『ベルセルク』好きなら読んでおくべき!『ファイアパンチ』の面白さを3つの点で考えてみた

岡田 篤宜2016年07月13日 印刷向け表示
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 こんなに引き込まれたWEBマンガに、今までの人生で出会うことはなかった。
こんなに毎回更新を楽しみにするWEBマンガにも、今まで出会ったことがなかった。

今、マンガ好きの界隈ですごく話題に上がっている「ジャンプ+」発の作品、
『ファイアパンチ』

読んだ瞬間、圧倒的な世界観と設定、ストーリーに引きこまれた。
読んだ瞬間、「これはすげぇ!と思わず声に出してしまった。

ここまで衝撃を受けた作品は近年まれになかったので、先日発売した単行本を迷わず購入し、読みなおした。
そして、このマンガにある面白さのヒミツと秘訣に「仮説」を立ててみた。
今回は、『ファイアパンチ』の面白さの理由を以下の3つの点から考えてみたいと思う。

 

1      「タブー」の使用とその見せ方

 

人間、「やってはいけない」と規制されると、なぜか逆に強い興味を持ってしまったりする。

実際に現実世界で試すことはないが、詳細をネットでググッてみたり、さらには文献を漁ってみたりして、自分の知的好奇心を満たそうとする人はいるだろう。

マンガは時として、人が現実世界で体験することができない行為を疑似体験させるため、「やってはいけないこと」、つまり「タブー」を描く。
『ファイアパンチ』もストーリーの掴みの部分で「タブー」を描いているのだが、
このタブーの見せ方が今までにないものだった。

 

 

(『ファイアパンチ』/藤本タツキ)

 

「こんな設定見たことない!」が最初に感じたことだった。

たいてい、タブーを描いたマンガには、それ相応の後ろめたさみたいなものも感じるのだが、「極寒の地」という世界観が主人公たちのタブーを受け止めてしまっているような気がする。
ファンタジーにはお決まりの「再生能力」に、まさかこんな使い方を思いつくとは、作者の想像力にしてやられてしまった。
 

(『ファイアパンチ』/藤本タツキ)

「人食」の次に怒涛のながれでさらなるタブー、「近親相姦」までも入ってきて、

どこまでやるんだこのマンガは!?

しかも妹から迫られるという「フェチ」にも対応しているだと!?背徳感ありながらも

「本当にするの?しちゃうの!!?」と展開から目が離せなくなる。人の怖いもの見たさ心理をうまく使った表現だと感じる。衝撃的な1話目の冒頭が、この作品の力強さをうまく演出していると感じる。

 

謎が謎を呼ぶストーリー展開

 

このマンガのストーリーは、端的にいえば「復讐劇」になるだろう。妹を焼き殺した軍人を殺すため、全身を炎に焼かれながらも必死で追跡し続ける主人公の物語。しかし、やっとの思いで見つけ出すも、なぜかその軍人は記憶喪失になっていて、以前のような覇気がない。

 

(『ファイアパンチ』/藤本タツキ)

 

一体どういうことなんだと思っていたら、次はなんと妹そっくりの女性が出てきて、自分の首を切り落とす始末……

 

 

 記憶喪失も知人に瓜二つな人物登場も、他のファンタジーではよくある設定だが、現時点ではこれらの謎がどうして存在するのか、その理由もまだわからないし、ヒントも出されていないように感じる。いくつか仮説は立てられるが、結局は仮説であり、本当のところはわからないので、ファンの間ではちょっとした議題になるだろう。

今も最新話では、新キャラの登場から別の方向に話が流れていっていて、主人公がここ何話かまったく登場していなかった。ここから一体どうやって話が展開していくのか、先を全く読めない状況にある。この状態でどう話が繋がるかを予測するのもまた議題の1つになりうるのではないだろうか。

 

3.担当編集の存在

 

この作品を読んで感じたことは、上の2つ以外にもう一つある。個人的ではあるが

「担当編集は誰なんだろう?」ということだ。

新人のマンガで面白い作品が登場するとき、だいたいその影にはいくつもの人気作を生み出してきた売れっ子編集者の力があったりする。

 単行本を買って読んでいた私は、何気なく最後の最後までページをめくり、担当編集の名前が書いてあるか確認した。そうしたら、単行本の最後のページに、確かに担当編集の名前が書いてあった。そして名前を見た瞬間、

「そうだったんだ!?」とこれまた声を出してしまった。

なぜなら、私は以前、その編集の方にお会いしたことがあったからである。

 その方とお会いしたのは昨年の2015年、夏。池袋のコミュニティカレッジという場所で、私がお世話になってた株式会社コルクの代表、佐渡島庸平さんと対談をしていた。
その方は『青の祓魔師』の担当編集で、作者の加藤和恵先生の他にも、『カッコカワイイ宣言!』の地獄のミサワ先生の担当をされている方である。


この方がおっしゃっていたことでとても印象的だったことがある。

それは、作品作りにおいて、作者に一切妥協せずネームの感想を伝えることを心がけている、ということである。たとえば、『青の祓魔師』のネームの感想を伝える際も、この方は作者の加藤先生に自分の意見を率直に伝えるのだそうである。それで少しケンカっぽくなったとしても、作品の面白さを高めるためにちゃんと意見を口にする。ケンカを嫌って、もらったネームに適当に受け答えして流しちゃう人もいるけれど、自分はそれをしないようにしている、のだそうだ。

 今なおその話を覚えているのは、

良い作品作りにはやはり編集者側も妥協しない覚悟が必要だと感じたから。そして何より、そうやってお互いの意見を言い合えるような信頼関係を築くことの重要さを理解したからだ。今や1,000万部以上の売上をほこる大ヒット作「青エク」の面白さは、こうした作家と編集者の信頼関係のもとに成り立っているのである。


だから、今回『ファイアパンチ』をその方が担当されていると知った時は、驚きと同時に納得感があった。きっとこの作品も、加藤先生と「青エク」を作っている時のように、面白さに妥協せず、伝えるべきことをしっかりと伝えながら作品作りをしているに違いない。あの方が担当なら、きっとこの作品はもっと面白くなる。そんな予感が今、自分のなかに高まりつつある。
 

 以上、3つの観点からこの作品の面白さを分析してみた。ただ、ここに上げたのは作品の面白さを作っている要素の一部でしかない。他にもいろいろこの作品の魅力的なところはあると考える。まだまだ作品は始まったばかりなので、ここからさらなる面白さのヒミツを見せてくれるような展開もあるだろう。これからも『ファイアパンチ』と藤本タツキ先生、そして、見えてはこないが担当編集の方のさらなる活躍を一ファンとして願うばかりだ。

 

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