かぶれても、挫折しても、最高のお椀をつくるために青春を懸ける若者たち『青春うるはし!うるし部』

宮原 沙紀2016年04月16日 印刷向け表示
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みなさん、「漆」ってご存知ですか?漆とは「ウルシノキ」という木の樹液です。この液体、素手で触ったら大変。ものすごいかゆみと水ぶくれに襲われます(体質によりますが、免疫のない方はほとんどかぶれの症状が現れると言われています)。

こんな猛毒のような木の樹液ですが、木や紙に塗るとあら不思議。美しいツヤを発した「漆器」となるのです。また接着力も非常に強く、一度乾かしてしまえば簡単には剥がれません。漆器は日本の伝統工芸でもあり、英語では「JAPAN」と呼ばれ、その美しさは海外からも注目されています。

丈夫で、自然素材でできている漆器は、使い込むほど味が出てくるところも魅力のひとつ。安い物を使い捨てするよりも、お気に入りを大切に長く使う、そんな「ていねいに暮らす」ムーブメントの中で注目を集めています。少し高価で使用法やお手入れに手間がかかりますが、大切に使えば世代を超えて長く愛用できる逸品になるでしょう。

と、マンガのレビューらしからぬ漆器の説明をつらつら書いてきたのには訳があります。
なんと、その漆器を題材にしたマンガがあるのです。その名も「青春うるはし!うるし部」。かぶれと戦いながらも、自分だけのお椀をつくるために日々奮闘する高校生たちを描いた青春マンガです。作者の堀道広先生独特のタッチで描かれた首の太い主人公たち(回を重ねるごとに太さが増していく!)の、漆に懸ける熱い気持ちは、まるでスポ根マンガを読んでいるかのよう。何を隠そう、堀先生は漆器職人の肩書きも持つ異色の漫画家なのです。


漆をテーマに描かれた作品がいままでにあったでしょうか?堀先生にしか描けない、まさに唯一無二のマンガです。

青春うるはし!うるし部 (URUSHI COMICS)
作者:堀 道広
出版社:青林工藝舎
発売日:2007-03
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 舞台は尻毛高校うるし部。国でもトップクラスを誇るうるしの部活。部員たちは皆それぞれ作りたいもの、表現したいものがあり日々漆芸の腕を磨くべく部活に励んでいます。

 

 部員たちは自分の納得のいく漆器を作るため、さまざまな困難を乗り越えていきます。

 

かぶれとの戦い

うるしのプールを泳ぐという想像しただけで恐ろしい「うるし泳」

あきらかに顔色が悪くなっていく部員。

必殺技も飛び出します。

そしてもう一つの読みどころは、漆塗りに欠かせない道具の話から、具体的な技法まで、これを読めば漆のすべてがわかってしまうのではないかと思うほどの情報量にあります。このページを埋め尽くす文字の嵐! 

最後は時が20年たち、そこでは漆をめぐる陰謀がうずまいていた。と、壮大なスケールの物語に発展。

高校生の部活マンガではなくなっていました。

うるしを題材にしたマンガなのに、笑いあり、涙あり、エロも、バイオレンスもあります。

そして、同時収録されている外伝「俺は短大出」。ひたすら行われる「屁こき対決」…。

このマンガを読んで「漆」の奥深さを知った方、堀先生に興味を持った方は、先生が主催する「金継ぎ部」もあります。金継ぎとは割れたお椀やお皿など漆の接着力を活かして補修する技術です。金で補修した器にはまた新たな魅力宿り、再生します。都内や神奈川などいくつかの会場で開催中ですので、チェックしてみてください。

また、漆器職人と直接話して、お気に入りの漆器を購入できる年に一度のイベント「木曽漆器祭」が2016年6月3日〜5日まで長野県塩尻市木曽平沢にて行われます。ふらりと漆器を手に取りに、でかけてみてはいかがでしょうか。

(画像は全て堀道広『青春うるはし!うるし部』より)
 

 

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