絢爛なる王宮の醜悪なる王位継承劇『サングリアル』

マンガサロン『トリガー』2016年04月21日 印刷向け表示
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サングリアル~王への羅針盤~ 1 (ビッグコミックス)
作者:寺山 マル
出版社:小学館
発売日:2016-04-12
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『アーサー王物語』、『銀河英雄伝説』、『天は赤い河のほとり』、『キングダム』……
奇しくも連載再開した『HUNTER×HUNTER』もそうですが、王位を巡る物語は私たちの胸を捉えて離しません。

何時の世にも、何処にでも蔓延る私利私欲のための醜い争い。玉座は常におびただしい流血で塗装されています。肉親が最大の敵となる世界で、一体誰を信じられるのか。一度状況が変われば、昨日まで親しくしていた友人ですら全く信用できない。幾千幾万の屍を踏み越えねば辿り着けぬ場所。そして、そこにもし辿り着けたとしても、恒久の平和などはありえません。新たな争いの火種は大小絶えることなく燻り続け、退くか死ぬまで闘いが終わることはない。それでも、自分を想ってくれた人や自分に尽くしてくれた人、必死に日々を生きる民の幸福のために死力を、全身全霊を尽くす。道を拓き、示し、そして時代を、歴史を作っていく。多くの人が味わったことのない人の上に立つ者の辛苦や孤独がそこにはあります。そんな王の生き様に、痺れ憧れ昂ぶります。

王や王位を巡る闘争は、人間の本質がどこまでも剥き出しにされるテーマとも言えるでしょう。そんな読み応えある題材で、輝く流星のように新たに登場したのが『サングリアル 王への羅針盤』です。英語のルビでは『ROAD OF THE KING』。正統派の純然たる「王」の物語となっています。

『サングリアル』の舞台は中世。架空の王国アラベラを舞台に、血で血を洗う王位争奪戦が描かれます。暗殺が日常と化している、血塗られた王族のマーシャル家。争いの渦中で母親を毒殺された過去を持つ主人公アンは、王の正統な唯一の子として次期王となり血に塗れた一族の歴史に終止符を打ちたいと志します。しかし、気の弱いアンはその先にあるかもしれない自らの死を恐れ、行動に移すことができないでいました。

そんな時、占い師キルケとの出逢いによってアンの運命の歯車は新たな音を立てて回り始めます。

 

こういった物語で大きな見所となるのは、歴史の分水嶺となる重大な決断を主人公が下す時。世界を、未来を大きく変えて行く第一歩を、覚悟完了して踏み出す正にその瞬間。それがこんなに激しく美しく描かれてしまっては、昂ぶらずにいられません! アンも、いざという時になって一度は逃げてしまいます。しかし、読んでいてそれを攻める気にはなりません。そんな状況に置かれたら、誰だって逃げ出したくなる。アンの気持ちは非常によく解ります。

それでも、キルケの「何かを成し遂げる者には…明確な意志と苦難が必要」「私は示すだけ…選ぶのはあんた」といった占いからの言葉に後押しされ、最終的には他者に委ねず自らの足で一歩を踏み出します。

英雄然としていかなることに対しても金剛のごとき精神で立ち向かう強靭な王の物語も痛快ですが、なけなしの勇気を振り絞って強大な敵に対峙していく未熟な王の物語は一際心を打ちます。体の小さなアンのその一歩は、月を最初に踏んだ一歩のように物理的には小さいものであっても心を震わせるには十分な大きな一歩でした。

『サングリアル』は、そんな爆発的な感情の描写も含めて、絵が非常に重要な役割を果たしています。豪奢な貴族の服や調度品、王宮の装飾なども細かく描き込まれた美しい絵は、見ているだけでも幸せになれます。

輪郭や髪の毛にかかるホワイトが光と陰を画面に生み、それが物語の雰囲気やテーマにも同調していて効果的です。そして、美しさの中に激しい動きもあります。大コマや見開きが幾度も効果的に使われ、華美でありかつ迫力もあるという印象を鮮烈に焼き付けてくれます。そして、その画力を以って人間の底無しの憎悪や悪意も描き表されます。

王位継承権を持つ王の甥たちの表情は特にエグいです。

 

又、本作では「占い」が一つのキーワードともなっています。作中ではキルケによって度々タロット占いが行われます。私自身、実は小学生の頃に将来占い師になりたいと思ってタロットカードを買い、占いの練習をしていた時期がありました。何に影響されてそうなったかはここでは言わないでおきますが、タロットカードは眺めているだけでも楽しいですし、それぞれの大アルカナが暗示する意味を解釈するのも面白いものです。しかし、最終的には占いをされた人がどう行動するか次第。そのことも『サングリアル』では強く描かれます。月光に照らされるタロットカードが運命を導き出すシーンは美しく妖しく、読む者を『サングリアル』の世界に引き込む魔力を持っています。一話のラストでキルケが手にしたカードのように、アンはなれるのか。

王としての道を歩まんとするアン。そして、将来はその王の賢者として登用されようとするキルケ。謎多き美女であるキルケの過去や目的なども、今後の見所となって行くでしょう。一話目から大いに期待をさせ、一巻分を読むとその期待が確信に近いものに変わる素晴らしい物語です。彼らに待ち受けるであろう過酷な運命を、心臓の鼓動を増やしながら見守っていきましょう。
 

 

イベントのお知らせ 

 

▼チケットの購入はこちら
http://peatix.com/event/162586/view

▼ゲスト
寺山マル先生 (てらやま まる)
田波 有希(たなみ ゆき)
瀬尾亞佑(せお あゆ)
LeChat(るしゃ)
茸(たけ)

日 時=2016年4月24日(日) 16:00スタート [15:30開場]

会 場=マンガサロン『トリガー』

参加費=一般1,500円(ドリンク代別途)

    1巻持参の方は入場料無料(ドリンク代別途必要)

※『サングリアル』単行本①巻をお持ちの方は入場無料!
※”1巻持参の方”のチケットを選択してください。
※会場にて単行本①巻の販売を行います。
※単行本ご購入の方には、懇親会での田波先生占い特典付き!
※当日参加&現金払いOK!(お問い合わせいただくとスムーズです。)
※イベント終了後、登壇者を交えた懇親会を行います!

当日のプログラム

<第一部>
サングリアルトーク

出演:寺山マル先生、田波有希さん、瀬尾亞佑(担当編集)
ゲストMC茸(たけ)さん
アシスタント・キルケ

<第二部>
"ROAD OF THE ●●●"
田波有希先生がタロット占いでAnswer

出演:寺山マル先生、田波有希さん
ゲストMC茸(たけ)さん
アシスタント:LeChatさん

<懇親会>
作者を交えた懇親会
※LeChatさん、茸(たけ)さんは冒頭のみ参加いたします。

▼当日は第一部のみマンガサロン『トリガー』チャンネルで生放送!
マンガサロン『トリガー』チャンネル(ニコニコ動画)

マンガサロン『トリガー』チャンネル(ニコニコ動画)

▼チケットのお申し込みはこちら

http://peatix.com/event/162586/view

 

(文:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿)

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