愛される世界は続くよ どこまでも『蟲師 外譚集』

佐藤 茜2016年07月20日 印刷向け表示
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蟲師 外譚集 (アフタヌーンKC)
作者:芦奈野 ひとし
出版社:講談社
発売日:2015-04-23
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好きな物語の最終巻は、出てほしくない。
そう思ったことはありませんか。

私にとっては『蟲師』がその1つで、このままずっと続いてくれないかなぁ〜、こち亀みたいに〜、と思っていた作品です。しかし、10巻で多くの人に惜しまれつつ一旦幕を閉じました(特別篇がでましたけども)。 

『蟲師』は、動物でも植物でもない、生命の原生体――“蟲”を中心に、蟲とヒトとをつなぐ“蟲師”ギンコが様々な事象に対応していく物語。どこかノスタルジックな独自の世界観とそのストーリー性の高さから脅威的な人気を博し、2003年の文化庁メディア芸術祭・漫画部門優秀賞、2006年の第30回講談社漫画賞・一般部門受賞、2007年の文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」マンガ部門選出など、多くの栄冠に輝きました。

アニメ化もされ、2006年3月25日、東京国際アニメフェア第5回東京アニメアワード・テレビ部門優秀作品賞を受賞。2007年の文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」アニメーション部門・総合第6位を獲得。2007年3月には、監督大友克洋、主演オダギリジョーによって実写映画化。ゲームにもなりました。全媒体において、作り手のこだわりが伝わってくるクオリティの高さには、1ファンとしてただただ感動するばかりでした。

さらに豪華なことに『蟲師』をベースにオリジナル読み切りを描く『蟲師』トリビュート企画『蟲師外譚』が出ていたというから、その愛されっぷりたるや!もちろん、企画に参加した5名の作家の方々も、琴線に触れるストーリーテラーの名人ばかり(特に「名作、なれど寡作」を地でいく豊田先生をつれて来れたのは奇跡ではないか)。

芦奈野ひとし(『コトノバドライブ』『ヨコハマ買い出し紀行』)

『蟲師 外譚集』講談社 92P

今井哲也(『アリスと蔵六』『ぼくらのよあけ』)

『蟲師 外譚集』講談社 102P

 

熊倉隆敏(『ネクログ』『もっけ』)

『蟲師 外譚集』講談社 7P

 

豊田徹也(『珈琲時間』『アンダーカレント』)

『蟲師 外譚集』講談社 145P

吉田基已(『夏の前日』『恋風』)

『蟲師 外譚集』講談社 65P

本作、すべての作家さんの『蟲師』への愛が爆発しています。もちろん、作者が違いますので、『蟲師』原作の漆原先生が書いてた絵とは異なります。しかし、これがプロの力でしょうか、どの方の作品も描かれている空気が一緒!

蟲がいて、人がいて、心があるがゆえの悲しさや、いじらしさに溢れています。大人版・日本昔話とでもいうような、心にすっと入り込んで記憶に残るさまは、この本こそ何か蟲がついてるのでは?と思ってしまうほど。

一度完結した作品が、他の方の手によって、もう一度動き出す様を見られるというのは、とても贅沢な体験でした。しかも、根底にある世界観が読者・作り手で共有されているので、まったく違和感がない。きっと『蟲師』の世界に一度踏み込んだ人間は、心の中に『蟲師』の世界が半ば強制的に出来てしまって、しかもその世界は苔むしつつも生きているのでしょう。『蟲師』に出てくる山のように。

終わったけど続いている世界の一端を覗ける作品。

オススメです。

 

蟲師 (1)  アフタヌーンKC (255)
作者:漆原 友紀
出版社:講談社
発売日:2000-11-20
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コトノバドライブ(1) (アフタヌーンKC)
作者:芦奈野 ひとし
出版社:講談社
発売日:2015-01-23
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アリスと蔵六 1 (リュウコミックス)
作者:今井哲也
出版社:徳間書店
発売日:2013-03-30
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ネクログ(1) (アフタヌーンKC)
作者:熊倉 隆敏
出版社:講談社
発売日:2011-03-23
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珈琲時間 (アフタヌーンKC)
作者:豊田 徹也
出版社:講談社
発売日:2009-12-22
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原 正人のレビューはこちら
さあコーヒーを飲もういますぐに! コーヒーをめぐる人生讃歌 ― 豊田徹也『珈琲時間』 

 

夏の前日 1 (アフタヌーンKC)
作者:吉田 基已
出版社:講談社
発売日:2010-02-05
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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