すべてのパパの涙腺を崩壊させる『ちちこぐさ』。目を閉じて想起してほしい、息子の寝顔に誓った守り抜く決意。わがままを許せなかった自分を悔いたあの日。いつの間にか握る必要のなくなった小さな小さな手。

工藤 啓2016年05月12日 印刷向け表示
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ちちこぐさ(1) (ブレイドコミックス)
作者:田川 ミ
出版社:マッグガーデン
発売日:2013-07-10
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妻を不意の事故で失った旅の薬売りトラ吉の傍には一人息子のシロウ。一年の大半を、故郷を離れて薬を配置して回る仕事は、残業も転勤も文句を言わずにこなしていく企業戦士と、子どもを育てる専業主婦という世帯モデルを彷彿とさせる。しかし、突然の父子家庭。トラ吉が選んだのは、息子とともに旅する生活だった。

 

『ちちこぐさ』

昨年、双子を授かり息子が四人となった。双子出産の二か月前、妻が突然入院となった。毎回、一緒に行く妊婦健診の日、主治医からの「今日から入院しましょう」の一言で父子家庭生活が確定した。息子二人との極めて密度の濃い生活は、ちょっとしたことで息子たちにあたってしまう自分への嫌悪と、子どもたちの優しい言葉やおどけたしぐさ、クリエイティブな寝相ですやすや眠る寝顔に対する「自分のところに生まれてきてくれて本当にありがとう」の気持ちが、不安定に交錯した日々だった。

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『ちちこぐさ』の主人公トラ吉は、「イクメン」や「ワークライフバランス」という言葉が躍る現代においては過去の遺物みたいな人間かもしれない。しかし、父子家庭となり、最愛の息子シロウと生きていくなか、子育てに追い詰められながらも、周囲の配慮や優しさに支えられ、プライドを捨て息子のために頭を下げる。それは自らを卑下するのではなく、愛する息子のため、自らの小さな器を少しずつ、本当に少しずつ、父親としての成長とともに広げていくことができたからこそなのだ。

 

『ちちこぐさ』

 

トラ吉は、父親としてもがきながら息子と付き合っていく。日々の成長を喜び、いつまでもシロウと時間を過ごしたいと考えている。一方、いつかは自立をして自分のもとを飛び立っていくべきであり、また、父子家庭・旅家庭という環境がシロウにとって正しい選択肢であるのか不安にさいなまれている。ポジティブな感情とネガティブな感情が入れ代わり立ち代わり、ときに混ざり合いながら、父子二人の人生は前に進んでいく。
 

 

『ちちこぐさ』

ひとりの父親として四人の息子との思い出や”今日の出来事”を重ねるように読み進めると、涙腺の崩壊が不可避な漫画であることに疑いの余地はない。読みながら、目の前にいない息子たちに対して自身の感情や心情が湧く出てくるのだ。

 

・パパはちょっとだけ調子が悪いんだ。でもすぐに治して元気になるから、そんなに泣くなよ。お前をひとりにはしないよ。本当にごめんよ。
 

 

『ちちこぐさ』

 

・お前の明るい表情や声があれば、パパはいくらだって頑張れるんだ。だからいつでも最高の笑顔でいてくれよ。
 

 

『ちちこぐさ』

 

 

・パパの子どもに生まれてくれて本当にありがとう。
 

 

『ちちこぐさ』

 

・パパは幸せだよ
 

 

『ちちこぐさ』

 

本書は、ぜひ、息子を一人前に育てた父親に、現役で子育て中のパパに読んでほしい。そしてできることならば、毎日、子育てに仕事に奮闘されているママたちにも読んでいただきたい。『ちちこぐさ』は、パパと息子の単純で複雑な、複雑なようで至極単純な関係性を、笑いと涙で読み進めることのできる稀有な漫画である。

 

『ちちこぐさ』

 

 

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