい『マンガ ウォーレン・バフェット』

東海林 真之2016年01月12日 印刷向け表示
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2015年は、日経平均株価が6月に20,000円を超えたり、またフィンテック(FinTech)という言葉が一般に広く知られるなど、日本の金融サービス業界に新たな変革の兆しが見えた年でした。そして2016年。

一年の計は元旦にあり
新年明けて、改めて「投資」に目を向けた方もいるでしょう。

投資といえば、まっさきに思い浮かぶといっても過言でないのがウォーレン・バフェット氏の名前。2007年に6兆円を超える資産で世界長者番付1位になったバフェットは、元は1万ドルほどの資金から、株式投資によってその資産を築き上げました。

そのため、「バフェットの投資法を学びたい!」と思うのが人情なのですが、毎年出版されるバフェット本には、バフェットの名を冠しつつも著者の勝手な思い込み投資法が書かれていることが多いもの。まわりくどいかもしれませんが 、第三者が思い込みで書いたバフェットの投資法よりも、「バフェットの生きざま」を知った方がはるかに有用なのではないかと思います。

そこで今回紹介したいのが『マンガ ウォーレン・バフェット』(講談社+α文庫)。200ページほどの1冊のマンガ本なので随分とかけ足の理解にはなりますが、バフェットを知る入り口には良い本だと思います。この本を読むと、たしかにバフェットが資産を莫大に増やした方法は株式投資でしたが、彼のエピソードからは株式投資法"以外"の部分に学ぶ点が多いことが分かるはずです。

ここからは、マンガの紹介も兼ねて、バフェットの個性的な行動とエピソードを抜粋してみます。

 

バフェットは、投資家である前に経営者だった

バフェットを多少知る人には有名ですが、彼は投資家である以前に、優秀な経営者でした。6歳の時すでに缶コーラの売り子をしており、14歳の頃には新聞配達でサラリーマン並みの月収を得ています。また、17歳で始めた理容店へのピンボール設置ビジネスでは、事業を成立させた後に1200ドルで売却しています。後に投資先の経営改善を図ることもするバフェットですが、元々は自らビジネスの試行錯誤を行い、そして「いかに付加価値をつけて稼ぐか」を考え抜くという、経営の本質を身を以て学んでいたのです。

p.20 配達の効率化を考えるバフェット少年

p.21、22 1紙の配達にとどまらず、複数紙の配達や日用品販売の御用聞きまで手掛け、付加価値と収益を生む

惚れ込む投資理論は徹底的に試し、学び、考え抜いた

投資方法についても、一朝一夕に確立した訳ではありません。バフェットというと「長期投資」や「割安株を買う」ことがすぐに語られますが、それは現象にすぎず本質ではない。常に投資法を考え続け、自らが惚れ込む投資理論がみつかるや否や、理論家に教えを請うたり、自ら実践して検証したりすることで、独自の投資哲学をつくり上げてきたことが、彼から学ぶべきことなのだと思います。

p.26、30 『賢明なる投資家』に出会い、当時教授をしていた著者ベンジャミン・グレアムに教えを乞う(20歳の頃)

p.95、96 41歳の頃、企業の成長性を重視する「フィッシャー理論」を知り、投資先選定方法を変えていく

投資先の情報収集にかける情熱と労力が並はずれていた

「割安株を買い、長期に保有する」ことが仮に正しかったとしても、その割安な投資先を、私たちはどのように探すでしょうか。四季報(あるいはYahoo!ファイナンス)を眺め、IR資料を過去数年分調べ、時にはSPEEDAで分析する? 最後の文節はともかくとしても、このような資料・データ分析ですら、実際に充分に時間を割く人は1割もいないでしょう。

けれどバフェットはその程度で満足しません。投資会社を興した後はもちろんのこと、学生の頃から、足で調べ、他人と異なる仮説を立てては検証し、自らが納得のいく投資先を探していたのです。

そこまでした結果として、長期投資や、投資資金の3分の2をつぎ込むような思い切った投資が行える。この情熱と行動力(そして仮説・検証の論理的な思考法)こそが、彼と他の投資家を分けた力なのでしょう。

p.34-35,37-38,40-41 その企業について(徹底的に)調べる

p.58-63 目先の利益にとらわれず、~を見極める

 

さらにバフェットについて知りたい人は

今回はさらっと1冊で読めるマンガのバフェット本をおすすめしましたが、さらにバフェットを深く知りたいという人は2009年に出版された『スノーボール ウォーレン・バフェット伝』を読んでみるのがよいでしょう。めちゃくちゃページ数が多く、読み応えありすぎる本ですが、それゆえに表面的ではない多くの学びのヒントが隠されている本です。

ここまでの文章ににじみ出ていたかもしれませんが、私は、バフェットの後半の人生における投資方法は、多くの人にとって"使えない"方法なのだと考えています。それは、彼が大きな投資金額をもっているがゆえにできた打ち手、彼が自らの投資会社をもっていたからとれた戦略が、その投資方法に表れてしまうからです。けれど、幼少期から投資会社が大きくなりかけるまでの彼からは、一般人である私たちも学べることが(後半期よりも)大きい。多くの本はバフェットの後半期における投資家人生に焦点をあてがちですが、この『スノーボール』は人生すべてを丁寧に追っている点からも、読み通す価値がある本でしょう。

スノーボール(改訂新版)〔上〕 ウォーレン・バフェット伝 (日経ビジネス人文庫)

作者:アリス・シュローダー 翻訳:伏見 威蕃
出版社:日本経済新聞出版社
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また一方で、今回「マンガ」や「独自の投資哲学」に興味をひかれた方には(テッパンかもしれませんが)『インベスターZ』を紹介します。このマンガを知らなかった人には、以下のレビューが参考になると思いますので、よければ参照してみてください。
圧倒的なわかりやすさ 三田紀房的マンガ日本経済入門『インベスターZ』

それでは。2016年が、よい年になりますよう!
 

インベスターZ(11) (モーニング KC)

作者:三田 紀房
出版社:講談社
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インベスターZ(1) (モーニング KC)

作者:三田 紀房
出版社:講談社
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