がんばりすぎるあなたへ、ソフトSMでイケナイ「息抜き」のススメ!?『ナナとカオル』 純愛&SMラブコメ

深川 奈々2016年06月13日 印刷向け表示
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ナナとカオル 1 (ジェッツコミックス)

作者:甘詰 留太
出版社:白泉社
発売日:2008-11-28
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「高校生のSM」と聞いて回れ右しようとしようとしたあなた。ちょーっと待ってください。

私も最初はそう思いました。これは女性向けの漫画ではないだろうと。

でも、この漫画で描かれているのはまぎれもなく高校生の純愛で、女性の私から見てもハマる要素がたくさんあったので、そちらを紹介させてください。 

高嶺の花のナナと、劣等生のカオル、ふたりの距離を縮めた「息抜き」

ヒロインのナナはいわゆる「高嶺の花」です。

美人で、スタイルもよく、成績優秀な優等生。生徒会の副会長を務め、陸上部のエースでもあります。

 

 

一方、ナナの幼馴染であるカオルは「卑屈」です。

イケメンとはほど遠く、成績の悪いおちこぼれ。

SMに関するものの鑑賞が趣味で、せっせとグッズを集める日々。もちろん童貞。ついたあだなは「キモムラ」。

 

 そんなカオルのコレクションがひょんなきっかけでナナの手に渡ったことから、ふたりの「息抜き」は始まります。

 

 「“いいコ”でいなきゃいけない」ナナの問題

 「息抜き」というのは、ナナのつくった言葉です。

要はカオルが用意してくれるソフトなSM行為のことを指しているのですが、

ひょんなことから体験したそれが、いちばんの「息抜き」になったことからそう呼ぶようになったのですね。

 

優等生のナナの毎日は、常にこなさなければいけないタスクに追われています。

授業の予習・復習はもちろんですが、東大を受験ための勉強/生徒会としてイベント運営(球技大会や文化祭など)/陸上部の練習メニューづくりetc……

え、こんなに引き受けちゃうの?と私なんかは思うのですが、頼まれると断れない性格のナナはすべて引き受け、そつなくこなしてしまうのです。

 

「別に頑張りたくて頑張ってるんじゃないわ!!」「…頼まれれば私なんとなく断れないだけ」 ストレスのたまりそうな性格です。

こうした、ナナの「いい子でいなきゃいけない」という自分に課したノルマは、家庭環境からきていると思われます。

離婚する両親の間にはさまれた経験、仕事の忙しい母が不在の家をひとりで任されていること。

急いで大人にならざるを得なかった子供だったのでしょう。

人に頼るのが苦手で、自分1人でなんでも抱えて込んでしまいがちです。

 

「周りがいつも期待する……私じゃなくなっちゃうんだ……」

 そんなナナが素になれるのは、幼馴染のカオルだけ。

そとではカオルを叱るしっかり者のナナですが、実は頼れるのはカオルだけだということが、この「息抜き」によって明らかになります。

カオルに全身を預け、「いい子」の外ヅラから解放されていくナナの様子にはぞくっとするものがあります。

 

 カオルの徹底した献身っぷり

このマンガが安心して読める理由のひとつに、Sであるカオルの徹底した献身と紳士っぷりがあるでしょう。

カオルは、ナナが本当に嫌がることは決してやりません。

ナナの一挙手一投足に気を配り、使用する用具には細心の注意を払い、ナナを損なうことのないようにあらゆる配慮をしています。

 

 

 

 

一歩間違えば大きなケガにもつながる行為(身体的にも社会的にも)。

ジェットコースターは安全装置があるからこそ、悲鳴をあげながら楽しめるのです。

ナナが安心して「息抜き」に集中できるよう、カオルはジェットコースターの安全装置になろうとしているよう。

ここまで、カオルに心を尽くされているナナが正直うらやましく感じます。

 

……しかし、ここまできわどいSM行為をしているのに、このふたり、セックスはしていないんですよね。驚くことに。どうとでもできるチャンスはいくらでもあるはずなのに……

それはカオルがナナの存在を大きくとらえ過ぎているから。ここにカオルの劣等感の問題があるのですが…

 劣等コンプレックスを乗り越えろ! カオル!

「息抜き」を続けていくうちに、カオルにも欲求が大きくなっていきます。

「ナナをむちゃくちゃにしたい」「ナナを自分だけのものにしたい」

 

そもそもカオルがSM趣味に目覚めたのは、ナナを遠くに感じ始めた中学生のころ。

自分をおいてどんどん遠くへ行ってしまうナナ。

それを自分のもとにおいておきたいという欲望から、カオルのSM趣味は始まっています。

そして、ついにその欲求をかなえ、ナナに拘束具を着せ「肉の塊」にすることに成功するのですが、そこで出てきたのは、カオルの一番素直な欲求でした。

 

 

手足の自由を奪って、自分の手の届く存在に落とし込んだナナではなく、

動いて、生活して、意思をもったすべてのナナがほしいんだと気づくんですね。

「ナナのそばにいたい」

カオルのこの一番の欲求は、自覚するのが怖くてずっと見ないようにしてきた欲求です。

……なんていじらしいのでしょう。

でも、こういうことって誰しも覚えがあると思います。

手に入りっこないものを「欲しい」と思うのは怖い。その気持ちに目をつむるほうが楽だと。

ただ、カオルはナナと「息抜き」を重ねることで、欲がでてきてしまったんですね。

「そばにいたい」その欲求をみとめてしまったら、あとは努力をするしかないのです。

 

自分のなかの深い劣等感を越えるため、ナナと同じ東大を目指した勉強をはじめ、ジョギングをし、筋トレをするカオル……

いじらしいこと、このうえありません。

  好きなひとのそばにいたい、無理かもしれないけれど釣り合う自分になりたい。

これを青春の純愛と呼ばずにいられるでしょうか!

私がこのマンガをハマった大きな要因は、このカオルの劣等感を乗り越えようとする姿にあります。

がんばれ、カオル。

 

素直になれない不器用なふたりが、この先ずっと一緒にいられるのか。

カオルは自身の劣等感を乗り越えることができるのか。

今後のふたりの行方を見守りたいと思います。

 

ナナとカオル 17 (ジェッツコミックス)
作者:甘詰留太
出版社:白泉社
発売日:2016-04-28
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