出版社がマンガの原稿を失くした!?賠償金は○○○万円!!『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』 ポップでダークなマンガ家漫画

宮﨑 雄2016年01月19日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
魔法なんて信じない。でも君は信じる。
作者:西島 大介
出版社:太田出版
発売日:
  • Amazon Kindle

今世紀No.1マンガ家漫画は何か!?
21世紀は大マンガ家漫画時代。巷にはマンガ家漫画があふれかえり、本屋でひとつやふたつの棚が作れるくらいのバリエーション。友情・努力・勝利の王道『バクマン』、島本和彦の激熱自伝フィクション『アオイホノオ』、少女マンガ家男子のラブコメ『月刊少女野崎くん』…などなど王道も粒も揃いに揃ったジャンルとして確立されています。
しかし、言いたい!ちょっと待てと!それらって結局ジャンルとしては「ファンタジー」じゃないかと。いや面白いよ?たしかに僕も『バクマン』読んでコマ割ってみたクチだけどさ、でも、やっぱり結局は登場キャラクターがマンガ家やってる漫画ってことだろう…?
そうじゃなくて僕が読みたいのは、知りたいのは、実際のマンガ家がどういう人なのかとか、どうやって仕事してるのかとか、そういう肌感覚が伝わってくるようなマンガ家漫画なんだよなあ…!!
と考え探し続けていたら見つけてしまいました。No.1マンガ家漫画、"このマンガ家漫画がヤバい"大賞…!プロとしてのマンガ家の姿が惜しみなく、描かれた、いやむしろ晒け出された、そう、言うなればこれはマンガ家"ドキュメンタリー"漫画!!それが
『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』です!!


ありえない事態が起こりました。

『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』より

生原稿。
それはマンガ家の作品であり財産。
世界にひとつだけの貴重。通常の商業であれば工場が納品した製品の所有権はメーカーに移るわけですが、マンガ家が原稿を納品しても所有権が移ることはありません。出版社はマンガ家から原稿を借りて、代わりに出版しているという形式をとるのです。よって原稿の管理は厳重に行われ、紛失などありえない…はずでした。
『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』はそんなありえない事態を経験されたマンガ家・西島大介さんが事の起こりと顛末を描いた作品です。
西島大介さんと言えば、ポップにデフォルメされたキャラクターが多めの余白を縦横無尽に駆け巡る『世界の終わりの魔法使い』や『ディエンビエンフー』が有名ですが、映画化された小説『陽だまりの彼女』の文庫版表紙と聞いてピンとくる方もいるかもしれません。
本作でも登場人物たちは上記作品と同テイストの可愛いらしい2頭身で描かれていますが、話の内容は超深刻極まりなしです。

のちに原稿を紛失する編集者Mさん。かわいい。『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』より

 特に、注目してしまうのは西島さんが出版社から渡された賠償金見積もり書のスキャン画像…!語句が一部黒塗りされたテキストと走り書きされたメモのガチ感。そこで弾き出されている何百万という金額も、見積もり書をもとに交わされる西島さんと出版社のやり取りも、この画風だからこそマンガとして楽しむことができますが、、、というかこれって表に出していいの???なやり取りのオンパレードです。 ああ、ワクワクがとまらねえっ!てなること間違いなしです。

 

原稿紛失!とりあえず電話するのは…?


僕が一番好きなシーンを紹介させてください。原稿紛失の報せを受けた西島さんが電話をかけるシーンです。真っ先に連絡したのは、原稿がなくなった作品とタイアップ企画を組んでいた編集者ではなく、本作の版元・太田出版の編集者でした。曰く、

 

括目せよ、これぞマンガ家だ!『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』より


マンガになるかもなァと」原稿を失くされた翌日にこの言葉。
そして原稿紛失発覚からわずか半年後に連載がはじまった『魔法なんて信じない。でも君は信じる。』。
これだァーーーーーッ!僕が読みたかったのは、こういうのだ!!!
これが、これが、これがプロのマンガ家なのか。ファンタジーづくりだけじゃあなくて、マンガ家にとって最悪ともいえる事態までをもエンターテインメントに昇華させるこの精神力。まさにマンガ家がどういう目で世界を見ているのか、その一端がわかるようなエピソード。これが読みたかったんだ!読みたかったのはこういう話なんだよなあ!! かくして決定!今世紀No.1マンガ家漫画!

…僕の独断ランキングなんて信じなくてもいい。でも面白さは信じて!

魔法なんて信じない。でも君は信じる。
作者:西島 大介
出版社:太田出版
発売日:
  • Amazon Kindle

 

陽だまりの彼女 (新潮文庫)
作者:越谷 オサム
出版社:新潮社
発売日:2011-05-28
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら

人気記事