週刊誌編集者も太鼓判!「銀座の一流百貨店」クレーム担当に教わる大人の「怒られマナー」『銀座からまる百貨店お客様相談室』

田ノ上 博規2016年07月17日 印刷向け表示
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銀座からまる百貨店お客様相談室(1) (モーニング KC)
作者:鈴木マサカズ
出版社:講談社
発売日:2016-01-22
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 週刊誌の現場にいると、日々様々なお電話をいただきます。読者や取材先からの貴重なご意見、タレコミ情報から、お叱りまで様々です。

「壇蜜さんの乳首は本当にあんなに綺麗な薄桃色なんですか」

——誌面のとおりでございます。

「この前、クスリで捕まった元野球選手Kのインタビューを御誌で記事にしたいのですが」

——ご本人を過去に取材されているのでしょうか。

「いいえ。ただ、彼のことは高校時代からずっと応援しています」

——・・・・・・。

深夜、一人で根をつめて原稿を執筆していると電話でいきなり怒鳴られます。

「てめぇだけは許さねぇ! 今からぶっ○しに行くからな!」

予想外の状況への対応の仕方に、自分の人間力を試されている、そんな気がします。もちろん電話応対に限った話だけではありません。取材先に謝罪に伺うこともありますから、緊迫した状況のなか、丁寧な言葉を使い、気の利いたやりとりができる人、相手に納得してもらえる謝り方のできる人って尊敬してしまいます。

そんな思わずリスペクトしてしまう人たちが漫画「銀座からまる百貨店お客様相談室」にはたくさん登場します。

作品の舞台は銀座空丸百貨店・お客様相談室。相談とは名ばかりで、様々な苦情・クレームが入ってくるところ。苦情が仕事を生む。そんな職場があるとは思いもよりませんでしたが、世は一億総クレーマー時代、理にかなったリスクマネジメントなのでしょう。
主人公の木洩田一郎は相談室で働く若手社員。変わり者揃いの相談室は新入社員にとって、配属されたくない部署第一位でもあります。
彼らはある時は、ヤクザの組長の家へ伺い、組員が購入した高級音響機器へのクレーム対応、またある時は、タンスで虫食いされた毛皮を店舗に持ち込んだクレームおばさんにも対応します。
それぞれの主張は「音が安い!(要するに料金まけろ)」だの、「毛皮を食べたのはお宅の虫よ!(要するに新品と交換しろ)」だの、理不尽極まりなし。訪問する社員がバツイチだと、縁起が悪いと門前払いされたりもします。それでも、めげずにお客さんに付き合う姿は真摯で、気の利いた答えで相手を納得させる(ギャフンと言わせる)姿は痛快なのです。

読み進めると、緊迫した場面で責任を回避しながらも相手を納得させる危機管理、怒鳴られた時の心の保ち方、怒られる人と許される人の話し方の違いなど、豊富な「怒られマナー」が描かれていることに気づき、これはサラリーマンのためになると膝を打ちます。

文中にこんな表現があります。


<お客様の怒りが伝染してお客様と同じような険しい表情になんている あれが一番まずい表情だ>


怒られると、普通、険しい顔になるが、相手の思い(怒り)につられるだけではいけない。相手の思いを汲めない、怒りの源泉を見つけられないと根本的な解決には至らないーー。誠意を持って一歩一歩手探りで相手の「人間」に近づいていく姿は、なんだか、自分の仕事の核の部分をみせられているような気分になりました。

20年前、百貨店業界の売上は9〜10兆円あり、小売業の王様でしたが、現在は6兆円にまで減少。一方、売上に反比例してクレームは増えています。
日本を代表する百貨店グループの社長に取材した時、氏はこう言っていました。


「百貨店本来の姿って何だろう。駄目になってきたファクターって何なんだろう。当社でしかできないこと、独自性とか、もう一度強みを取り戻したい」


百貨店とスーパー、コンビニを比較して違うもの。その強みは「販売力」だと思います。販売力は言い換えれば、来店した客へのおもてなし力。そのおもてなしの最高峰が超一流のクレーム処理ではないでしょうか。クレーマーがまたお店を訪れてお金を落としてくれますようにーー。今日も百貨店を陰ながら支える相談室の奮闘ぶりに襟を正して、私も怒られに行ってきます。
 

銀座からまる百貨店お客様相談室(2) (モーニング KC)
作者:鈴木 マサカズ
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