舛添さんを擁護することと昭和16年に「戦争反対」と言うこと『アルキメデスの大戦』 日本の同調圧力と「天才」の役割について

佐渡島 庸平2016年06月30日 印刷向け表示
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完結した『砂の栄冠』は、三田紀房の最高傑作だった。僕は、三田さんと15年近く一緒に仕事をしているが、『砂の栄冠』には一切、関与していない。だから、読者として純粋に楽しめたと同時に、少し悔しかった。
前回の『砂の栄冠』レビューはこちら

休む間もなく、ヤンマガですぐに始まった新連載『アルキメデスの大戦』も、僕は担当編集ではないものの、実はこの作品にはゆるやかに関与している。

アルキメデスの大戦(1) (ヤンマガKCスペシャル)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2016-05-06
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15年前、三田さんと僕でモーニング編集部に出した幻の一作が、原点にあるのだ。1年目の僕は、部の飲み会で先輩編集者に「『甲子園へ行こう!』の三田さん、興味ある?あるなら一緒に会いに行こう」と声をかけられた。三田さんと先輩の間で、第二次世界大戦の時期を舞台にした戦争もののマンガをしようと話し合っていて、資料を探して、まとめるのがうまそうという理由だけで僕には声がかけられた。それで三田さんと僕らは、資料を読み、監修者を探し、3話まで作り、編集長のところへ見せにいった。


結果はあっけなかった。
「この作品の面白さは関係なく、『ジパング』が載っている間にこの連載はない」と言われたのだ。もちろん僕は先輩を「そこ、根回し済みだと思ってたのに……」と恨めしげな眼差しで眺めた。で、先輩と二人で三田さんのところに謝りにいった。その謝りの時の打ち合わせで出てきたのが『ドラゴン桜』のアイディアだったのだから、何が成功の元かは分からない。

『アルキメデスの大戦』は、第ニ次世界大戦の時代の日本が舞台だ。そして、過去に協力をお願いした方が、監修者として協力してくれている。まぼろしのネームの主人公は、パイロットだったが、今回は海軍だ。数学の天才が、戦艦大和の建造を阻止するべく、奮闘する物語だ。三田さんは、国立競技場の建設費をめぐるニュースを見ながら、同じような茶番が、歴史でも繰り返されていることを思い出し、戦艦大和をテーマにしたそうだ。


日本は同調圧力が強い。政治家であっても、庶民的なところで食事をしていたり、宿泊していることを求められてしまう。元東京都知事の舛添さんの問題も、政治家であっても贅沢を許さないという同調圧力が、根底にはあるように思う。

そして、その同調圧力は、マンガにも影響する。マンガの主人公は、みんな特別な能力の持ち主だったはずが、いつのまにか、共感しやすい普通の人達になってしまっている。三田さんのマンガの最大の魅力は、常識に従わないところだ。三田さんのマンガの主人公は、一般的な感覚とかけ離れている。僕が編集している『インベスターZ』では、日本一の進学校のトップクラスの学生が、高校生なのに、3,000億を運用する。そして、『アルキメデスの大戦』では、数学の天才が、海軍の中で孤軍奮闘して、日本を正しい方向へと導こうとする。

人に認められたいなんて、気持ちは微塵もない。
「人柄なのだから仕方がない まあいい」と割り切って、行動するところが爽快だ。

天才が、天才として、堂々と振る舞う。それが、マンガの面白さだし、気持ちよさだ。 『アルキメデスの大戦』は、そういったマンガのはったりを、存分に楽しめる作品で、これからどうなっていくのか、すごく楽しみだ!! 

アルキメデスの大戦

アルキメデスの大戦(1) (ヤンマガKCスペシャル)
作者:三田 紀房
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発売日:2016-05-06
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アルキメデスの大戦(2) (ヤンマガKCスペシャル)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2016-05-06
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インベスターZ(1) (モーニング KC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2013-09-20
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砂の栄冠(1) (ヤンマガKCスペシャル)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2010-12-06
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