小学四年生(9歳)でひとり暮らしは本当に可能なのか?まさかの貧乏モノの感動作『ひとり暮らしの小学生』

松山 洋2016年07月09日 印刷向け表示
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 まず、“ひとり暮らし”“小学生”という部分に大半の人が“!?!?”って
なるんじゃないかなー、って思うわけですよ。

いや、そう、リアリティ的な意味で。

だって、ねえ……?

 

小学生に本当にひとり暮らしは可能なのか?

本作の主人公“鈴音リン”ちゃんは小学四年生という設定です。

9歳です。

 

えー、まず、みなさん、ここは……乗り越えてください。

  

普通に考えて、ですね。まあ、きっと事情もあるんでしょう。そう、あるんです。
実際に作中でも語られていますが、主人公リンちゃんの両親は亡くなっています。
で、そんな両親が経営していた江の島の食堂を引き継いで生活しているのです。

 

小学四年生のリンちゃんが一人で。

9歳ですけど。

 

わかりますよ?いくらマンガとはいえ、ね。小学四年生が江の島で食堂で
ひとり暮らし
って、ねえ。いくら両親が他界したとはいえ、ね。普通は
“そういう”施設に引き取られたり、親戚や親族の家に引き取られたり
するわけじゃないですか。

現実でも漫画でも。

普通は、そう。

 

 

けど、本作は“そうじゃあない”んです。

しっかりと、ただの“小学生”“江の島の食堂”“ひとり暮らし”
しています。9歳です。

 

そんなこと果たしてこの国が許すのか?

 

私もそんな疑問が“先”に出てきたりもしたのですが。

そんな時にですね。

  

私は思い出したわけですよ。

自分自身の15歳の春を。

あれは高校に入学して間もない15歳の春の出来事でした。

 

(ここから回想に入ります)

 

 

高校に入学してまだそんなに時間も経ってなかった頃ですが、
ぼちぼち気のあう友達ができてグループが6人くらいになった時のこと。


 

何気ない会話から自分たちの家族の話になったわけですよ。
まあ、自己紹介のもう一歩先の段階に進んだ感覚とでもいいましょうか。

 

ともかく順番に家族や兄弟の話を始めた時にですね。

ひとりの友人が、あ、じゃ、仮に友人Mとしましょう。


 

その友人M“姉と二人暮らし”なんていうわけですよ。

 

当然、健全な男子高校生であればよからぬ妄想も相まって

  

 

 

“うおおおおおおおお!!マジでー!?マジかー!?”

 

って、なって盛り上がるわけですよ。

で、もちろん、色々話を聞いているうちにみんな疑問も出てくるんですね。

 

“ん?・・・・・で、親は?”

 

ってね。

 

そりゃそうですよね。“お姉ちゃんと二人暮らし”という甘美な響き
すっかり夢中になった男子高校生でも次第にその疑問には
当たり前のようにたどり着くわけですね。

 


 

で、友人Mに聞いたわけです。

 

 

“両親はどこでなにしてんの?”

 


 

って。

 



すると返ってきた答えは

 

 

“二人ともあの世”

 

 

 って、指で“上”をさしたんですね。友人Mは。

 

 

あれですよ、なんか、ね、興味本位でたどり着いた話から
まあ想定外の答えが、ね、返ってきたというか、
まあ、急に
ギクシャクしちゃって、ね。

 


最初は、みんなで

 

“またまた~!!”

 


なんて無神経な態度でちょっと茶化してみたりすると

 

“いや、マジで”

 

って、ハッキリと真顔で友人Mが言うもんだから、
さらにみんなシュンとなっちゃってね。

 

 

 

“あー……マジ……なんだ……。”

 

 

 

ってなって。

 

 

 

15歳にして“雑談の時の内容のチョイススキル”
早い段階で学んだなーってなりましたね。

 

で、話を戻すと、本当に私の友人Mは中学の時から
“姉と二人暮らし”だったんですね。いや、本当に。

 

なにやら両親はだいぶ早い段階で他界してて、最初はそれこそ親戚に家に
姉弟で生活してたみたいですが。それからその家を出てもうちょっと前から
団地に引っ越して“姉と二人暮らし”状態とのことだったんです。

 

事実です。

 

当時の私自身もにわかには信じられなかったのですが、その後に友人Mの
家に実際に遊びに行ったこともあるし、何度も状況は確認してるので。

 

確実に事実です。

友人Mは“姉と二人暮らし”でした。

 

中学の時から“姉との二人暮らし”が許されるのであれば。

 

“小学四年生のひとり暮らし”もアリですよね!?

ね!?

 

というか、私は友人Mの話を思い出した時点で

 

“うん、よし、アリだ!”

 

って思えたので、もう準備はできました。

なので、みなさんも準備をしてください。

 

ここを乗り越えさえすればなんの違和感もなく読めるし、すごく面白いし
ほんわかするし、ちょっと涙も誘う素敵な物語の紹介に集中できると思います。

 

いいですか?

 

本作の主人公は小学四年生の鈴音リンちゃん(9歳)が
江の島の食堂を経営しながらひとり暮らしをしていると
いう設定からスタートします。

 


では、改めて本作の魅力を紹介しましょう!

 

それは、ですね。

貧乏なんです。

主人公のリンちゃん。
 

松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻

そりゃ、そうですよね。

だって、9歳の女の子がひとりで暮らしてるんですよ!?

食堂を経営しているって言っても、全部ひとりでやってるんですよ?

しかも家賃もちゃんと払ってる。

で、料理が下手なんです、リンちゃん。

松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻

松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻

だからお客さんも少ないんです。

売り上げも厳しいわけですよ。

だから、まわりの大人たちがちょっと同情してコーヒーだけ飲みに
来たりしているわけです。

今時、貧乏キャラって。

すごいと思いません?

なんか、ね、一周回って、もうね、“新しさ”すら感じるわけですよ。

 

貧乏キャラって……。

9歳にそれやらすか、って、ね。

 

けど、次第にこのけなげに生きていくリンちゃんに感情移入していくんですね。

周りにいる同級生のクラスメイトや先生、そして魅力的な大人たち。

ちょっとずつ時間の経過も表現されていて、成長していく子供たちとリンちゃん。

物語の後半はちゃんと感動的なラストが待っていて、間違いなく“読んで良かった”
と思える良作です。

 

新しくて懐かしい、ハートフルな人間模様と子供たちの成長。

『ひとり暮らしの小学生』オススメです。

 

松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻
 

松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻
 
松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻
 
松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻
 

松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻
 
松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』第1巻
 

ちなみに。本作はネットで連載されていた電子書籍版では全三巻で完結しています。
それを再編集して紙の単行本が出ています。

 

松下 幸市朗『ひとり暮らしの小学生』

 電子書籍版を半分に分けて掲載して
さらに描き起こしの続編『ひとり暮らしの中学生(短編)』も掲載されています。

紙の単行本はまだ『江の島の夏』編としていわゆる上巻しか発売されていませんが
きっとそのうち下巻としての『江の島の冬』編が発売されると思います。で、きっと
下巻にも描き起こしが掲載されると思います。私は電子書籍版も紙の単行本も両方
買いました。きっと下巻が出たらまた買うと思います。

 

ひとり暮らしの小学生(カラー4コマ136P)
作者:松下 幸市朗
出版社:パコス
発売日:2014-11-07
  • Amazon Kindle

 

ひとり暮らしの小学生②(カラー162P)
作者:松下 幸市朗
出版社:パコス
発売日:2015-01-09
  • Amazon Kindle

ひとり暮らしの小学生③(カラー220P)
作者:松下 幸市朗
出版社:パコス
発売日:2015-06-06
  • Amazon Kindle

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