しびれるほどおもしろいのに、センター試験9割もとらせてくれる夢の世界史マンガが今ここに『ゆげ塾の構造がわかる世界史』

山田 義久2016年05月25日 印刷向け表示
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ゆげ塾の構造がわかる世界史
作者:ゆげ塾(ゆげひろのぶ・川本杏奈・野村岳司)
出版社:飛鳥新社
発売日:2014-03-19
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 よく「歴史はマンガで学べ!」といいますが、、、『マンガ世界の歴史』とか10冊以上あったりと、なにげにめちゃめちゃ長いですよね?そこで、もっと手っ取り早く歴史のエッセンスを、知的興奮とともにさくっと学べる珠玉の一冊を紹介します。

・・・というか、そもそも歴史が好きな人などは、この目次見ただけで即買いじゃないでしょうか。

序章 坂本龍馬とアメリカ南北戦争
第1章 ウサイン=ボルトはなぜ速い?
第2章 クレオパトラはギリシア人
第3章 なぜ、フランスは原発大国なのか
第4章 ヨーグルトで知る遊牧民の戦闘力
第5章 なぜ、アメリカは銃を持つのか
第6章 EUの誕生。国民とは何か
第7章 なぜ、カトリック教会は2千年以上続いているのか
第8章 国際連盟を破壊し、国際連合と戦った日本

この『ゆげ塾の構造がわかる世界史』の原作は、東京・池袋にある世界史専門の受験予備校”ゆげ塾”の講師、ゆげひろのぶ氏。帯には「塾生の9割以上が、センター9割以上得点!!」と書いてあり、普段は受験生に点を取らせるための指導をし、実績を残されている方です。

ただ、本作は受験参考書を単純にマンガに変換しただけような、安易な発想でつくられたものではありません。
まえがきによると、本作のコンセプトとして「歴史を単なる流れでなく、その根底にあるものを!またその人物でなく、その人物が動いた背景を!」とあります。やや小難しく(?)は、「歴史を動かしてきた構造(=社会科学 例:ウェーバー、マルクス、モンテスキュー、ロック等)を丁寧に説明する」ことを主眼にしているとのこと。
つまり、ナポレオンや坂本龍馬などのヒーローが目覚ましい活躍して終わりのいわゆる"歴史もの"とは一線を画すわけです。

となると、高尚なマンガなのか、、という印象を持たれるかもしれませんが、本作が俊逸なのは、きちんと人物描写も経由する点です。
司馬遼太郎の『竜馬が行く』がやたら人気なのからもわかるように、やっぱり歴史を読むときに引き込まれるのは、登場人物の生の感情と行動。つまり、何を考え、何に挑戦し、何に悔しがり、何にムカついたか、などなど。
そのあたりを歴史のキーパーソンに語らせ読者をひきつけながらも、その背景となった歴史、社会の構造を概説し「必ずしもそのキーパーソン一人が歴史を動かしたのでない」ということをおもしろおかしく絶妙に描いていく、、それが本作の一番の特徴なのです(ちなみに、キーパーソンがいない章は、国が擬人化(やたらかわいい女の子)されて描かれています)。

(擬人化された国。左がフランスで右がイギリス。何気にDisられるフランス)

例えば、その坂本龍馬ですが、早速序章においてアメリカの南北戦争との関係で登場します。
日本で坂本龍馬といえば、幕末の志士の一人として縦横無尽に日本を駆け巡ったことで有名ですが、彼の活躍の背景にあった社会構造全体を見るためには、実はアメリカまで視野を広げる必要がある模様。

アメリカで起きた大規模な内戦・南北戦争


軍事技術の発達により、重心にらせん状の溝(ライフリング)を作ったライフル銃の登場


部品の規格化、互換方式の導入により大量生産、そして戦後の銃余り


その在庫品を坂本龍馬が購入(←中国にアヘンを売って戦争引き起こしたイギリスの商会より)、薩長へ


ライフル銃による新政府軍の武器優位

このように討幕運動の背景には、アメリカの工業化、そして南北戦争による軍事技術の発展があったわけです。もし、ライフリングがない銃同士で新・旧政府軍が戦っていたら、戦力が拮抗して歴史が変わっていたかも、、なんて想像することも可能です。

このような形で、本作は「なぜフランスが原発大国なのか」とか「なぜ、ヨーグルトがモンゴル、インドからブルガリアまで広範囲で食べられているのか」等の我々がよく知る事実の歴史的背景にどのような論理があるのかをおもしろおかしく、しかし説得力を持って描かれていきます。

そのなかでも特に香ばしかったのが、中世ヨーロッパを舞台にした第6章「なぜカトリック教会は2千年以上続いているのか」。

ゲルマン民族の大移動により経済崩壊+イスラム勢力に地中海奪われる

ヨーロッパは内陸の森で孤立

自給自足の貧困、それに耐えるための信仰

厳しい産児制限の必要性(小麦の食料としての低生産性)

婚前交渉の禁止、処女性の重視

ローマ教会関係者はもちろん童貞


世襲の禁止


健全な組織の維持

要は、ローマ教会の組織が永続してきたのは、ルールを作った人は童貞だったからということですね。まぁ、それはそれでいいのですが、童貞が妄想のままいろいろ決め事つくるとろくなことがないのは、まぁ、ご想像のとおりで、いわゆるMissionary Positionの語源もまさにこのあたりにあることが描かれていたりします。

このように、本作は人間味溢れるエピソードで興味を維持させられながら、歴史のダイナミズムを体感させられる傑作です。もちろん、論理に違和感を感じる部分があったりすると思うのですが、逆に私は「これはこうなったから、こうなのである!」と自分の歴史観、ストーリー性を言い切って、リスクをとっているところに逆に好感を覚えます。まぁ、これ読んでも歴史が好きになれない人は、おそらく一生歴史を好きになることはないと断言します。そんな作品でした!超おススメ!(※画像の出所はすべて本書)

ゆげ塾の中国とアラブがわかる世界史
作者:ゆげ塾(ゆげひろのぶ・川本杏奈・野村岳司)
出版社:飛鳥新社
発売日:2015-12-03
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 ゆげ塾からはもう一冊、中国とアラブに関する作品が出版されている。

 

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
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