『生きろ!漫画家志望君!』謎のロシアン美少女編集者とオーバードーズな奇才新人漫画家の斜め上を行く関係

菊池 健2016年02月18日 印刷向け表示
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ジョバーニャさんという、謎のロシアン美少女編集者がTwitterにいらっしゃるんですよ。

でも人はみかけによらなくてですね、この方、大変鋭いんです。10年目くらいの脂ののったエース級編集者並の、キレキレ発言連発です。

その舌鋒には、トキワ荘プロジェクトでお世話になってる『ライアーゲーム』の甲斐谷忍先生も一目置く、折り紙つきなんですよね。ロシアン美少女だけど。

 その普段は人をなかなか褒めないジョバーニャさんが、珍しく漫画家志望者を褒めていたんですね。

もうべた褒めでらっしゃいます。

どれどれと見に行きましたところ、これが奇作も奇作、大当たりの漫画家志望者漫画でしたということで、本日はニコニコ静画さんからこちらをご紹介させていただきます。 

タイトル
作者:ksk
掲載:ニコニコ静画

 本作は、漫画家志望者として一般のマンガ雑誌を目指すkskさんが、なかなか新人賞などで評価されない中、魂の叫びというか、あけっぴろげな本音と、恐らくかなり真実に近いのであろうその日常(?)を漫画にしているわけですね。

私も新人漫画家支援を長く生業としておりまして、漫画家志望者という存在については、その作品も行動も見慣れているわけです。

[引用:『生きろ!漫画家志望君!!』http://seiga.nicovideo.jp/comic/17924]

うん、そうそう、だいたいそんな感じですね。しかし、絵柄変わるなー。

 

ざららっ?!

[引用:『生きろ!漫画家志望君!!』http://seiga.nicovideo.jp/comic/17924]

いねーよ!そんなやつ!○原かよ!タイムリーかよ!!
(注:漫画家志望者は、みんなこうではありません。)

まぁその、こうなると、人は幻覚が見えたり、全身の皮膚の裏とかを無数の虫が走ったりするんだそうで(知りませんけど)究極は、その幻覚がですね。キャラクター化したりしてしまうんでしょうか。友達がいないと言う彼は、自分の妄想女友達を形にして、自分のマンガに登場させます。

[引用:『生きろ!漫画家志望君!!』http://seiga.nicovideo.jp/comic/17924]

 注:思念体だそうです。

この彼女との会話が真に迫っておりましてですね、何かこう作品の中だけのこととは思いにくいリアリティがあるのですよ。実際、彼はこういう彼女と普段から会話しているのではないかなと信じてしまう感じと申しましょうか。

これには、ジョバーニャさんも絶賛なわけです。

絶賛でございます。 

私の経験上、商業誌(所謂ジャンプとかの漫画雑誌)向けでプロを目指す、まだプロほど地力のない漫画家志望者が、商業誌に向けて描くと言う制約を外して自分の描きたいマンガを描いたときに、面白くなるケースはレアだと思います。面白くなくなるというか、むしろ何を描いているのか良く判らなくなってしまう人が、割といたりします。(プロは違います。)

一方、そういう漫画家志望者でも、自分達の日常を切り取った心の叫びを、さらっと鉛筆描きしたような漫画が面白いと言うケースは良くあったりします。ジョバーニャさんも指摘されていますが、

私も大好きです。

自分のことを描いた作品は本音に近いところが出やすく、なまじのフィクションより面白かったりするんですね。

うちでも、新人賞の投稿作は全く奮わないし、商業誌向けの原稿すら全然描かないんだけども、同人誌として自分を描いた漫画が異常に面白くて、これは本当にどうにかならないかと思うような「あなたの漫画よりあなたのほうが面白い人」が漫画家を諦めて去っていくケースを何度も見送って参りました。これがほんとうにいたたまれなく、本人と共に無念な気持ちになります。

 

通常、商業誌を目指しながら趣味で同人誌を描く作家が、自分の担当編集者に、自分の描いた同人作品を見せるケースは少ないと思われます。

kskさんは、私の目で見ても、この作品の構成力や演出などは、新人離れしているなと思いました。作品作りの着想時点で、良い神様が降りてくれば、早晩デビューや連載があってもおかしくない実力があると思います。

うちに入居申込みをされてきて作品を見せていただいたら、Aクラスと評価して「是非入居下さい」と連絡したと思います。オーバードーズは困りますけども(笑)

 

面白かったのは、今回のkskさんとジョバーニャさんの関係性です。斜め上の関係と申しますか、利害関係のない漫画家と編集者の関係で、このように作品について話をすると言うのは珍しい構図です。この、なかなか面白い出会いを横目で見て「ネットは広大だわ」と草薙素子ばりに思った次第です。

トキワ荘プロジェクトでも、カジュアルな感じで、新人漫画家と編集者さんが話をできる交流会を、ゆる~い感じで毎月開催しています。新人にとって、出版社への「持込」とか「出張編集部」など、ガチな機会は良くありますが、↓のように、お酒を飲みながら、ゆる~く原稿をみてもらうなどすると、返って良い結果が出たりするのです。

 トキワ荘プロジェクトの新人漫画家交流会の様子。
少年青年少女女性誌と、色んな編集者さんが見えるので、入居者は様々な角度からアドバイスがもらえます。
この場のご縁で、デビュー、単行本化、映像化、、というお話もありました。

もし、このkskさんの実際の担当編集者さんがジョバーニャさんで、これが全て演出だったとしたら、この後の展開が大変気になります。とはいえどちらも匿名さんですので、神のみぞ知るということで、どこかでkskさんの作品に出会いたいなと祈念いたしてもおります。

ジョバーニャさんが面白すぎて、レビューと言うよりジョバーニャさんとそのツイートを紹介する記事のようになってしまいました。関係各位には誠に申し訳ございません。

---

気がつけば、マンガHONZでレビューを書かせていただくようになって、丸2年が過ぎました。
仕事柄から、漫画家漫画のレビューは沢山描かせていただいています。

特に漫画家志望者に読んで欲しいなと思うのが、以下です。この2作品は、出会うタイミングによって読んだときの見え方が違う、噛めば噛むほど美味しい先輩漫画家さん達の叡智が詰まっております。創作に煮詰まったときなど、是非読んでみて下さいませ。(どちらも完結作品です。)

『描かないマンガ家』に学ぶ、マンガ家になる方法? - マンガHONZ

ヒット漫画家で漫画学校講師の漫画家が描く漫画学校もの漫画家漫画『ラフダイヤモンドまんが学校にようこそ』 - マンガHONZ 

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