死刑制度に賛成ですか?反対ですか?あなたは明確な回答を持っていますか?明日という日が来ないかもしれない死刑確定囚の日常から死刑制度の是非を問う『モリのアサガオ』。

工藤 啓2016年04月13日 印刷向け表示
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モリのアサガオ : 1 (アクションコミックス)
作者:郷田マモラ
出版社:双葉社
発売日:2004-12-06
  • Amazon Kindle

突然ですが、死刑制度について考えたことありますか?

 

『モリのアサガオ』

あなたは死刑制度に賛成ですか?それとも反対ですか?

その回答と理由をtwitterやfacebookで周囲に伝えられますか。時々、テレビから死刑が執行されたニュースが流れますが、死刑制度の是非について多くのひとは意見を闘わせたり、議論したりすることはないでしょう。センシティブな問題ではありますが、身近な問題として捉えるにしては重いテーマでもあるからです。

 

『モリのアサガオ』
 
 

電車の中で酔っぱらっている男性に絡まれ、暴力を受けた小さな女の子。その父親はやり返します。相手は酔っているためなすすべもなくやられてしまう。怒りの収まらない男性は、背後から父親、母親を殺し、将来を嘱望された野球少年にも手をかけます。少年は両親と野球を失いました。そして妹は目の前で起こった出来事を処理できず失語症になります。幸せな家族の生活は一瞬で終わりを迎えます。

犯人は捕まり、裁判にかけられ、長期間刑務所に服役します。一般的なプロセスはここで終わりです。しかし、遺族の感情はそれで収まりがつくでしょうか。もしかしたら、こんなことを考えたことがあるかもしれません。

「もし、自分の愛するひとや家族、子どもが傷つけられたら、地の果てまで加害者を追いかけ、同じかそれ以上のことをする。その人間を裁くのは自分であり、国ではない」と。

 

『モリのアサガオ』

 

 

『モリのアサガオ』

日本は法治国家です。自分や大切な誰かを傷つけられたからといって、同じことをしていいことにはなっていません。しかし、『モリのアサガオ』の主人公である渡瀬満はやってのけました。復讐のために計画を立て、復讐にすべてを捧げ、そして仇討ちを成し遂げました。彼の行為を糾弾する人間もいれば、本当に仇討ちをしたヒーローがいると支援団体ができ、尊敬、崇拝の域まで達する個人もいます。その一人がもう一人の主人公で新人刑務官の及川直樹です。

 

本書は、及川直樹が拘置所で暮らす死刑確定囚との日常を通して、死刑制度の是非を問い続けるものです。登場する数々のキャラクターは死刑確定囚ですが、死刑執行を前に犯した罪を認め、反省し、執行直前に穏やかな表情を見せることがあります。死刑確定囚がその境地に至ることができたもの死刑制度があったからであると、その必要性を認めます

また、理不尽に命を絶たれた被害者やその遺族たちの悲しみや怒りを少しでもやわらげることや、死刑制度の存在そのものが犯罪抑止につながるため不可欠な制度であるとの結論も導かれます。

その一方、死刑制度への疑問や明確な反対の立場に大きく触れることもあります。例えば、死刑執行の職務にあたった刑務官の精神が破壊されてしまいました。死刑制度は執行人を必要とし、国家の命令であっても、人を処刑するということは人間を壊わすことであると言っています。

 

『モリのアサガオ』

冤罪によって何十年も拘置所に入れられていた元死刑確定囚や、本人は罪を認めていないにもかかわらず、死刑執行となってしまった話も出てきます。特に、十分な証拠もなく、自供自白を根拠に死刑判決をくだされたものの、その当時では難しかったDNA検査によって無実が証明された話などは、死刑制度の存在が多くの冤罪死刑囚を出すことにつながると批判しています。

 

 

『モリのアサガオ』

先輩刑務官は言います。

「及川よ・・・これは組織の威信を保つために犯人を無理矢理作りあげなければならなかった警察機構と、ロクに再審のための資料も見直さず、冤罪者を何十年も死の恐怖にさらさせ続けた裁判所、つまり冤罪は司法制度そのものの犯罪なんや!!」

 

『モリのアサガオ』

本書は死刑制度をさまざまな視点で描き、私たちに死刑制度について考えさせます。刑務官、死刑確定囚、被害者とその遺族、加害者家族、検察や弁護士、裁判官、そして二人の主人公である新人刑務官及川直樹と復讐の仇討ちを成し遂げた渡瀬満の“魂のキャッチボール”は、互いが予期し得ぬ展開に至り、そして静かに幕を閉じます。

『モリのアサガオ』全7巻と番外編を読み終えた後、死刑制度に対するあなたの考えに変化が起こるかどうか。そんな思考の揺れ動きもまた本書の楽しみ方のひとつです。

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