リアリティとエンタテイメントの両立が成功のカギ!?マンガ大賞受賞&最新刊発売記念『ゴールデンカムイ』ロングインタビューVOL.2

マンガHONZ編集部2016年05月03日 印刷向け表示
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 書店で平積みになる本、というのは、人気作を見るための1つの指標である。
では、今、もっとも書店で平積みされている作品といえばなんだろう。もちろん客層ごとに異なるだろうが、それを踏まえても間違いなくトップグループに入るのが、北海道を舞台にした一大スペクタクルマンガ『ゴールデンカムイ』だ。

『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2014年38号より連載を開始し、2015年度コミックナタリー大賞・第2位、「このマンガがすごい! 2016」(宝島社)オトコ編・第2位。そして、「マンガ大賞2016」では大賞に輝いた注目の話題作である。

今回は、「マンガ大賞2016」の大賞授賞と、4月19日に発売したばかりの最新刊7巻を記念して、『ゴールデンカムイ』担当編集の大熊八甲(おおくま・はっこう)氏に、その面白さの秘密と舞台裏を伺った。

インタビュアーは、マンガ新聞の岡田篤宜。
(構成/佐藤茜)

リアリティとエンタテイメントの両立


――― 『ゴールデンカムイ』は、個性的なキャラクターが多いのも魅力だと思います。どのように作られたのでしょう? 主人公の杉元佐一(すぎもと・さいち)の名前は、野田先生の曽祖父が屯田兵で、その方のお名前が杉本佐一だとブログに記載してありましたが、名前を借りただけで、モデルではない、とのことでした

(主人公の杉元佐一。どんな重傷を負っても生き抜いたことから「不死身の杉元」と呼ばれている)

歴史上の人物をモデルにしています。野田先生も僕も歴史が好きなんですが、歴史上の人物って、キャラが立っている奴がいっぱいいるんですよ。杉元のモデルになった船坂弘(ふなさか・ひろし)は、手榴弾で爆破して、ふっとんでも生きいてた!みたいな人で。

――― ええ!?

1話目で杉元は首を打たれるんですが、あれと同じことを船坂もやられていたりして。でも生きていて、「不死身だ」って言われていたんです。

(頚部に被弾する杉元。実在した船坂弘のエピソードを基にしている)

恋愛マンガの基本が、日常で好きな子と会った瞬間を誇張して、いかに素晴らしい瞬間に描けるかがだとすれば、サバイバルもので、コイツがどんなにすごいやつなのかを一発で表現するには何だろう?と考えたら、不死身のやつがいいんじゃないか、となったんですね。なので、杉元は、船坂弘を根源として野田先生が膨らませた感じです。

無敗の牛山は、力道山と戦った木村政彦の師匠の牛島辰熊(うしじま・たつくま)からです。

(無敗の牛山は、牛島辰熊がモデル。馬さえも簡単に倒していく)

 名前がやばいっすよね。牛の、島の、辰の、熊ですから。で、「不敗の牛島」と呼ばれる柔道家で。100戦無敗、みたいな。殺人ホテル編も、H・Hホームズっていうアメリカの実在の殺人事件をベースにしています。雑誌で最近出た新キャラも、エド・ゲインっていう、人の顔でランプ作ってたような人が元になっています。土方歳三はもういわずもがな。嘘みたいな人たちがいっぱいいるんで、そういう人をコアにすると、一見ぶっとんでても、どこか現実に紐づいていることになるので。そうやってリアリティのあるキャラクターを作っていきたいと思っています。

――― アシパは?

(アイヌの少女・アシパ。弓矢の使い手で、狩猟に長けている)

アシパはちょっと異質で、モデルはいません。名前ありきです。アイヌ語監修をしていただいている、千葉大学の中川裕(なかがわ・ひろし)教授にいくつか名前の候補をいただいた中で、「新年という意味ですが、未来とも解釈でできる」ということでアシパに決めました。名前を決めた瞬間に、明治の激動期から新時代を切り開く+生きる意味を切り開く小さな女の子、というキャラが固まりました。

(アシパの由来について。名は体を表すが如く、アシパの考えにはアイヌの伝統と現実主義が両立している)

――― なるほど。

アイヌの方々って名前を大切にされるんです。例えば、不遇の死を遂げた方の名前を使ってしまうと、冒涜になってしまいますし、同じ名前をつけないっていうのもあるのでなかなか難しいんです。名前が持つ意味って強いですよね。僕は大熊八甲って名前ですが、字面だけ見ると柔道家みたいな出てくるイメージがあるじゃないですか(笑)いざ出てきたら小熊みてーなやつだな、みたいな。

――― そんなことはないですよ(笑)

アライグマかもしれないですけど(笑)

――― いやいやいや(笑) 他にモデルになったものはありますか?

あ、杉元の変顔グルメ描写は、『MAN vs. WILD』のベア・グリルスが着想だと伺ってます。

――― ええ!?

(杉元の変顔。これ以降も目玉など様々な部位を(やや強制的に)食していく)

編集部注:『MAN vs. WILD』は、ディスカバリー・チャンネルのテレビ番組。イギリス軍特殊部隊SAS出身の冒険家ベア・グリルスが、砂漠や沼地などの極限環境下で、サバイバル術を駆使し、脱出および目的のポイントに到着する様子を映す。

サバイバルしていく中で、ミミズとか、蛇とか、ウジ虫とかを生きるために食うんですよ。すっごい嫌そうな顔して。でも「最高の栄養源だ」とか言うんですよ。「別に食いたくないけど生きるためには食わねばならん」っていう感じで。野田先生からこれ面白いよって紹介されて見たんですが、エンタテイメントとして面白かったので、それを生かした形になっています。

――― 本当に色々なところから着想を得てるんですね。

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