たまにはスタバで紙とペンを片手に『数学ミステリー X教授を殺したのはだれだ! 容疑者はみんな数学者!?』

山田 義久2016年01月25日 印刷向け表示
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数学ミステリー X教授を殺したのはだれだ! 容疑者はみんな数学者!? (ブルーバックス)
作者:タナシス・グキオカス 翻訳:竹内 薫
出版社:講談社
発売日:2015-11-20
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 おもしろいマンガが、マンガの棚以外に眠っていることがある。今日はそんな一冊。
子供から大人までサイエンス好きの垂涎の的、ブルーバックス。その新刊に、たまたまおもしろそうなマンガがまぎれていた。帯には、マイクロソフト主催の第6回「ヨーロッパ・イノベーティブ・ティーチャーズ・フォーラム」第3位!と書いてあり、これがなんのことかはさっぱりわからないが、なんかすごそうだし、本編も見た感じ120pくらいで薄いので、買ってみた。

テーマはタイトルの通り、”数学ミステリー”。
殺人事件の犯人を探すのだが、容疑者の証言が数学の問題になっており、読者はそれを解きながら真実を究明していくというストーリーである。

推理のために、紙とペンで数学(というか算数)の幾何問題に手を動かしたが、よく考えると10年以上ぶり。かなり新鮮で楽しかった。ただ、使った概念は、合同相似連立方程式、やや三角関数くらいの中学生レベルで、記憶の奥底を掘り起こすくらいでなんとかなるレベル。久しぶりに手で書く補助線、xの記号、細かい因数分解の計算、、、、と、なんかときめくものがあった。おそらく、受験に燃えたことある人は共感してくれるのではないだろうか。
例えば、勉強し始めたばかりの子供がいる方などは、一緒に謎解きをしながら算数の基礎概念を解説して尊敬を集める機会かもしれない。

しか~~~~し!、実はこの謎解き、その簡単な問題を解きながら犯人を見つけるストーリーとそのトリックを”第1階層”とすると、数学ならびに数学史に精通した人のみが「ははは~~ん」といいたくなるような巧みなトリックが第2階層”として隠れている。もちろん最後には、その二つの階層が合わさって一つの真実に辿りつくのであるが、その結末は、、、やや、非線形というか、「そうくるか」という感じで賛否両論であろう。
ま、それも含めて楽しんでほしいなぁと思う。

舞台は、1900年のパリ。数学史上かつてないほど重要な会議に出席するためにヨーロッパ全土から著名は数学者たちが集っていた。
そのなかの一人、ドイツ人数学者Xがスピーチをした。

その日の夜、宿泊先のホテルの食堂で作業をしていたX教授は、研究に没頭するあまり時間が経過するのを忘れていた。そして、一段落した際、ウェイターに水を注文。そして20秒後ウェイターが食堂に戻ってきた時には、X教授は死んでいた。

20秒の犯行。1秒に1m歩くとして、犯行時に食堂から20m以内にいた人が犯人となる。食堂の見取り図はこのようになっている。

容疑者は、ルネコンスタンティンピエールアイザックレオンハルトフリードリッヒベルハルトペイディアスソフィーエヴァリストの10名。全員数学者である。
そこからは容疑者ごとに章が分かれており、ジェラール警部と協力者の数学者クルトが、謎解きに挑む。

二人は、各容疑者ごとに(1)X教授との因縁、(2)犯行時にいた場所についての供述を調べていく。容疑者一人一人の供述は数学の問題になっており、それを我々読者はそれを解きながら犯行時に彼らが食堂までどのくらいの距離にいたかを計算していく。。。

※X教授と各容疑者との因縁が語られていく

※章の最後に容疑者の供述があり、読者は計算してその容疑者が犯人か検証する

食堂の設計図は幾何学的な図になっているページがあるので、私はそれをコピーして、実際に供述を書きうつし、余白で計算しながら、一人ひとり容疑を洗っていった。記憶が怪しい公式とかググれば一発ででてくるので、事前準備なしで挑戦してまったく問題ない。何がいいって、問題が難しすぎず、簡単すぎずちょっと「う!」って考えて、手を動かせば解ける、なんというか"頭のマッサージ"レベルの気持ちいい塩梅ということだ(ちなみに巻末に詳細解答もある)。

 

そして、全員の供述が終わった後、最後に謎解きの章がある。まぁ、もうちょっと我慢できないので言ってしまうと、各登場人物には実在のモデルがあり、実在の人物の業績が謎解きの重要なピースになっていたりするのだ。で、謎解きの後にモデルとなった実在の人物達の説明があり、数学史を垣間見ることができるというお得な本になっている。

いずせにせよ、入口のハードルは低いし、本編も100ページちょいと長くない。たまにはスタバでマックブックを閉じて、ちょっとすかした感じで紙とペンと持ってこの本と格闘してみるのはどうだろうか。新鮮な体験が得られることは保障したい!

・・・とまぁ、ここまで解説してきたが、実は引用した画像の内容や太字にしたキーワードは、その"第2階層"のトリックの重大なヒントになっている。数学の造詣が深く、超絶直感がキレっキレの人はこのレビューを見ただけで、この数学ミステリーの種明かしをしてしまうだろう。

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