スタートアップバブルはもうすぐはじける『ウォーキング・デッド』から学ぶあなたの会社が「ゾンビ」にならない方法

小禄 卓也2016年03月23日 印刷向け表示
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2011年ごろから盛り上がり始めた、Webサービスやアプリ、ソーシャルゲームなどを中心としたITスタートアップ。だが、昨年の終わりごろからこんな噂が囁かれている。

「スタートアップバブルはもうすぐはじける」

頭がいい人たちが言っているらしいから、多分そうなのだろう。その一方で、フリマアプリを展開するメルカリやFintech(金融×IT)スタートアップの雄・マネーフォワードなど、頭が一つも二つも飛び抜けた成果を出す企業も出てきた。

どんなに市況が苦しくても成果を出すスタートアップ企業(以下、スタートアップ)と、苦しい状況になるととたんに弱くなってしまうスタートアップの違いは何なのか。それは、組織力の違いではないだろうか。

僕自身、2013年から某スタートアップに6人目のメンバーとして入社しているのだが、数十人規模となった今、「強い組織、生き残り続ける組織とは何か」についてよく考える。そんな気持ちで生活していると、自然とマンガを読む際にも「このチーム強いなぁ」なんて思う機会が増えてきた。

例えば、小学館漫画賞を受賞したバレーボールマンガの金字塔『ハイキュー!!』なんかには、少人数でもともとバラバラだったチームが強豪校に勝つための「戦う姿勢」を大いに学ぶことができる。エースアタッカーの旭が試合中に言った「オレがエースなら、お前らはヒーローだな」という言葉は、少ない人数だからこそ一人ひとりが「明日のヒーロー」になれるし、ならなければいけないということを教えてくれる。これは、世の中に新しい価値を提供しようと戦うスタートアップで働く人間全員が持っておくべき矜持だ。『ハイキュー!!』は本当に名作なので、読んでない人は早く読んだほうがいいと思う。

ハイキュー!! 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
作者:古舘春一
出版社:集英社
発売日:2012-06-04
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そんな中、最近僕が「強い組織」についていっそう深く考えさせられたのが、『ウォーキング・デッド』だった。今回は、

「強い組織」にいる人は、自分が活きる場所は自分で見つける

アメリカでドラマが記録的ヒットを飛ばし、日本でも人気を博している『ウォーキング・デッド』。主人公の保安官リックが病院のベッドで目覚めた時、周囲はすでにゾンビ化し、法も秩序も崩壊してしまったアメリカを舞台にしたサヴァイヴァルストーリーだ。ゾンビに噛まれると感染してしまうため、襲い掛かってくる無数のゾンビたちを殺しながら安住の地を求めさまよい歩くのだが、腕っ節が強い人間だけが必ずしも生き残るということではない。むしろ、一人で生き残るのは至難の業といえ、道中で仲間を増やし、コミュニティを組成していく。

突然マズローの欲求5段階説の最下層「生理的欲求」すら満たされない世界に放り出されて、安心・安全を保障していくためには、集団行動が欠かせない。この物語でも、狩りをする人、外敵から守る人、食事を作る人、子どもの世話をする人という風に、コミュニティの調和を保つためにさまざまな役割が自然発生的に生まれる。役に立たない人間はコミュニティに残ることはできないため、一人ひとりが悩みながらも自分のできることを自発的に探し、見つけようとする姿勢が求められるのだ。

『ウォーキング・デッド』に登場するキャロルは、決して若くもないし腕力があるわけでもない。足も遅いしゾンビの集団に襲われたら真っ先に殺されかねないような女性なのだが、コミュニティの母親的存在で肌理の細かい気配りを怠らない。それにより、コミュニティに秩序が生まれ、精神的な安定がもたらされた。

スタートアップに身を置いていると、時間の概念も、お金の感覚も、仕事の裁量権も、どれも一般的な企業と同じものさしでは測れなくなる。とくに立ち上げ初期は、働く環境やルールが整備されていないことが多く、マズロー的にも下の層の欲求から満たしていかなければならない。そういう組織下においては、キャロルのように「自らの能力を正しく把握し、組織で求められる役割を自発的に考え行動する」というマインドは非常に重要になってくる。

「強い組織」は、組織内の血液循環を間違えずに、素早く行う

人が増えれば諍いも増える。そうなると、組織の結束もゆるぎかねない。そんな時、組織の結束を固め、より強固な組織にするためには血液循環を良くする必要がある。要するに、人の見極めに関して、「受け入れる」ことと「拒絶する」ことのどちらかの決断を下し続けなければいけない。

その人がチームに良い影響を与えるのか、不協和音となり悪影響をもたらすか。ここで間違った選択をすれば、少数精鋭だからこそ大きなダメージを受けてしまうため慎重にならざるをえない。しかしながら、極限状態の世界では決断スピードも重要になってくる。ミスマッチな人材に時間を割く余裕はないのだ。

主人公のリックは、道中で出会った人々と対話をしながら慎重に仲間を増やしていくが、一方でチームに危機を及ぼしかねない人物に対しては自らの手で殺している。リックだけでなく、キャロルでさえ必要に応じて生きた人間に手をかける。ゾンビだけでなく同じ人間や組織との戦いをも強いられるのが、「ゾンビ化した世界で生き残るということ」がどういうことかを描く本作の魅力でもある。

そしてこれはスタートアップにも似たようなことが言える。多くのスタートアップには時間的な余裕がないものだ。こういうとドライに聞こえるかもしれないが、潤沢な資金があるわけではないので、人に対するコスト感覚もやはり厳しくならざるをえない。外からはキラキラしているように見られるかもしれないが、時には血を流すことも必要とされる厳しい世界でもあるのだ。

「強い組織」で生き残ることは、自分を更新し続けるということ

何より大切だと思うのは「一人ひとりが自分を更新し続けること」ではないだろうか。技術が優れているからとか、優秀だからとか、それだけでは命を懸けて戦うチームで必ず活躍できる保障はない。

グレンという人物がいる。彼は、最初のころはパシリのような存在で、仲間の中でもわりとぞんざいに扱われていた。それでも彼は文句一つ言わず、淡々とミッションをこなす。誰に対しても正直に意見を言える素直さと、どんな時でも自分の信念を貫き通す強さが彼の武器だ。次第に彼に対する評価は高まり、物語の中盤以降はリーダーであるリックが弱っている時にサポートするほどの重要な役割を担うことになる。

大好きなキャラの一人でもあるダリルは、世界がゾンビ化する前は定職にもつかず、兄の後ろにフラフラついているだけのはぐれ者だった。それが、ゾンビ化した世界に適応し、リックたちとサヴァイヴするために自分の求められる役割を全うするナイスガイに変貌。『ウォーキング・デッド』では、ゾンビ化した世界に適応したものだけが生き残り、生き残った者はすべからく自分を更新し続けている。

スタートアップの世界は、変化が激しい。2、3カ月単位でミッションが変わることなんてざらにある。それに対して凝り固まった思考のまま仕事を進めてしまっては、組織の変化や成長についていけなくなってしまう。自分への戒めも込めて、スタートアップに身を置く以上、「自分を更新し続ける」ことを怠ってはいけないということは肝に銘じておきたい。

スタートアップもウォーキング・デッドも適者生存社会

『ウォーキング・デッド』も、スタートアップも、ひとことで言うと適者生存の世界である。迫ってくるものがゾンビなのか競合サービスなのか、ショートするのが食料なのか資金なのか。この違いはあれど、極限の状況下にあるのは変わらない。

大志を抱いて入社したものの、志半ばで会社を去っていく人も少なくないが、その人たちに対して失望感を抱いたり無能だと思うことは一切ない。ただただ、これまでの常識が通用しない特殊な環境に適さなかっただけだ。個人的な意見として、向かないのであれば去ってしまったほうが双方にとって幸せになるとは思う。

今回挙げたものが「強い組織」が持つ要素のすべてとは言わないが、非常に重要であることは分かる。僕たちも、一瞬の判断ミスが命取りになってしまうスタートアップの世界でリビングデッド(=ゾンビ)になってしまわぬよう、リックたちを見習って生き残れる組織にしていきたいものだ。

ちなみに、『ウォーキング・デッド』はドラマだけでなくマンガでも読むことができる。ドラマに時間をとられるのが嫌な人は、ぜひマンガを手に取ってもらいたい。(マンガもかなり時間が掛かるが……)

ウォーキング・デッド
作者:ロバート・カークマン 翻訳:風間賢二
出版社:飛鳥新社
発売日:2011-10-13
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