パーソナルコンピュータ革命を起こしたのはスティーブ・ジョブズでもビル・ゲイツでもない!『スティーブズ』4巻 パロアルトで未来を創っていた男とその未来を実現した男たちの物語

角野 信彦2016年02月12日 印刷向け表示
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スティーブズ 4 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
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 世の中には「パフォーマー」と「コンセプトメーカー」がいます。それぞれがどんな生き方しかできないのかを知ることができるのがこの『スティーブズ』4巻です。

パーソナルコンピュータにおける革命的なイノベーション、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)を考案した、アラン・ケイは、自分の手を動かしてそれを作り上げたわけではありません。パロアルト研究所の優秀なエンジニアたちが彼の考えた未来を、「実装」させていきました。そういう意味で、アラン・ケイは典型的な「コンセプトメーカー」です。

そして、パロアルト研究所でこのGUIを見たジョブズは、GUIの考えを実現するマッキントッシュを開発することになります。マイクロソフトのビル・ゲイツもWindows95を開発し、GUIのコンセプトを自社のプロダクトに実装します。ふたりとも大変な経営者ですが、未来を自ら創り出す「コンセプトメーカー」というよりは、あるべき未来を実現することに情熱をかける「パフォーマー」なのでしょう。作品の中で、スティーブ・ジョブズがGUIについて語る場面が印象的です。

うめ(小沢高広・妹尾朝子) , 松永 肇一 (原著) 『スティーブズ』4巻

 

ここで、スティーブ・ジョブズが「現実の拡大」という言葉を使っています。現在は、現実を拡大することで人間のなにが変わるのかということに関心が移っている感がありますが、それは「コンセプトメーカー」の役割で、実行者たる「パフォーマー」が関心を持っているのは、それを実現するということだったのでしょう。

「現実の拡大」に関しては、1999年にほぼ日で行われた、当時のマイクロソフト会長、古川享さんと糸井重里さんの対談が非常に興味深いので引用します。

もし電話がなくて手紙だけで、
1年のあいだに何回かしか会えないときと、
いまのこの(ネット時代の)スピード感とは明らかに違う。
情報収集するまでの時間と、
それが真か偽かを自分で見極めて、捨てるものは捨て、
新たなものをつかんで、また吸い込むという、
そういう時間軸の中でのスピード感。
同じ時間の間でどこまでの情報がいっぺんに
自分の手元までたぐりよせられるか、というような
総体としてのボリュームとともに、
そのスピード感って、昔と今では違うと思うんですよ。



「その結果、なにが変わったの?」と
勘違いしちゃう部分もあるんだけれど、
でもやはり自分自身が、自分自身の醜い部分を発見して
反省したり、また新たにやりなおしてみようと思ったり、
それはいままでのまったりとした、
誰が味わっても同じだという時間の中で、
5年かかったけど結果は生まれなかったという
状態じゃなしに、5分でも10分でも、2週間でも、
スピード感をもっていろいろなものに出会って、
その結果が生まれる、ということは、あるかもしれない。



そうすると今までのメディアのなかでは
あまり感じられなかった……もちろん電話だとか
テレビの発展というのは、そういうスピード感を
情報の伝達としては伝えてくれたわけだけれども、
それ以外の新しいメディアが生まれつつあるんですね。
それ自体ではなんだかんだ言っても、
「心」には影響をおよぼしていなかった、
というところが面白いですね。(古川)

 

ほぼ日刊イトイ新聞

Yeah!Yeah!Yeah! マイクロソフトの古川会長がやってきた。8回より引用

http://www.1101.com/microsoft/08.html

 アラン・ケイのような「コンセプトメーカー」が想像したビジョンがあり、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのような「パフォーマー」がその大部分を実現しました。1週間に1通の手紙しかやり取り出来ない時代から、どれだけ離れていても、1分間に何回ものコミュニケーションができるようになり、デジタルが人間の現実を拡張したときに、人間の本質はどのように変化していくのでしょうか。

大げさに言えば、そうした人間の「心」の変化を促進するかもしれない技術が生まれたのが、この物語で描かれるアラン・ケイのいたパロアルト研究所で、それを世に広めたのがスティーブ・ジョブズであり、ビル・ゲイツでした。

という訳で、『スティーブズ』を読みながら自分は「コンセプトメーカー」なのか、「パフォーマー」なのかを考えるととても楽しく読めます。『スティーブ・ジョブズ』の映画も本日公開、cakes では、アップルが日本進出したときのノンフィクション、『林檎の木の下で - アップルコンピュータージャパン物語』✕『スティーブズ外伝』の連載もスタートしています。あわせて楽しんでください。

https://cakes.mu/posts/12225

 

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