ヒトならざるモノから、人を守る高い壁は、もう一つある。
『ストラヴァガンツァ -異彩の姫-』

小沢 高広2016年01月18日 印刷向け表示
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このモノローグを読んで、なにを想像するだろう。

人間たちの街は
高い城壁の内側に
発展した

 

ヒトならざる
モノに対しての
自衛である 

「そりゃもちろん、進撃の…?」
と思ったアナタ、残念、不正解である。
正解は『ストラヴァガンツァ -異彩の姫-』の第1話にあるモノローグだ。
 

ストラヴァガンツァ-異彩の姫- 1巻 (ビームコミックス)
作者:冨 明仁
出版社:エンターブレイン
発売日:2013-07-13
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主人公は、仮面の女王ビビアン。

公務では、フルフェイスの鉄仮面をかぶっているので、素顔を知るものはほとんどいない。となれば、もちろん『暴れん坊将軍』メソッドである。
日頃、仮面を被らずに、一市民・クラリアとして、国民と交流しながら、諸問題を解決したり、諸問題を起こしたりする。



『進撃の巨人』は、常々、ブレーキの壊れた自転車で、坂道を一気に駆け下りているような展開が魅力だと思っている。
その例になぞらえるなら『ストラヴァガンツァ』には、ブレーキングもハンドリングも完璧なBMXのトリック満載の走りを見ているような魅力を感じる。

1話目では、予兆に過ぎなかったある事件が、2話目以降、次第に前面に出てきて、物語の確固たる縦軸になる。ただここで紹介したいのは、コミカルなパート。
例えば、こちら。





『ストラヴァガンツァ』は、物語が深刻な事態であっても、この手のコミカルなシーンを挟むことを忘れない。

冒頭のほうでは、コミカルな展開だったが、次第にその分量が減っていき、気がつけば完全にシリアスな展開になる作品は、あんがい多い。それくらい「物語の縦軸」というのは強い。
映画は、シナリオが完成してから、撮影に入る。当然だ。ドラマやテレビアニメは、放映中も制作していることもあるが、それでもシナリオは、かなり先行しているし、もちろん完結までの構成は、ほぼ確定している。だが、漫画というのは、それらの表現と異なり「物語の完結が見えないまま、定期的に一部分ずつ公開していく」という独特のシステムだ。
稀に作者が「最終回は決まっている」と話すことがある(個人的には、あの手の発言の半分は、ハッタリだと思っている)。だが、それでも連載の人気、不人気という外的要因により、物語がいつ終わるかはわからない。なので一度「物語の縦軸」が動き出してしまうと、作者でさえ、意のままに操るのは容易ではない。

しかし、この『ストラヴァガンツァ』は、物語のコントロールがすばらしい。きちんと縦軸が展開しつつ、コミカルさも忘れないというのは、たいへんに難易度が高いことなのだ。
ちなみに、先ほどあげた侍女たちのシーン。のちに同じことをしながら、まったく別の展開につながる大事な要素だったりもする。心底、作者の技量に感心する。

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作者:冨 明仁
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