『牛を飼う球団』「高知ファイティングドッグス」が生んだ地域創生物語

東 えりか2016年05月06日 印刷向け表示
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牛を飼う球団
作者:喜瀬 雅則
出版社:小学館
発売日:2016-01-20
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プロ野球にはNPB(日本野球機構)の12球団、いわゆるパリーグとセリーグのほかに、独立リーグという存在がある。2004年のプロ野球再編問題以降、地域密着型の野球チームが設立され、その中の一つ、四国アイランドリーグプラス〈四国IL〉のひとつ「高知ファイティングドッグス」が本書の舞台である。


四国アイランドリーグプラスは2005年に設立された。高知は、香川オリーブガイナーズ徳島インディゴソックス愛媛マンダリンパイレーツと毎年優勝を争っているのだが、このところ低迷が続いている。(2016.5/5現在 3位)

 

独立リーグの経営は容易ではない。年間にかかる費用は1億円前後。それで選手の給料から審判やスタッフの費用をすべて賄わなければならない。無名のチームだから集客もままならない。

ではなぜ独立リーグが存在するかといえば、ドラフトで指名されなかった者やなんらかの事情で学校を中退したり、社会人チームを退部したりして、野球界の本流から外れてしまった選手たちが、それでも諦めきれずセカンドチャンスをまつ場所なのである。

ひょんなことから「高知ファイティングドッグス」のオーナーとなった北古味鈴太郎。高知県に生まれ土佐高校を卒業後、大学進学に失敗して放浪。そこから不動産業界に身を投じ31歳で会社を設立した風雲児である。

バイタリティ溢れる北古味は抜群のアイデアマンでもあった。同級生やその知り合い、またその知り合いから人材を集め、野球チームとは思えぬ事業展開を繰りひろげ、自らも売り子として球場に立っている。

過疎地のお年寄りを懐柔し、選手たちに農業を手伝わせて牛を飼い、参加費を取って外国選手のトライアウトをし、野球好きな女医をチームドクターにするついでに地域の訪問介護をやってもらい、引退したばかりの選手をいきなり社長に抜擢する。

世間をあっと言わせたのが、米メジャーリーグ「テキサス・レンジャーズ」を自由契約になった藤川球児の入団だ。2015年6月1日のことである。故郷である高知で投げる。このことにより球団記録が次々と塗り替えられた。「1日の販売記録」「ユニホームなどの関連グッズの売り上げ」さらに、選手たちが育てている農産物にも注文が殺到したという。(2016年に阪神タイガーズに復帰する)

地方のマイナス面をうまくプラス思考に持っていくその手腕の見事さに舌を巻く。このチームでプレイしていた選手たちはどこに行っても潰しがきくだろう。覚醒剤に嵌った、かつてのスタープレイヤーに読ませたい一冊である。                         「STORY BOX4月号」(小学館)より加筆転載。

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