もしも大災害でたった一人生き延びたら……新旧『サバイバル』『少年Sの記録』比較

マンガサロン『トリガー』2016年06月04日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
サバイバル 1巻
作者:さいとう・たかを
出版社:リイド社
発売日:2013-09-20
  • Amazon Kindle

さいとう・たかを先生。
今年御年80を迎える、言わずと知れた『ゴルゴ13』を描いている巨匠である。昨年放映されたNHKの『漫勉』での浦沢直樹先生との対談は、その慧眼ぶりがよく解り非常に面白いので必読だ。

しかし、今の若い人にはあまり馴染みがないかもしれない。ただ、その面白さは時代を越えた普遍性がある。『サバイバル』もそんなの不朽の名作の一つだ。その証左として、最近『少年Sの記録』という形で多少現代ナイズされた形でリバイバルされ、こちらも人気を博している。

サバイバル~少年Sの記録~ 1 (SPコミックス)
作者:宮川輝
出版社:リイド社
発売日:2016-01-13
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

  折角なので、両作品を比較しながら紹介していこう(作中での表現に準拠して、各主人公を原作『サバイバル』の方はサトル、『サバイバル~少年Sの記録~』の方は少年Sと表記する)。

 


気づけば洞窟の中

友達と洞窟を探検している最中に、地震で崩れサトル・少年Sは意識を失ってしまっていた。そこで、彼は友達の名前を叫ぶ。

サトルが呼んだ名前はアキラ、オサム、佐藤、タダシ、ヒロシ。

少年Sが呼んだ名前はタッツン、ヨッチン、ノンちゃん、コーちゃんと名前を変えている(現代に多い名前・呼び方かというと微妙な所ではあるが)。

 


非常時に参照するアイテム

洞窟を脱出したものの、目に見える光景は見たこともない場所。そう、地殻変動によって地震が頻発し、水位が上昇して陸地だった部分が島になってしまった世界だったのだ。

サトルは、コンパスを見る。しかし、コンパスが役に立たなくなってしまっていた。

少年Sはスマホを見る。スマホも電波がない所では使える機能も限られてしまう。やがて、このスマホはバッテリーも切れ完全に使い物にならなくなってしまう。

 

木の実で腹を下す

サトル・少年Sは、空腹でさまよう中で木の実を食べお腹を壊してしまう。その時、ジャングルに駆け込んで用を足す時の擬音がそれぞれ絶妙に異なっている。

サトルはシャーッ ビリッビリッビィーーッ

少年Sはトュルリラァ~

何をもって少年Sはこんな音になったのかは、作者に訊いてみたい所だ。

 


魚の捕まえ方

食べる物を求めて、サトル・少年Sは魚を捕らえようとする。しかし、泳ぐ魚を捕まえるのは非常に困難を極める。そこで、サトルはリュックサックを使って追い込み漁をする。少年Sも、全く同じ方法で魚を取る。

鞄の形が少々現代ナイズされている。しかし、水流で流されないように、鞄の底に穴を開けるのは同じ。ナカナを生臭くてそのまま食べられないのも同じである。

ただ、その後サトル・少年Aは仕方なく生でも魚を食べることになる。だが、生魚からはビタミンA・Cなどが野菜を食べるのと同等以上に摂取できるので、結果的に健康には寄与することになる。

 

火の起こし方

取った魚を焼いて食べるべく、火を起こそうとするサトル・少年S。しかし、木の棒で火を起こそうとしても一向に上手く行かない。そこで、サトル・少年Sはそれぞれ工夫をする。

サトルは、カメラのフィルムレンズ、太陽光を使って火を起こした。

少年Sは動画サイトから得た知識により、ガムの包み紙と乾電池を使った。
ちなみに、実際にガムの包み紙と乾電池で火を起こす方法はYoutubeにあるので、観ておくと何かの時に役に立つかもしれない。
 

 

水を飲まないと疲れない?

サトル・少年Sは、住処を作ったり、食料を確保したりして一人で生きて行くために一日中忙しなく動き回る必要に駆られていた。そんな中で、ある日水をあまり飲まなかった時には疲労が少ないことに気付く。

少し補足しておきたいが、水を飲んで下がった体温を上げようと脂肪を燃やすのにカロリーを消費するのは本当なので、サトルのように慢性的に空腹で栄養不足の状態では水を飲まない方が疲れが溜まらないというのは真実だ。ただ、現代で普通の暮らしをしている私たちはしっかりと水分を摂った方がいい。水を飲み、汗や尿として排泄することによって体に溜まった老廃物を押し流すことができるからだ。ただ、飲み過ぎると胃液を薄めてしまい、食べた物を十分に消化できず栄養吸収率が下がり、疲れやすくなってしまうので、一度に飲むのはコップ一杯程度が望ましい。

 


脅威の侵略者、ネズミ

『サバイバル』といえば、ネズミ。

自宅を作り、木の実やキノコ、干し魚など食料を貯蔵していたサトル・少年Sだが、留守や睡眠中にやって来るネズミにことごとく奪われてしまう。又、ネズミが数多く媒介する疫病もサトル・少年Sにとって大きな脅威となる。

そんなネズミだが、少年Sの方はちょっとかわいく描かれている。

一方、サトルの方に襲い来るネズミは殺意満々で、某猫型ロボットがネズミ嫌いになるのも納得である。とにかく、原作『サバイバル』を読むと、ネズミの恐ろしさを実感させられる。寝ている間や留守中に食料を荒らされるだけでなく、致命的な疾病の媒介者でもあるからだ。

 


極限状況サスペンスのお手本

その後も、サトル・少年Sにはサバイバルしていく上で数々の困難が降り掛かってくる。

いかなる極限状態を設定するか
これは良いサスペンスを創る際に考えるべき命題だ。そのままでは死んでしまうような状況に置かれた主人公が、どんな機知や勇気で窮地を切り抜けるのか。あるいは、追いつめられたが故に剥き出しにされる人間の本質の姿をどう描くか。

この『サバイバル』は、その辺りの面白さが過不足なく詰まっている。1972年に『漂流教室』が始まり、1973年に『日本沈没』や『ノストラダムスの大予言』が発売され大ブームになった時代背景が生み出し受け入れられた作品であると思うが、原作は今改めて読んでも続きを貪るように読みたくなる。

圧倒的な孤独と逆境の中、一つ一つの試練を乗り越え、サトル・少年Sは少しずつ着実にたくましく成長して行く。少年が青年になる過程を見る成長物語としても実に面白い。是非、若い読者にもさいとう・たかを先生の世界に触れてみて欲しい。

サバイバル試し読み

 

『少年Sの記録』はどこまで描かれるか、原作と同じ道筋を辿るのかわからないが、こちらも楽しみに読んで行きたい。

 

 余談だが、直接的な描写がないとはいえ少年誌で14歳の少年と大人の女性が結ばれた原作の「あのシーン」は今の時代に描けるのか、描くとしたらどう表現するのかは興味が尽きない。
 

 

(文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿)

サバイバル~少年Sの記録~ 1 (SPコミックス)
作者:宮川輝
出版社:リイド社
発売日:2016-01-13
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
サバイバル 文庫 全10巻+ 外伝 完結セット (リイド文庫)
作者:さいとう・たかを
出版社:リイド社
発売日:2010-11-01
  • Amazon

 

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら

人気記事