24時間365日の緊縛プレイ。縄の名は法律。『カバチタレ』 激安牛カツに違和感を感じなかったあなたは読んだほうがいい!!

宮﨑 雄2016年01月30日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

昨日の夕飯はお惣菜コーナーで買った激安トンカツでした。

廃棄食品の不正転売事件が巷をにぎわせていますが、いち貧乏消費者としては構っちゃいられません。スーパーで80円の件の牛カツを見かけたとしても「今夜のおかずにもう一品加えてもいいかも…」くらいにしか思わなかったでしょう。安さの理由なんか考えないでカゴに入れ、腹に入れちゃいます。


今回の事件は、いろんな人がそんなふうに違和感をスル―したことで起きたと言えるかもしれません。発覚のきっかけになった牛カツは、売ることができないはずの人が売り、売られているはずのない場所で売られました。そこに違和感に感じることができたのは、件の牛カツ製造元であるココイチの方だけ。つまり当事者意識を持ったプロでもない限りは、わかりゃあしません。我々素人は違和感に気付くことができません。


だからと言ってスルーし続けていては、理不尽に損するばかりの人生です。生きていくためには、違和感に気付いて見えない敵と戦わなきゃいけません。そんなときの武器を教えてくれるのが『カバチタレ』という作品です。

カバチタレ!(1) (モーニング KC)
作者:東風 孝広
出版社:講談社
発売日:1999-11-19
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

 

24時間365日の緊縛プレイ。縄の名は法律。

『カバチタレ』が教えてくれる武器、それは法律です。 フランスの哲学者ドゥルーズは「法は行為の制限であり、制度は行為のモデルである」と言いました。法律は行為を制限する縄のようなものです。僕らは法律に、24時間365日生まれてから死ぬまで縛られ続けています。気付かなくても生涯緊縛プレイなのです。そして目に見えないがゆえに、トラブルの種になり、人間ドラマのネタになる。『カバチタレ』は、そんな法律を扱う行政書士事務所の仕事を描いた作品です。

バカは拳で殴り合い、オトナは法律で殴り合う。『カバチタレ』1巻より

事務所に訪れるのは法的トラブルでにっちもさっちもいかなくなってしまった人ばかり。件のカツを口にしていたら健康被害がでたかもしれなかったように、僕らもいつのまにかトラブルに巻き込まれる可能性があります。ですが"トラブルになっている"という状況は、金融機関から電話がかかってきたり内容証明を打たれるまではわからないもの。現実を文字や数字で突きつけられてから初めて「そんなのいきなり理不尽だ!」とトラブルを認識し、行政書士事務所の扉を叩くのです。


『カバチタレ』のケースでは、相談が始まってから更に状況が悪化していくことが多々ありますが、そのすべて依頼者自身がどういうトラブルの中にいるか認識していないことが原因です。見えない縄に縛られていることを忘れてもがき、自分で自分の首を絞めることになるという様が何度も何度も描かれています。要はトラブったらサッサとプロに相談して、素人は余計なことはしないのが吉ってことでしょう。原作者の田島隆さんは広島で実際に行政書士として活動をされている方でもあるので、圧倒的説得力です。

所長の大野は言います。

一枚の紙キレで人の人生を変えることもできる―ワシらの仕事はそういう仕事なんじゃ

法律は重くて、取り扱い厳重注意な武器です。だからプロでない私たちはその武器を振り回すことはできません。だからまずは武器を扱ってくれる人たちを知ることが、違和感に気付く助けになるでしょう。『カバチタレ』はあくまでフィクションですが、見えない理不尽に負けないための、予防線になってくれる作品です。

カバチタレ!(1) (モーニング KC)
作者:東風 孝広
出版社:講談社
発売日:1999-11-19
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

1999年から連載が始まった本作ですが、現在もモーニングにて第三部である『カバチ!!!』が連載中です。

カバチ!!!-カバチタレ!3-(1) (モーニング KC)
作者:東風 孝広
出版社:講談社
発売日:2013-12-20
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

 

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

HONZ会員登録はこちら

人気記事