健康を害してもいいから、かっこよく煙草が吸える大人になりたかった『シガレットアンソロジー』『シガレットアンソロジー メンソール』

佐藤 茜2016年08月04日 印刷向け表示
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シガレットアンソロジー (ビッグガンガンコミックス)
作者:大暮 維人
出版社:スクウェア・エニックス
発売日:2014-03-10
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煙草に憧れている。健康に悪いことは承知しているが、憧れている。
ジェームズ・ディーンやマレーネ・ディートリヒのように渋く、退廃的に紫煙をくゆらす大人になりたかった。しかし全くフォトジェニックに育たなかったので、憧れの大人アイテムである煙草を持つ資格を自らに許可することができぬまま、三十路になった。煙草は増税でもはや1つ400円オーバー。マンガより高くなってしまったので、おそらくこのまま手を出さず人生を終えることになるだろう(私はマンガの奴隷である)。

地上波TVでは”良識ある”大人の方々によって、喫煙シーンが削られがちだ。しかしマンガではまだいくらか喫煙スペースは残っていて、かっこいい大人がかっこよく煙草を吸うシーンを見ることができる…とはいえ、風前の灯火だ。もはや昭和のコンテンツを振り返るしか、格好良い煙草を吸う人たちの姿は見られなくなってしまうのだろうか。

そう危惧していた中で颯爽と刊行されたのが『シガレットアンソロジー』『シガレットアンソロジー メンソール』だ。

 世界的な嫌煙風潮や増税案など、煙草に対しての風当たりが強くなる昨今、それでも映画や漫画など数々のエンターテインメントに登場し、人々を魅了する“煙草”という小道具の持つ魅力と役割を伝えたい。
その気持ちから、この企画は生まれました。
これまでの人生の思い出の中に存在した「そこに煙草のある風景」を、この企画に賛同してくださった漫画家・イラストレーターの方々の作品から、再び想起してもらえれば幸いです。(コミックス折り返しより引用)

もはやこの序文だけで夢だろうかと思う位のかっこよさだが、この反骨心あふれる企画に参加したイラストレーター・漫画家も完璧にドリームチームである。

■シガレットアンソロジー
カバーイラスト:大暮維人
コミック:大暮維人、感傷ベクトル(田口囁一・春川三咲)、きらたかし、すぎむらしんいち、ふみふみこ
イラスト:大高忍、清原 紘、清水栄一×下口智裕、なまにくATK(ニトロプラス)、村田蓮爾

■シガレットアンソロジー メンソール
カバーイラスト:奥浩哉
コミック:浅野いにお、内水融、太田垣康男、、オノ・ナツメ、水薙竜、横槍メンゴ
イラスト:うめ、黒田bb、藤原カムイ、村田雄介、めいびい

煙草に関する切り取り方も様々だ。ギャングを狩るスナイパー、同じ日を繰り返す美女、大人になるのを拒否した青年、困窮したバンドのギタリスト、売れない小説家、通りすがりの整備士、遭難した宇宙船の最後の生き残り、煙草職人とマダム、グローバルに働く叔父、フェアリー系美女、便利屋…。マンガにおける煙草を吸う人をピックアップするだけでこのバリエーションである。そして、イラストは1枚絵なのだが、煙草が描かれていることによって、どう取り出し、咥え、火をつけて吸い込んだのだろうか、という時間の経過を感じさせ、シチュエーションを想像するのが楽しい。

もし煙草が全面的にコンテンツの上から姿を消してしまっていたら、このかっこよさは生まれなかったのだ。なんとも尊く、そして少し悲しい気持ちになるが、諸行無常の美しさは、まるで煙草の煙のようでもある。

 

『シガレットアンソロジー メンソール』スクウェア・エニックス 62〜63P オノ・ナツメ『グッバイ シガレット」より


オススメです。
 

シガレットアンソロジー メンソール (ビッグガンガンコミックス)
作者:奥浩哉
出版社:スクウェア・エニックス
発売日:2014-03-10
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

 

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