人形が母親だとしても。家族の在り方を描いた「のーぷろぶれむ家族」に心を突き刺された 心が揺れ動く作品に出会った

船越2016年08月13日 印刷向け表示
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心に突き刺さる。

それが「のーぷろぶれむ家族」を読んだ時の、私の正直な感想です。
 
 
主人公・心の家庭は、世間一般的に見れば常識的な家族ではありません。
いや、ある1点を除けば、ただの仲の良い家族かもしれない。
そう、母親が人形であることを除けば。
 

繋ぎ止める、家族の形

家庭訪問で、心の父に妻ですと紹介された存在が人形だったのを見た時、
先生は固まってしまった。
それは当然の反応でしょう。
常識的に考えれば、明らかに異常な光景なのだから。
 
 
教師の立場として、学校に報告する必要がある。
そう考えても、全くおかしくはありません。生徒を、心を守るために。
 
 
しかし心は、報告しないで欲しいと、先生に頼みます。
 
 
 
母親が人形であること以外、普通の家族だと。
泣きそうな顔で、すがるような顔で。
 
 
彼女はきっと、誰からかこの家族の在り方を、認めたもらいたかったのでしょう。  
 
普通とは違うかもしれない。
でもこれが、自分の家族なのだ……と。
 
 
そうまでして、今の家族の形を守る価値があるのかは、彼女にしか分かりません。
ただ心は、人形を奥さんだと認識してしまった父親を、受け入れようと頑張っています。
誰かの悪意で簡単に壊れてしまうような家族を、必至に守る彼女の姿は、胸が苦しくなるくらい、痛々しいものありました
 
 
かと言って、彼女に不満がないわけでもなくて。
心は、知り合いたちからひたすら家族、とりわけ母親の存在を隠してきました。
それは、いつまでも隠し通せるようなものではない。
 
 
だから彼女は、友人を作らなかった。作れなかった。
欲しくないわけではありません。
唯一友人になりかけた男の子が、自分から離れようとした時には、精神的に不安定になっています。
 
 
抱え込んできた想いが、モノ言わぬ母親相手に、溢れ出して。
 
 
 
家族を守るために、押し殺してきた感情。
 
なんで私ばっかり。
 
何度も、何度も、人形を殴る。
壊れてしまうんじゃないか。そう思ってしまうくらいに。
 
 
が、人形は壊れませんでした。
殴っているうちに、心と人形と目が合ったから。
その頬は濡れていた。心の涙で。
柔らかな笑みを浮かべて、心を見ていて。
 
 
このシーンに、私は「母」を感じました。
包み込む……ではないけど、受け入れてくるような。
事実、心はそれ以降、自分の境遇を家族のせいにしなくなる。
心が本当の意味で、人形を「母」として受け入れた場面です。
 
 

突き刺さる気持ち

 
人形の母を受け入れた後、授業参観で家族を呼ぶシーンがあります。
私の感覚からすれば、心は絶対に家族を呼んではいけない、呼ぶべきではない。
 
 
しかし、心は家族を呼ぶ。
本当の意味で、家族になるために、彼女は父親と向き合う。
 
 
 
私は始め、彼女の頑張りを痛々しいと表現しました
今は違います。
 
 
彼女の言葉が胸に突き刺さる。彼女の涙に心がざわつく。
痛々しいなんて言葉は、今の彼女に失礼です。
守ろうとするのではなくて、家族として在ろうとする姿に、泣きそうになります。
 
 
父親が壊れている、私はそう思っていました。
確かに、精神的にはどこか壊れているのでしょう。
 
 
ただ、娘を想う心は、少しも壊れていなかった。
 
 
心を気遣い、彼なりのやり方で見守っていた。
家族と向きあおうとしたことで、父親の想いを知る。
自分はずっと、愛されていたことを知る。
 
 
心に突き刺さる、凄いシーンです。
 
 
ここまで書くと家族マンガだと思われそうですが、心の恋愛も、この漫画の大きなテーマです。
心が家族の体裁を守るのではなく、家族として在ろうとするようになったのは、一人の男の子の存在が大きく影響しています。
 
 
そちらも泣きたくなるくらい突き刺さる場面があり、なおかつ枕を叩きたくなるような、甘酸っぱい場面もあって。
この漫画は、本当に凄い。
 
 
全2巻と巻数は多くありませんが、心に焼き付くような忘れられない物語が、「のーぷろぶれむ家族」には詰まっています。
 
 
読めば、心が揺れること間違いなしのマンガです。
 
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