自殺を考える真面目な人へ「俺の仕事じゃないからわからない」が通じるゆる〜い国があるのよ『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』

佐藤 茜2016年07月22日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

フランスはとにっき: 海外に住むって決めたら漫画家デビュー
作者:藤田 里奈
出版社:徳間書店
発売日:2016-07-12
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

な、なんという適当さなんだ…!!!
信じられん…これがあの精緻を極めた芸術の都パリを有する国だなんて…!!!

読み進めるたびにカルチャーショックを受けるのが本作。ああ、花の都パリの秘密なんて知りたくなかった…!(いやものすごく面白いんですけどね)。

本作は、30歳を目前に、無職で独身でヒマな時間をもてあましていた(本の紹介文そのまま)作者の藤田先生がワーキングホリデーで海外に1年住む事を決意したものの、最後の記念に趣味の漫画を描き上げて、出張編集部に持ち込みをしてみたら漫画の連載が決まってしまい、フランスでマンガ家として生きることになり、現地の様子をまとめたエッセイです(長い)。

もうこれだけでもドラマティックここに極まれりなのですが、まぁ、このフランスの様子がこれでもかというくらいに日本だとありえないことばかり。

フランスに到着した当日の出来事。

 

とんでもないって思うだろ…?でもこれ、序章なんだぜ…?『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』藤田里奈 (著)徳間書店(リュウ・コミックス) 24〜25P

お金事情について。 

パリと言えばスリというのは聞いてたんですが、マジなんですね『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』藤田里奈 (著)徳間書店(リュウ・コミックス) 34〜36P

そしてフランスといえば愛の国な訳ですが。

ちなみにこのあと更にイタリア人が出てきてもっとすごい台詞を言います。ぜひ作品を読んでお確かめください。少女マンガよりすごかったです。『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』藤田里奈 (著)徳間書店(リュウ・コミックス) 60〜61P

もちろん食もすごい。

異文化どまんなか。『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』藤田里奈 (著)徳間書店(リュウ・コミックス) 71P

もうこれ以上無いというくらいに異文化の洗礼が列挙されていきます。いっぱいエピソード抽出していると思われるかもしれませんが、まだこんなもんじゃないです。もっと沢山のエピソードが本作には詰まりまくってます…。ウ○コ事情とか、トイレ事情とか、バレエ観に行ったときのエピソードとか…。

もちろん驚くのは驚くでも、ステキな驚きもあります。

よくベビーカーを階段で第三者が持ってくれないのは日本くらいだって聞きますね。『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』藤田里奈 (著)徳間書店(リュウ・コミックス) 48P

本作がものすごいエピソードばかりなのは、フランスが日本と異なる文化であることもあるのですが、作者の藤田先生のハプニングに見舞われる確率の高さも多分に由来していると思います。私の知人のフランス渡航者ではそもそもスリに合った事がないという人が殆どでした。また、今回はピックアップしていませんが、道に迷って現地の人に助けられたエピソードも、多分藤田先生以外は、あんまりないんじゃないでしょうか…。そのカテゴリの方はどこの国でも親切なんですかね…(詳しくは作品をご参照ください)。ともかく、希有な巻き込まれ体質+エッセイマンガに落とし込む素晴らしい技量で、このスペシャルなマンガは出来ています。C’est super !(フランス語として合っていなかったらすみません。でも素晴らしいです)

本作はあくまで一例で、これがすべてではないとは思いますが、それにしたってとんでもないエピソードばかりで、日本の文化が普通だと思っている人にとってはかなり衝撃的だと思います。作者の藤田先生も、一時帰国した時に、日本にびっくりされてます…。

日本のサービス業はまじめすぎる。『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』藤田里奈 (著)徳間書店(リュウ・コミックス) 144P

特異なフランスの側面ばかり紹介してきてしまいましたが、本作はそれだけにとどまらず、他の海外エッセイでは類を見ないほど、「渡航に必要な情報」が詰まってます。ビザ申請の動機作文のハウツーや、現地での家の見つけ方などは、本当に勉強になります。ワーホリに言った経験者たちがボランティアでアドバイスをくれる団体の「フランス大使館はわりといいかげんです」というアドバイスには腹をかかえました…笑

さて、2015年の世界保健機関による年齢調整自殺率を見ると、我らが日本は17位で、10万人あたりの年齢調整自殺率は18.5。対するフランスは47位で12.3で、世界幸福度ランキング6位のフィンランド(自殺率33位)より下位に属しています。だからといって単純に比べることは早計だとは思いますが(バカロレアの2016年の試験問題:文系(3つのテーマから1題を選択し、4時間にわたって論述する形式)のテーマの1つ「道徳的信条は経験に基づくか。」とかを見ると別のベクトルで大変だと思いますし)、まぁ、世界は広くて、日本は世界的に見てもかなり四角四面な国ということを認識しておけば、たとえ日本で違和感を感じても絶望することは少なくなるんじゃないでしょうか。多分。よその国で生きていけばいいんだし。

日本に閉塞感を感じる日本人の方にも。
もちろん、これからフランスに行こうかな、と思っている方にも。

オススメです。

 

区立ユーカリ学園 明日がんばる (リュウコミックス)
作者:藤田里奈
出版社:徳間書店
発売日:2014-07-11
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

こちらは作者の藤田先生の別のマンガ。 

 

パリパリ伝説―不思議いっぱいパリ暮らし! (1) (Feelコミックス)
作者:かわかみ じゅんこ
出版社:祥伝社
発売日:2004-12-08
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

旅行者ではなく、現地の人目線での生活を描いたエッセイ。現在9巻まで出ている人気シリーズ。うふふ、となるエピソードが沢山。

日曜日はマルシェでボンボン 1
作者:かわかみ じゅんこ
出版社:集英社
発売日:2010-05-25
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

こちらはエッセイではなく、フランスを舞台にしたお話。
作者のかわかみ先生はフランス在住。作品にもフランスの考え方が描かれていて、とてもユニーク。

モンプチ 嫁はフランス人 (フィールコミックス)
作者:じゃんぽ~る西
出版社:祥伝社
発売日:2015-07-08
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

こちらは、フランス人のバリキャリの奥様とご結婚されたマンガ家・じゃんぽ〜る先生のエッセイ。奥様が毎日愛をささやく様子など、ステキな日常。

 

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

HONZ会員登録はこちら

人気記事