「真田丸」は超絶面白いですが、なぜ日本人は大河ドラマに飽きないのか?その最先端『サムライせんせい』

菊池 健2016年07月31日 印刷向け表示
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「真田丸」が愛しくてしょうがないのは、2次創作だから?

 大河ドラマの「真田丸」超絶面白いですね。本編も勿論面白いのですが、放映中から以降ずっと続く、Twitterハッシュタグ「#真田丸」には、日本人の歴史キャラへの愛情がほとばしっております。わたくしも、日曜の夜は毎週嫁さんと2人で、本編の時間より長い間このハッシュタグで真田丸反省会をすることが定例行事となってしまいました。

それにしても、大河ドラマと言えば、「戦国・幕末・戦国・戦国・幕末・たまに源平」と、同じような時代を繰り返していますが、これがむしろ飽きないのですね。特に今回の真田丸では、三谷脚本の大胆な「真田にかかわるところ以外は全カット、または有働ナレ死」というバッサリ演出が好評のようです。

どうもこの同じ時代の繰り返し現象は、「ネタが無いから同じような話をずっと繰り返している」わけではなく「視聴者・消費者と共有した世界観やキャラクターの背景を、人物・時間など様々な面から新解釈したり、切り口を見せたりすることが、面白さに繋がっている。」状況なのだと言えると思います。つまり、マンガの世界で言えば2次創作ですね。

例えば、神君家康公の「伊賀越え」シーンは、後の語り草になる位盛り上がりました(笑)

「伊賀越え」は基本、徳川家康や服部半蔵の男を上げるシーンとして、様々な作品に演出されてきました。しかしまぁ、こんな情けない家康や、あんな適当な服部半蔵は見たことがありません(笑)そう、この「ズラシ」が面白いんですね。

怪盗ルパン伝アバンチュリエ』の作者であり、ガンダム漫画にも携わっている漫画家の森田崇先生が、facebookのエントリーで、今の真田丸のヒットと面白さを分析してらっしゃって「消費者の中で、既に歴史やキャラが過去の作品で補完されている状態で、これは言わば、ガノタの楽しみ方に近いようなものじゃないか。」とおっしゃっていました。私はそこに深く納得してしまい、今回のエントリーにも書かせていただきました。

  

サムライせんせい (クロフネコミックス)
作者:黒江S介
出版社:リブレ出版
発売日:2014-11-10
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 それでもやっぱり面白いタイムリープもの『サムライせんせい』

そんなことを考えながら最近ふと手にとって面白かったのが本作です。

一般に歴史タイムリープものでは、現在から過去に出向いた人が大きく歴史を変えたり、信長や坂本龍馬などが、過去から現在に来て世の中を変えるような大活躍をするようなものが多いです。私も好きな『信長協奏曲』は、絵のタッチや演出はとても新しく面白いですが、歴史に大きく関わっていると言う意味ではオーソドックスなタイムリープの王道です。

本作は、一先ず主人公が「武市半平太」です。確かに有名な偉人ですが、龍馬や信長ほどではないですし、これが絶妙なチョイスだと思います。いじり甲斐もありそうですよね。

[引用:サムライせんせい (クロフネコミックス) コミック 黒江S介]

彼ほどの男が現在に来れば、さぞ大きなことが出来そうな気もしますが、本作はその辺りがなかなかリアルです。何かをなす以前に、現代社会に馴染むまでの課程が、そう簡単にも、要領よくもいかず、面白いのです。

彼が街に来てしばらくたったある日のこと、街を歩くとこんな感じです。

[引用:サムライせんせい (クロフネコミックス) コミック 黒江S介]

確かに、真顔でちょん髷紋付の人が現れれば、こうなるのも判るのですが、こういう描写が割りと長い間続くのが新鮮でなかなか面白いです。

また、史実と、作中ストーリーの交錯も、視覚的なものから、台詞のレトリックまで、色々と仕掛けられていて面白いです。

例えば、1巻後半からの見せ場では、半平太と殺人犯が語るシーンがあります。

[引用:サムライせんせい (クロフネコミックス) コミック 黒江S介]

追い詰められた犯人は「上司(じょうし)」に不満があったとブチ切れていらっしゃいますが、聞いている半平太には「じょうし=上士」と聞こえたことでしょう。

誰あろう、この武市半平太こそ、土佐山内藩に敷かれた、山内系武士の「上士」と旧長宗我部系武士の「下士」の間の身分の壁と対決し、上士の中の上司たる、執政吉田東洋さんを暗殺した本人なわけですから、洒落になりません。

と、読んでる私は勝手に思ってるわけですが、作者さんがどう仕掛けたかはこれだけではわかりません。ただその、歴史好きにとってはこういう楽しみ方もあるわけで、あんまり大事件を起こさず(上記の例はちょっと事件ですが、既刊3巻でこれが一番の事件です。)日常的な出来事と、半平太や、後に出てくる歴史的有名人達の交わりが、面白いところになってくるわけですね。

彼らが自分の名前を検索したり、wikiぺディアでまとめられたのを読むというのは、確かにありそうですし、どんな気分なのか慮ると面白いところです。

元々はpixivコミック連載ということもあってか、全体に軽いタッチですので、「真田丸」や「龍馬伝」のように、骨太な歴史モノを見た後に楽しむにはぴったりかなと思います。特に、大河ドラマを楽しめている人には、こういう切り口もあるのかと、新しい切り口の提案になっていて、おすすめの作品ですよー。

サムライせんせい三 (クロフネコミックス)
作者:黒江S介
出版社:リブレ出版
発売日:2016-07-09
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 丁度、最新刊の発売が7/9にあったばかりです。途中から過去編が始まってます。現代編が楽しみです。

 

歴史マンガ色々

 余談ですが、昨年参加させていただいた、全国の図書館にマンガを選書・推薦するプロジェクト「これも学習マンガだ!」から、東洋経済に歴史マンガをお勧めする記事が出ました。

私の選書からは『ヴィンランド・サガ』『センゴク』の2つをピックアップしていただきました。

『ヴィンランド・サガ』は、日本の学校教育における世界史ではなかなか学べない、中世期の北ヨーロッパの歴史的動きを俯瞰しつつ、読み物として大変楽しいものです。(同じく選書委員のマンガHONZ佐渡島編集長によるレビューは、こちら。

ヴィンランド・サガ(17) (アフタヌーンKC)
作者:幸村 誠
出版社:講談社
発売日:2016-01-22
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『センゴク』にいたっては、昭和中期の大御所歴史小説の大家たちに勝るとも劣らない、日本の戦国時代再検証が見所だと私は思っています。正に「図書館に置いて欲しいマンガ」です。こちらもどうぞ。(元mixi朝倉さんによるレビューは、こちら。

センゴク一統記(1) (ヤンマガKCスペシャル)
作者:宮下 英樹
出版社:講談社
発売日:2012-10-05
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 今回のエントリーにインスピレーションをいただいた、森田先生のレビューと作品です!レビューは我らがうめ先生!

『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』の作者・森田崇氏が、原作者モーリス・ルブランより有利なある理由 - マンガHONZ

怪盗ルパン伝 アバンチュリエ(1) 公妃の宝冠 (ヒーローズコミックス)
作者:森田 崇
出版社:小学館クリエイティブ
発売日:2013-08-05
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
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