中2女子が選書した漫画はおもしろくなかったけれど、ソーシャルネイティブ世代の勉強になった件。 週刊少年マガジン連載中の『リアルアカウント』というデスゲーム漫画を知っていますか?

今村 亮2016年02月18日 印刷向け表示
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突然ですが、今回はレビューしたい漫画が見当たらなかったので、中2女子に選書してもらうことにしました。教育NPOに就職するとこんなとき便利なのでレビュアー各位にオススメしたい。

筆者「ねえ読みたい漫画ない?」
中2女子「『リアアカ』読みたい!」

・・・・リアアカ?というわけで、中野ブロードウェイに買いに行きました。

リアルアカウント(1) (講談社コミックス)
作者:渡辺 静
出版社:講談社
発売日:2014-05-09
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Facebookとtwitterを足して2で割ったようなSNS「リアアカ」の世界に意識だけ閉じ込められた1万人が、生き残りをかけたゲームに挑むストーリー。別冊少年マガジンで連載がはじまって、途中で週刊少年マガジンに移籍した人気作なのだそうです。
 

(画像は『リアルアカウント』より)

リアルアカウントの世界にはルールがあり、ゲームがはじまります。

・フォロワー0になったら即死亡
・プレイヤーが死んだらフォロワーも巻き添え死亡
・RTされなかったら死ぬゲーム
・タイムラインから黒歴史を暴かれたら死ぬゲーム
・ニコ生主になって視聴者を100人確保できなかったら死ぬゲーム

などなど情け容赦ない展開が続きますので、第一話にして5316人が死にます。

_人人人人人人人人人人_
>    一話で5316人が死ぬ   <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

さあ。果たして最後まで生き残るのは誰だ?

(画像は『リアルアカウント』より)

ぶっちゃけおもしろくなかったよ。

選書してくれた中2女子に伝えたいのですが、『リアアカ』ぶっちゃけおもしろくなかったよ。設定は無理矢理だし、キャラは痛めだし、心理戦は中途半端だし、エログロの混ざり加減はこれ見よがしだし・・・。

原作者は1992年生まれとのこと。ちょっとしたジェネレーションギャップもあるのかもしれません。

ごめん。そもそもわれわれ30代男子は、『カイジ』や『デスノート』など殿堂入りのデスゲーム作品に恵まれた世代なのです。しかも現存の連載作を見渡しても、『神様の言うとおり』『嘘喰い』など佳作が並ぶ。よく考えたらデスゲーム漫画戦国時代ではないか!

でもちょっと待て。いま多くの
中学生が『リアアカ』を読んでいるという事実は無視できません。僕だってもし2016年に中学生活を送っていたら、『リアアカ』に夢中になっていたかもしれません。

『リアアカ』が時代の共感を得ていることについて、NPO現場からの考察を添える必要はある気がしてきました。

ソーシャルネイティブ世代の人間関係

というわけで確認してみましょう。ベネッセ教育総合研究所による2014年の調査によると、高校生のSNS利用率はLINEを中心に約90%に上ります。

そして、毎日平均1時間以上をSNSに費やしていることがわかります。20%の高校生は2時間以上を費やしています。

つまりこんな感じ。

(画像は『リアルアカウント』より)

主人公は、教室の人間関係とリアアカの人間関係を分けるタイプとして描かれています。

現実での友達は0なのに
リアアカではこんなに多くの”友達”がいる
ここなら僕は少しだけ心を開くことができるんだ・・・

(画像は『リアルアカウント』より)

ちなみに現実の中高生は、こんなリスクはとりません。実名アカウントでリアルの友人をフォローしないなんて!おお恐ろしい。もしアカウントがバレたとき、学校でどんな仕打ちを受けるかわかりません。

SNSで身を隠したいときには、アカウントごと分けるのが基本です。本アカ、趣味アカ、裏アカなど。そうすることで安全に人間関係を分散投資できます。するとたとえひとつのアカウントで関係がうまくいかないときも、別のアカウントに逃げ込むことができます。このように他者からの承認を安定的に供給する装置を自作することは、ソーシャルネイティブの生活の知恵です。

一方でそれを支える僕たち教育NPOは、SNSでの発信を見逃すことはできません。それは現場の知恵です。

そんな時代に誕生したのが『リアアカ』。これは承認欲求の物語です。

リアル友達は本物で、ネット友達は偽物?

『リアアカ』は決しておもしろい作品ではありませんが、リアルとネットの境界線に横たわる複雑さを不器用に描き出そうとする点には好感が持てます。

リアル友達は本物でネット友達は偽物、なんて短絡的だし説教臭すぎます。なにより中高生と接する上では実用的ではありません。

もちろんこのように、ネット友達は簡単に離れていくかもしれませんが・・・・

(画像は『リアルアカウント』より)


実の兄弟だって裏切るかもしれないし・・・

(画像は『リアルアカウント』より)

一方で、SNS上で特別な感情が芽生えることや、

(画像は『リアルアカウント』より)

敵が仲間になることだってあるのかもしれません。

(画像は『リアルアカウント』より)

まとめ

このデスゲーム漫画戦国時代において、『リアアカ』が中高生の支持を得ているのは、ソーシャルネイティブ世代の共感を引き出す断片がやさしく散りばめられているからなのだと思います。ネットは決してバーチャルではなく、現実を拡張したり、立体化したり、分散したり、可視化するものとして、 捉えている世代なのでしょう。
 

 

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