SF×百合×巨女×残酷『さよならジュリエッタ』のドライヴ感がたまらない!

マンガサロン『トリガー』2016年08月13日 印刷向け表示
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さよならジュリエッタ(1) (シリウスKC)
作者:道明 宏明
出版社:講談社
発売日:2016-07-08
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私は月刊シリウスのファンタジーが好きです。『永遠図書館』や『アルクアイネ』はファンタジー好きの方に頻繁にお薦めしています。

そして、SFも大好きです。広大な宇宙を舞台に、まだ見ぬ技術を駆使して営まれる人々の生活や闘いを見るのは代替し難い愉悦です。

そんな私のツボに、『さよならジュリエッタ』がハマらない理はありませんでした!
本作の見所を列挙して行きます。

 


第一話から百合でドラスティックで過酷

この物語は、こんなナレーションから始まります。

姫化室(きかしつ)の天窓からシリウス連星の光を浴びた少女たちは
160秒で全身の姫糸(きいと)を紡ぎ出し
450秒で繭になった
およそ30倍の体積となり約900秒後
全長500センチほどで
姫化(きか)する

僅か数ページで、固有名詞のオンパレード。そして、最近にわかにブームの巨女設定。非常に濃い開幕となっています。個人的には、こういった独自の世界観を強く打ち出してくれる作品は大好きです。

そして、ヒロインであるジュリエッタとコゼットが姫化した数ページ後。

ジュリエッタはコゼットから愛の告白を受けます。心の中の一個大隊が勝鬨を上げました。

姫化した時の体の描き方や、ドロドロの液体まみれな所も含め「そういう」作品かな? と思わせられる部分もありましたが、読み進めるとその要素は目眩ましに過ぎないと解っていきます。単なる萌えエロSFでは決してありません

 


「姫」と「鬼」の迫力溢れる戦闘

彼女たちは、人類が銀河皇国に加入したことで得た「翔姫」と呼ばれる超技術の生体兵器。そして、アジア王族同盟(A・R・A)アメリカ=シマヅ帝国によるシリウス星系を争う星系戦争で八面六臂の活躍を見せています。アメリカ=シマヅ帝国、通称アメシマヅが擁するのは「」や、その上位存在である「戦鬼」と呼ばれる存在。

原住民族のような出で立ちで、未知の言語や技術を用いて挑んでくるその姿に、得も言われぬ不気味さが宿っています。

そんな、「姫」と「鬼」の宇宙空間での戦いは、非常に疾走感の溢れる派手なアクションで描かれます。「姫」も、「鬼」も、驚くべき超常的な現象を引き起こしつつ(え、そんな技も使うの!?)、鎬を削り合います。一巻目が出た時点で気が早いですが、これは動画映えするだろうなぁ、と。今後のバトルシーンも楽しみです。

 


謎多き主要人物

本作は、ジュリエッタとコゼットの二人が主軸となっていますが、どちらにも「えっ!?」と思わせる謎めいた部分が現れます。ジュリエッタは、元々第4市民として生まれ良いことも何もなく育って来た少女。その結果、様々なことに物怖じし、会話の際も常にどもってしまうようになっていました。しかし、彼女は練習艦ドラコニアでは名前を呼んでもらえ、人間として過ごせるようになったと言います。

普段はどもり続けるジュリエッタが

どもらなくなる時。

そんなジュリエッタが、ドラコニアで過ごした同胞のために「覚醒」するシーンは激熱です! 二人は一体何者なのか。

又、読み進めるとコゼットそっくりな少女キャロル・サリバンが登場します。外見だけでなく、チキンステーキにたっぷりマスタードをかける所まで同じ彼女とコゼットの関係は何なのか。謎が謎を呼びつつ、続きを捲る手を加速させてくれます。

 

女子戦記もの

ジュリエッタは、やがて最新鋭空母ジュゼッペ・ガルバルディ(通称:バナナボート)に乗る王室戦時特殊戦闘団に配属されます。そこには、多数のクセのある翔姫たちが。

エースの資質をもったジュリエッタの勧誘を巡って口汚く罵り合う第3機動小隊のメリルマローダーと第2突撃小隊のサナエや、

第4機動小隊のリズリサに第5支援小隊のヨシノガワ。

そして、A中隊隊長のリルカに副隊長のハイラル。個性豊かな美少女たちが、今後絆を深めつつ共闘していくと考えると胸が熱くなります。個人的には、第3機動小隊のマツリ・ムタツジさんのお嬢様感と第5支援小隊のヨシノガワ・テツロー・パチャンガさんの曲者感が好きです。

推して行きます。美少女たちの軍事物ということで、『E.G.コンバット』や『マヴラブオルタネイティヴ』、『クロスアンジュ』のような作品の雰囲気が好きな方には強くお薦めです。

 


美しい背景

バナナボートの中の食堂は、デザートも充実していて私自身が搭乗したいレベル。そして、美味しい料理と共に美しい景色の投影(プロジェクション)も楽しめる場所でもあります。

これだけでも読む理由になる美麗な背景

その他にも、異星と思われる場所の風景が非常に精緻で美しく、一枚絵から伝えられる異世界観が非常に素晴らしいです。こういう背景を眺めるためだけに読み続けたいと思わせられるほど。シリウス作品らしい魅力だな、と感じました。今後も、宇宙の数多な場所を駆け巡って色々な景色を見せて欲しいです。

 


不穏な表紙

多くの美少女たちが楽しそうに笑っている表紙。この表紙からだと、作中のハードな状況は想像しにくいかもしれません。あまつさえ、萌系のゆるふわ作品であると思われてしまうかもしれません。

しかし。よく見ると、主要人物二人以外の顔の部分に赤い×マークが付けられています。不穏あまりにも不穏です。では、この赤い×マークが付いているキャラクターたちは、作中でどうなるのか……。そこは是非とも読んで頂きたい所です。

 

つまり、読むべきです

このように、様々な美点のある『さよならジュリエッタ』。まとめると、絵が綺麗で、話は意外にもハードで謎もあって面白くて、キャラクターは個性豊かで、バトルシーンは爽快感があって、百合要素もある。つまり、素晴らしい漫画です。表紙から想像する内容で敬遠してしまうこともあるかもしれませんが、それは非常に勿体無いと言えましょう。正直、新人とは思えないクオリティであり、2016年の新人賞を選ぶなら確実に候補に挙げたい位の作品です。

最終話を読み終えた後に、このタイトルをどう反芻することになるのか。今から楽しみですが、それ以上にずっと彼女たちの掛け合いを見ていたいので終わらないで欲しいと願うようになるかもしれない……そんな予感もしています。アイヅバンダイビーフボールを食べながら応援したい所存です。

 

(文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿)

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