美少女相手でも不能な男がNTRでギンギンに!? 業深き"性癖"との付き合い方『ネトラレミノル』

マンガサロン『トリガー』2016年05月23日 印刷向け表示
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ネトラレミノル (1) (MFコミックス フラッパーシリーズ)
作者:國本 隆史
出版社:KADOKAWA/メディアファクトリー
発売日:2016-05-23
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「こうすると気持ちが良い」
「これをしないと気持ちが悪くなる」
そんな"癖"や"性行"が、誰しもあると思います。もしかしたら、人には口には出し難い癖を持っているかもしれませんね。中には、一般的な社会道徳に反してしまうような癖をお持ちの方もいるでしょう。

この『ネトラレミノル』は「カンダウリズム」、いわゆる「寝取られ(NTR)」「寝取らせ」をテーマにした物語です。しかし、それを超えて「特殊な性質を持つマイノリティの辛みと、向き合い方」という汎いテーマも感じられる作品です。

 

舞台は男女交際禁止のサガール高校。
しかし、主人公・千林ミノルは学園のアイドル的存在である二ツ山めぐみと交際中。

楚々たる黒髪ロングストレートの二ツ山めぐみは、とても優しい性格でミノルのことが大好き。そして、二ツ山の名が表す通り胸部の戦闘力は「F以上だ……!(グシャァ)」「え、Fだと……!?」と思わずスカウターを握り潰したくなるような巨大山脈。正に非の打ち所のない美少女!

そんな夢の様な彼女が体を許してくれるだってェェェッ?! ふざけるなよ! リア充爆発しろ!! ……と思うのはちょっと待ってあげて下さい。

ミノルはめぐみとおせっせしようとしても、なぜかミノルズサンは《安らかなる眠り/Rest in Peace》についたまま。

おおミノル! ここで たたないとは なにごとだ! 動け動け動け、動け、動け、動け、動いてよ! 今動かなきゃなんにもならないんだ!!

しかし、このミノルの辛さが他人事でない人も多いことでしょう。ED、即ちErectile Dysfunctionは、現代日本では「軽症」「中等症」「完全型」の三種類を併せると一千万人以上、成人男性の実に六人に一人がなっているそうです。それが原因となって本人のトラウマとなってしまったり、パートナーと気まずくなって別れてしまったりといったこともあり、少子高齢化社会においても深刻な問題です。

最早ミノルはバイアグラを飲むしかないのか。あるいはレビトラか、シアリスか。高校生のお小遣いでも買えなくはないジェネリックであるカマグラ、カベルタ、シラグラ、バリフ、メガリス、タダシップ、タダリス、タダポックスか。

そんな心配をよそに、ミノルの天を衝かなかったドリルはあることをきっかけに天元突破します。


そう、他人にめぐみを嫌らしい目で見られることで、果てしない興奮を覚えるのです!

しかし、カンダウリズムを自覚したミノルは非常に思い悩んでいました。普通に愛したいだけなのに、自分では彼女を幸せにできないという苦悩。途中まではコメディ色強く描かれる本作ですが、ミノルの悩みは非常に切実です。

人と同じようにしようとしてもできない。
「普通」と呼ばれるものがよくわからない。
「普通」になりたいけれどなれない。

解る人には痛いほどよく解る、解らない人には一生解らない悩みでしょう。
それは、「普通」の人が意識せず属す「普通」から外れてしまっているが故に、疎外される辛さです。

めぐみの「普通」に、「普通」じゃない自分は寄り添えないのではないのか。どんなに好きでも、彼女を幸せにできないのでは意味が無いのではないか。

自分がこんな風に「異常」でさえなかったら……。そういった考えから、マイノリティに属する人間は自分のことを責めて嫌いになってしまいがちです。が、本当はそんな必要はないのです。


「普通」、「常識」、「一般的」、「まとも」。
そういったものは、全て幻想だとかつて赤木しげるが教えてくれました。


まともって何?
平均値、世間並みってことか?そういう恥ずかしくない暮らしってことか?

知ってる?それだぜ!お前を苦しめているものの正体って。

お前は、そのまとも、正常であろうっていう価値観と自分の本心、
魂との板ばさみに苦しんでいたんだ。

振り回されてきた。そのまとも、正しさに。

考えてみろ。正しい人間とか正しい人生とか、それっておかしな言葉だろ?
ちょっと深く考えると何言ってんだかわからないぞ。

気持ち悪いじゃないか。正しい人間、正しい人生なんて!

ありはしないんだって、そんなもの元々。
ありはしないが、それは時代時代で必ず表れ俺たちを惑わす。

暗雲!俺たちはその幻想をどうしても振り捨てられない。
一種の集団催眠みたいなもん。

まやかしさ。そんなもんに振り回されちゃいけない。

とりあえずそれは捨てちまっていい。
そんなものと勝負しなくていい。
そんなものに合わせなくていい。

そういう意味じゃ駄目人間になっていい!

 

竹書房 福本伸行著『天 ~天和通りの快男児~』18巻より

「正しい道」なんて無い。
みんなが行ってる道が正しい道でもないし、それに合わせなくても良いんです。
好きな物・嫌いな物、心地よいこと・不快なこと、全ては人それぞれです。

そのままで良いんだ。
ありのままの自分を受け入れ、想いに魂に沿って生きれば良いんだ。

自分の特質を忌むべきものと押さえ込まず、付き合って行けば良いんだ。
そんな風に、マイノリティの在り方へ優しく賛歌を送ってくれる作品は好きです。

ただ、残念ながらそんな当たり前のことを当たり前ではないように思っている人も世の中には多くいます。

自分が好き(嫌い)なものは他人も好き(嫌い)だろう

自分はこう感じ、思い、考えるから他人もこう感じ、思い、考えるだろう

自分はこれくらいのことはこの位の力配分でできるのだから、他人も同じようにできて当然だ


これら全ては、真に他者の立場に立って考える想像力の欠如です。人間の想像力に限界があることもありますが、実際に自分が体験していない事柄に関しては想像が及びにくいものなので、こうしたことがもたらす悲劇は日々様々な所で起きてしまっています。

数多の物語や表現は、それを緩和する効果を持つ薬です。擬似的な体験もまた、想像力を補完して他者の立場で考える手助けになります。そういう意味で、色々な世界や人間、概念の存在を知れる漫画は優れた教材です。

共感はできないまでも理解だけでもできるようになれば、世界はもう少しだけ優しい形になれるのではないでしょうか。この『ネトラレミノル』を読んで、カンダウリズムの人の気持ちを知ることは人生においてプラスに働くでしょう。

今後、ミノルがどのように自分の性癖と向き合い、付き合って行くのか。めぐみとの関係はどうなっていくのか。見守って行きたいです。


最後に、一つ大切なことを言います。

表紙や画像を見て頂ければ解ると思いますが、登場する女の子が皆かわいいです。
 

 

イベント情報

明日5月24日(火)、こちらの『ネトラレミノル』単行本1巻発売記念イベントを開催します!

 

詳細・チケットはこちら! http://peatix.com/event/169436 

 

 (文章:マンガサロン『トリガー』)兎来栄寿 

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