五郎丸歩選手よりラグビーをメジャーにするかもしれない漫画『オールアウト!!』の魅力

マンガサロン『トリガー』2016年03月17日 印刷向け表示
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ALL OUT!!(1) (モーニング KC)
作者:雨瀬 シオリ
出版社:講談社
発売日:2013-04-23
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昨年最も人気が急上昇したスポーツ競技。それは、間違いなくラグビーでしょう。

昨年開催された、ラグビーワールドカップ2015。開催地はラグビーフットボール発祥の地・イングランド(『ジョジョの奇妙な冒険』第一部冒頭でも、英国紳士であるジョナサンとディオがラグビーで共闘するシーンがありましたね)。まだワールドカップで一勝しか上げたことのない日本代表チームが初戦で挑んだのは、二度の優勝経験がある優勝候補の強豪南アフリカ。当然、多くの人は南アフリカの圧勝を予想していました。ブックメーカーでは、南アフリカが1倍・日本は34倍という圧倒的な大差でした。

しかしながら、日本代表は見事にこの南アフリカに逆転勝利するという大金星を上げました! この勝利は2015年大会どころか1987年の第一回大会からの八大会を通じても最高の瞬間として選出され、世界中を熱狂させました。自分たちより大きな相手に果敢にタックルし、また必死に走ってトライを決めに行くあの姿には、スポーツ観戦の本質的な熱さと楽しみを感じられたのではないでしょうか。私自身、後から観て「これはリアルタイムで観たかった……!」と後悔した程でした。

そんなラグビーですが、今までにも幾つかのラグビーマンガは描かれて来ています。しかし、残念なことにそのほとんどが長続きすることなく終わって来ています。サッカーなら『キャプテン翼』、バスケなら『スラムダンク』、アメフトなら『アイシールド21』というような、競技を代表する「これ!」という作品が出てきていませんでした。しかし、『オールアウト!!』こそは、そんなラグビーマンガ界を牽引する本格ラグビーマンガの雄として君臨する勢いです。

『オールアウト!!』は、超王道スポ根。身長190cmの長身でラグビー経験者ながら気の弱い石清水と、小さい体ながら持ち前の威勢の良さで未経験のラグビーに挑む祇園の二人を中心に、神奈川高校の面々が花園(野球でいう甲子園)を目指して闘っていく青春群像ラグビーマンガです。

ラグビーは一チーム十五人、敵味方合わせれば三十人。他のスポーツに比べると描かねばならないキャラクターが多く、ある意味マンガ化するのが大変な競技です。実際、登場する多くのキャラ全員を覚えるのは最初は困難に感じるかもしれません。

しかし、『オールアウト!!』の強みはそのキャラクター描写。読み進めるにつれて個性豊かなチームメイト一人一人のエピソードが丁寧に描かれ、自然と感情移入します。バカなヤツ、クールなヤツ、仲間思いなヤツ、食事シーンで真価を発揮するヤツ、重い事情を背負ってるヤツ……気付けば控えのメンバーも含めて自然と愛着が湧き、応援したくなります。

敵となる相手校にも魅力的なキャラが沢山出てきて、今後の新キャラの活躍も楽しみです。

そんな中で私が最も惚れ込んでいるのは、キャプテンの赤山。チーム内でも最も剛健であり、外見も謎のメッシュで厳つい男ですが、その実とても情に厚く優しい頼れるキャプテン。誰よりも勝利に貪欲で、ストイックに上を目指し続ける姿勢にシビれます。厳しい練習に、「もっムリ…」「死ぬ…」と喘ぎ倒れ込みそうな部員への一喝。


「愚痴る力あるならっ 走れ!
今のっ 俺たちでも
出し切ることはできるっ」

と、気持ちを強く引っ張って行く姿は堪りません。そして、その「全てを出し切る」ということこそがタイトルでもある「オールアウト」。

一度きりの人生。一秒も無駄にせず、今の自分を生かしてくれる周囲に感謝しつつ、オールアウトで行きたいものです。そんな熱量を『オールアウト!!』を読むと貰えます。

主人公たちを導いて行く大人もまた魅力的。熱い激闘の間に挟まれる、人生の年輪を感じさせる大人同士の呑みシーンの会話がとても良いメリハリを生んでいます。

一人一人を叱咤激励し、チームをマネジメントしていく側の想いや葛藤、あるいは楽しさといったものも描かれ、こんな良い酒宴をしたいなと思わせてくれる稀有なスポーツマンガです。

キャラクターの良さに加えて、ラグビーという競技を知らなくても楽しめる丁寧な作りもポイント。

細かいルールも、ラグビーを知らない主人公祇園と同じ目線で学びながら読み進めて行くことができます。『オールアウト!!』を読んでおけば、ラグビー観戦がより楽しくなること間違い無し!

2019年には、日本で9回目のラグビーワールドカップも開催されます。秋からの『オールアウト!!』のアニメ化も伴って、今後ますますラグビー旋風が吹くことは間違いありません。ぜひ今の内から『オールアウト!!』を読み、ラグビーの熱き世界に触れてみてはいかがでしょうか。

 

(文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿) 

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