トルコと日本には昔何があったのか。月をシンボルに持つ国と、太陽をシンボルに持つ国の友情をもやしもんの作者が送る!『テシェキュルエデリム~ありがとう』

佐藤 樹里2016年03月26日 印刷向け表示
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今日は何をしよう?少し遠出して買い物にでも行こうかな?それとも最近忙しかったので家でゆっくり溜まっている本でも読んで過ごそうかな・・・?それとも・・・それとも・・・・
このように、人の生活というのは日々「選択」があります。一日の仕事の段取りだったり、休日の過ごし方だったりと、取捨選択して人は行動します。しかし、時には選択肢が存在しない場面に直面する事があります。
「一択」しかないのです。そしてそれを行わないのは「あきらめる」ということになります。
今回ご紹介する『テシェキュルエデリム~ありがとう』はそんな「一択」の決断を下した人たちのお話です。この決断が後に「太陽をシンボルに持つ国」と「月をシンボルに持つ国」を結びつけることになったのです。

テシェキュルエデリム~ありがとう (モーニングコミックス)
作者:石川雅之
出版社:講談社
発売日:2016-02-12
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エルトゥールル号遭難事件

きっかけは、エルトゥールル号というオスマン・トルコの船がオスマン皇帝から明治天皇への返礼を携え、初めてトルコから日本にやってきたことでした。このエルトゥールル号は見た目はとても綺麗なのですが、長く使われていない船だったので中はボロボロでした。しかし任務の内容もあり、出航を急がなけれなりませんでした。とはいえ、中はボロボロなので破損・修理を繰り返し予定を大幅に遅らせた旅になってしまいました。日程が伸びたことでかさむ費用にオスマン帝国はエルトゥールル号の帰国を急がせますが、船内でコレラが発生。多くの船員が失われてしまいました。

悪い条件は重なります。トルコへの出航の際、台風が迫っていたため、日本人は止めました。しかし本国トルコの命令には逆らえずエルトゥールル号は悪天候の中出発。和歌山の紀伊大島で大破・沈没してしまったのです。600名以上が海に投げ出されるという大惨事になってしまいました。灯台に流れ着いた生存者により、遭難事件が発覚。その後通報を受けた大島村(現在の串本町)樫野の住民は、総出で救助・生存者の介抱にあたりました。

( 石川雅之『テシェキュルエデリム~ありがとう』 より)

村人たちは、豊かな蓄えがあるわけでもなかったのですが、米や芋、正月用の鶏などを出し、懸命な救助を行いました。また、島の医者が今回の一件について全 ての医療の費用を請求もしませんでした。村長を中心にした村人たちの遠い国で丸裸で放り出された人を全力で救うのだという選択の結果でした。このニュース は当時の新聞にも記事になりました。多くの義援金が日本中から集まり、国も軍艦「金剛」「比叡」を出して送り届けることになりました。そのおかげで、島民 が救助した69名はその後1人も欠けることもなく帰国できました。無事に着いたというニュースが流れることによってやがて日本中の人々の関心は他に移るこ ととなります。

しかし、島の人達はその後もずっと遭難者の捜索を続け、計230人の船員を収容。沈没地点を見下ろす灯台のそばに小さな碑をたて祀りました。

イラン・イラク戦争

時は流れ、大島以外の日本人が皆忘れてしまってもトルコの人々はずっと覚えていました。
そして、それを証明するような出来事が1985年のイラン・イラク戦争で起こりました。当時、イラクのサダム・フセインは、定めた48時間後以降、イラン上空の航空機に対して無差別攻撃宣言を行いました。各国は期限までにイラン在住の国民を軍用機や民間航空機で救出しました。しかし、日本国政府は自衛隊の海外派遣不可の原則で自衛隊機の派遣が出来ず、当時日本で唯一国際線を飛ばしていた日本航空は「イランとイラクに日本機を攻撃しない確約がなければ臨時便をださない」として在イラン邦人は誰にも助けてもらえない危機的状況になってしまいました。(日本航空社内では別の考え方をしていた方がいたようです。)
そんな状況の中、トルコが日本人を助けるべく、驚きの行動をします。詳しくはマンガでお確かめください。

トルコの教育

なぜトルコの人が日本に対して優しいのか?それは、エルトゥールル号遭難事件がトルコの歴史の教科書にのっており、その救難の際に日本人が言った「我々が特別ではなく誰でも困っている人がいれば我々と同じ様にするに決まっている。」という決断が知れ渡っていたからだそうです。その後もトルコが大地震が起きた時、真っ先に義援金を送ったのはイラン・イラク戦争の有事の際、トルコと接点を持った方でした。日本政府もいち早く救助隊をトルコに派遣したのです。東日本大震災でも原発事故の為多くの国の救援隊が国外退去する中、トルコからの救援隊は被災地に留まり、救援活動を最後まで行ってくれたという記録が残っています。現在もその友情は続いているのです。

「我々が特別ではなく誰でも困っている人がいれば我々と同じ様にするに決まっている。」昔の人の行動が、その後国家同士の友情へと繋がったという、歴史的な出来事に考えさせられる作品です。

テシェキュルエデリム~ありがとう (モーニングコミックス)
作者:石川雅之
出版社:講談社
発売日:2016-02-12
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 『もやしもん』の作者石川雅之さんによる作品。電子書籍版のみで、価格は108円です。表紙は菌かと思いますが、月だそうです。もやしもんテイストにほっこりさせられます。

惑わない星(1) (モーニング KC)
作者:石川 雅之
出版社:講談社
発売日:2016-03-23
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 最新作は『惑わない星』星の擬人化作品です。

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