誰かの言いなりになって生きるのは楽だよね。でもそれでいいの?『月刊少女野崎くん』 マンガ家志望必見!紙面をタヌキだらけにされないための処方箋

岡田 篤宜2016年01月17日 印刷向け表示
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月刊少女野崎くん(1) (ガンガンコミックスONLINE)
作者:椿 いづみ
出版社:スクウェア・エニックス
発売日:2012-04-20
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コルクでインターンをしてよく感じるようになったことは、「マンガ家も人間関係で苦労してるんだな~」ということです。たとえば、この間コルクに『働きマン』や『さくらん』の作者である安野モヨコさんが来て、その際おっしゃっていたのですが、『働きマン』のメイン担当であった編集者とコミュニケーションがうまく取れなくて、当時はとにかくやきもきしていたんだそうです。どうして自分のネームを読んで、そんな解釈ができるのかと、なぜこうも話がかみ合わないんだと、打ち合わせのとき、多々感じていたようです。

ただ、安野さんは、その人に作品に書かれていることをうまく伝えようとして、そのたび「はっ!?ひらめいた!!」みたいな感覚になって次回のお話が出来上がる、みたいなことがよくあったそうです。そのため、安野さんご自身はその方に感謝の念も抱いているのだとか・・・。作品と見つめあうと同時に、周りの人間ともちゃんとコミュ二ケーションをとらないといけないのがマンガ家なんだなと、気づかされました。

今からご紹介する作品もいわゆる『マンガ家マンガ』なのですが、そのなかで担当編集とのコミュケーションに苦労しているシーンがオモシロおかしく描かれています。編集者、マンガ家、もしくは編集者かマンガ家に興味のある人、ぜひこの作品を読んで、笑いながらでも「作家・編集者との付き合い方」について考えて頂きたいです。

最初にかんたんなあらすじをご紹介します!『月刊少女野崎くん』とは・・・

「浪漫(ろまん)学園に通う女子高生・佐倉千代は勇気を振り絞り、かねてより想いを寄せていた隣のクラスの男子生徒、野崎梅太郎に告白する。ところが野崎は、女性の筆名で少女漫画雑誌に連載を持つプロの人気“少女マンガ家”だった!?・・・」

「マンガ描いてて一番大変なこと?それは・・・コミュニケーションかな?」

 マンガ家だって人間です。人間の好き嫌いはあるもの。どうしたって受け入れられないものはあるんです。ここでは主人公と前の担当編集者、「前野」について語られます・・・

          『月刊少女野崎くん』/椿いずみ
 
人のアイディアを堂々と「自分のアイディアだ!」と言うこのあつかましさ!確かにイラっと来るの、よく分かります!・・・でも実際いますよね~こういうやつ。だいたいこう言うヤツにかぎって次はこう言うんですよ。「ん~~、やっぱりぼくって天才(てへぺろ)」みたいな。

だがしかしかし、かしかしですよ~~~。こいつのイチバンやっかいな部分はこんなもんじゃなかったのです。こいつのイチバンやっかいなとところ、それは・・・「他人に自分の嗜好を強制すること」なんです!!
 
 

 

          『月刊少女野崎くん』/椿いずみ

少女マンガのロマンスな空間に、突如タヌキが襲来!?いったいこのタヌキは何なんだよ!?「どこにでもいる普通の女子高生」って言ってるけど、どこの世界にタヌキ連れてる普通の女子高生がいるんだよ!?みなさん見たことありますか?タヌキ連れてる女子高生、・・・ないですよね、当たり前ですけど。本当に意味不明です。特に4コマ目、どうしてヒロインと男の間にしれっとはさまっている!?そしてなぜ二人はそれを気にしないのか!?・・・まさか子どもか!?お前らの赤ちゃんなのか!?とすると、これタヌキのラブコメだったの!?ヒロインも男もホントはタヌキなの!?(まるで平成ぽ〇ぽこじゃん・・・)もういろいろツッコミどころがありすぎてカオスな空間が生まれています。こういうメチャクチャな展開を、この「前野」という編集者は作家に強いるのです、自分の趣味嗜好のために!

          『月刊少女野崎くん』/椿いずみ
 
もはやタヌキの存在に圧倒され、キャラの特徴が頭にまったくはいってこない・・・。あんまりタヌキの紹介ばかりすると、このレビューまでがタヌキのレビューとして誤解されそうで非常にこわいですね。このマンガさえ「あっ、タヌキのやつでしょ!」と言われかねない。・・・おそるべしタヌキの力。なぜこのマンガ家は担当編集にこうもいいようにされているのか、まったくわかりません・・・
 

「NO」と言えないマンガ家、都ゆかり

人付き合いでなかなかNOが言えない人っていますよね~。すごく良い人なのに、相手の要望にすぐしたがっちゃう。結果、自分にとって良くないことでも引き起こしてしまうのです。自分のマンガをタヌキだらけにされているマンガ家、都ゆかりもその一人。
 
            『月刊少女野崎くん』/椿いずみ

 ・・・ヒロインに完全に「タヌキのマンガ家」認定されてるじゃないですか!この人、本当に編集者のいいように利用されているのですが、どうしても自分の意見を主張しきれないのです。担当編集との打ち合わせで、「次はゾウとかどうですか?」と言われたので・・・

               『月刊少女野崎くん』/椿いずみ

明らかに考えてるところおかしいよ!!言う編集者も編集者だけど、鵜呑みにしちゃうあなたもあなたですよ!!ゾウなんてまずマンガで描かれることないですから!!あと、やっぱりタヌキ連れてるし!!もはや本体がタヌキなのではないかという疑問さえ生まれてくるこの構造・・・絶対もっと強く言うべき!!

自己主張は大事!

パートナーの言うことを信じるのもいいですが、鵜呑みにしてはいけません。はっきりと自分の自己主張をしていくべきです。それはマンガ家と編集者であってもおなじことです。たしかに、編集者の言うことをきかなければ、作品にかたよりが出たりバランスが崩れたりして見づらい作品になります。編集者はマンガの完成度を高めるために、いろんなアイディアをくれたり、読者の目線になって感想を言ってくれる大切な存在です。


ただ、あまりにも編集者の意見を聞きすぎては、もはやその作品は自分の作品とは言えなくなってしまいます。さらに、編集者の意見を聞きすぎて、作品自体が打ち切りになっちゃったこともしばしば・・・。自分の思いややりたいことを相手にはっきり伝えて、編集者の意見とぶつかり合いながら、切磋琢磨していくべきだと思います。編集者はサラリーマンなので、売れる作品をつくろうとします。そのため、作品にとにかくトレンドや売れる要素を詰め込もうとしたりもします。

たとえば、現在『進撃の巨人』の担当編集をしている川窪さんという方も、かつて『反逆の影使い』という作品の担当をしていた際、「バディものが流行っていたからバディもののにした」、みたいなことをおっしゃっていて、とにかく「売れる要素」を大量にいれたんだそうです。しかし、連載はすぐに打ち切られてしまい、今でも心残りな作品なんだそうです。

売れる要素を詰め込んだからと言って売れるわけではない。トレンドに乗っかったからと言って、かならずみんなに認められるわけではないのです。だからこそ、あなたが一番なにを描きたいのか、自分の意思を強く持つことが大事だと思います。周りに振り回されているうちは、自分のやりたいことなんてできませんよ。

月刊少女野崎くん(2) (ガンガンコミックスONLINE)
作者:椿 いづみ
出版社:スクウェア・エニックス
発売日:2012-11-22
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月刊少女野崎くん(7) (ガンガンコミックスONLINE)
作者:椿 いづみ
出版社:スクウェア・エニックス
発売日:2015-12-22
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 ちなみに、このマンガの作者である椿いずみさんは、白泉社の「花とゆめ」でも『オレ様ティーチャー』という作品を連載しながら、ガンガン編集部に持ち込みをかけたというちょっと風変わりな人です。コチラの作品ももしよろしければ、お試しくださいませ!

 

俺様ティーチャー 1 (花とゆめCOMICS)
作者:椿 いづみ
出版社:白泉社
発売日:2008-01-18
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俺様ティーチャー 21 (花とゆめCOMICS)
作者:椿いづみ
出版社:白泉社
発売日:2015-11-20
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 「おまけ」

 「間違いありません、犯人は作者です」

          『月刊少女野崎くん』/椿いずみ
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
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