美少年の絶対領域は好きですか? スタイリッシュバディ伝奇ミステリー『囚獄のヴァニタス』

マンガサロン『トリガー』2016年06月17日 印刷向け表示
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囚獄のヴァニタス(1) (KCx)
作者:秋月 壱葉
出版社:講談社
発売日:2016-04-07
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大正風味。伝奇ミステリー。美青年。美少年。バディ物。

この中のどれか一つでも好きな要素があれば手に取ってみて損はない、もし複数好きなものがあれば強くお薦めしたいのが『囚獄のヴァニタス』です。

 

怪奇事件、刑事、謎の少年

東都では、被害者の顔面が剥がれたり、白骨化したりしている奇妙で不可解な殺人事件が続発していた。九鬼正義(くきまさよし)は、その名の通り正義感が強くそれらの事件を追う殺人課の刑事。ある日九鬼は、謎の少年・笘篠世恢(とましのせかい)に出会う。「…貴方、視えてますね」と謎めいた発言をする笘篠。

他の人間には視えず、九鬼だけに視えていたのは人の心の奥底に眠る欲望が顕現した姿である「宿惡」。笘篠と共に九鬼は「宿惡」と対峙し、数々の事件の真相に迫っていく――

砕けた言い方をすれば、熱血イケメン刑事とミステリアス美少年コンビが怪死を追って行く事件簿です。その組み合わせだけで「もうたまらん!」という私のような方は、最早問答無用。読むべきです。

 

この作品のポイントは、舞台となる場所の独特の雰囲気ですね。

朝光劇場

金糸雀ビル

来栖自然博物館

どれも、仄かに時代の香りがします。
以前は『帝都探偵絵図』のコミカライズを描かれていた秋月壱葉先生ですが、今回も趣味嗜好が存分に発揮されている作品であると思います。

そして、極めつけは本作の最重要人物である笘篠の格好! 

彼の出で立ちからも大正ロマンの風情を感じます。架空の時代、都市ではありますが、そういったテイストがふんだんに取り込まれています。こういった雰囲気が好きな方には堪らないのではないでしょうか。

というかですね……学ラン、学帽、マント、短パン、たまに番傘、そして絶対領域って! 何ですか、このあざとさは! そんな見え透いたエサに……まんまと釣られる私です!! 

美少年は世界の宝。

もちろん、美少女も美青年も美女も世界の宝には違いないです。が、とりわけ美少年というのはその中でも最も稀少性の高い存在です。僅かな時間で失われゆく刹那的で儚い魅力。中でも、「ミステリアスな美少年」というのはリリンの生み出したるものの極みであり、宇宙の至宝です。いやぁ、良いですねぇ……。

九鬼を挑発したり、ナチュラルにボディタッチしていく所が堪りません。細い太ももという矛盾がいい。こんな太ももを晒していては、何をされても何を妄想されても致し方ない所でしょう。秋月壱葉先生の絵の美しさは、シバムラーである私が愛読していた『公僕の警部』の頃から更にレベルアップしていると感じます。美しい筆致で描かれる、笘篠の私服姿の時の鎖骨が堪りません。堪りません。

造形萌え、キャラ萌え以外の話で行くと、このお話の鍵となっている「宿惡」という存在。その正体、「宿惡」が発現する理由、あるいはその「宿惡」に執着する笘篠の真意も今後の見所です。それに加え、人が人でない異形となってしまう程の欲望、妄執が生み出してしまうその姿に対する、九鬼の苦悩。そここそ、本作の醍醐味の一つであると感じます。人でなくなったとは言え、元人間を手に掛けることへの躊躇いはやはり生まれてしまいます。それでも九鬼は、聡明さと熱き使命感から「命を守る」という信条で行動し続けます。

ただ、その中で刑務所に潜入捜査を行った際に、そこに充満する負の気にあてられ、「人は根本的に変わることができない、そうであればいくら犯罪者を捕まえたとしても同じことではないのか?」という疑問が生じます。九鬼は、自らの行為をこの先も肯定していけるのか。笘篠と行動を共にし続けられるのか。立ち位置が揺らいでしまっては、強い正義感が反転して九鬼自身が「宿惡」になってしまいかねないのでは……と心配しつつ。

東都に漂う、怪しく剣呑な影。

それを誅伐する二人の活躍と葛藤を、今後も楽しみにしたいです。

 

ああそれにしても、見ていてニヤニヤが止まらないコンビだなぁ!

 

(文:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿)

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