「天国に一番近い恋」は、涙もカラフルに見えそうなくらいの元気をくれる『きょうのキラ君』

小林 みずほ2016年07月29日 印刷向け表示
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『アオハライド』『オオカミ少女と黒王子』などなど、近頃ヒット連発の少女漫画の映画化。次の作品として映画化が発表されたのがこの作品、『きょうのキラ君』。山下智久さん・小松菜奈さんによる『近キョリ恋愛』に続いて、みきもと凛先生2回目の映画化だ。

学校では隅にいて人と目を合わせないようにしている少女・ニノンは、家が隣で不良グループの中心にいる「キラ君」が、余命1年ほどであることを知る。怖いと思っていたキラ君が、寂しさと戦いながら小さな日常を大事にしていることを知って、ふたりは徐々に心を通わせていく。

天国に一番近い恋。

なのに、しゃべる鳥が出てくる。

(1巻11ページ)

このあたりで「!?」となった方はそのまま突き進んでほしい。病気ものだとつい、重い話、つらい気持ち、戦いの日々、病状や死へのリアリティを想像してしまうし重視されがちだけれど、この作品の一番の魅力は、病気ものである以前に「王道少女漫画」であり、少女漫画である以前に「みきもと凛ワールド」だということなのだ。ここでそれ!? と突っ込まずにはいられないパロディギャグ健在、登場人物の変人っぷりも健在の、もう本当にこの人にしか描けない作品になっている。

キャラの濃い人を紹介しだしたらキリがないのだけれど、例えばキラ君のお父さんは「きゃっ」とか言っちゃう謎の美女。このぺろって舌を出す感じの人がいっぱいいる。でも、こんな風に、胸の奥に抱えているものがある。コメディで、ギャグで、でも、しっとりもうるうるもある。

 

(2巻27・32ページ)

不思議なことに、これでいいのだ、という安心感がある。病気ものであることを忘れそうなくらいふざけた人たちが多いことも、病名が明かされないまま完結していて病気自体を描いているわけではないことも、前を向かせてくれるどこかプレゼントのような作品。きっと「最後の1年」を授かったなら、こんな風にきらきらして過ごしたい。楽しいことや美しいものを探して、好きな人に出会って、いっぱい感情を揺らして。現実には簡単なことではないかもしれないけど、限られた時間の過ごし方を描いた作品としては、最大限の解答に思える。重たーい話を展開するより、こっちのほうが難しいんじゃないかと唸ってしまう。

もちろん、少女漫画らしいときめきシーンもたくさん。そして個人的には、みきもと先生の描く女子の可愛さにくらくらしてしまう。たまにいる、瞳に吸い込まれそうな女優さんみたいに、目が綺麗で、愛らしくて、ヒーローがかっこいいよりもそっちにときめいているかもしれない。少女漫画は絵柄へのときめきも好きになる要素の大半になると思うから、印象に残したい表情が本当に印象に残るのが好きだ。

(2巻154ページ)
(2巻114ページ/女の子がめちゃくちゃかわいい)
(1巻65ページ/キラ君の表情も印象的)

一時期の純愛旋風を巻き起こした『世界の中心で愛をさけぶ』のように、たびたび恋と天国は近くなる。題材としてはむしろ王道だけれど、読むと切ないというより、元気になる。涙もカラフルに見えそうなくらいの、きらきらした日々。映画前にぜひ。

 

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