こんなに眩しく走れない!箱根駅伝出場の高橋しん、待望の駅伝青春グラフィティ『かなたかける』

佐藤 茜2016年08月18日 印刷向け表示
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かなたかける 1 (ビッグコミックス)
作者:高橋 しん
出版社:小学館
発売日:2016-03-30
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駅伝を最後まで見た事がなかった。だって走ってるだけでしょ?

でも次の駅伝は間違いなく最初から最後まで見るだろう。
走ることが、こんなにも心を揺さぶるとわかったのだから!
 

東京から箱根の町に転校してきた「かなた」は、走る事が好きな女の子。そんなかなたが気になる「はると」は、走るのなんか何が面白いのかわからないという男の子。二人を中心に、少年少女は駅伝大会へと挑戦することに…! 青春を駆け抜ける、駅伝グラフィティー。 (『かなたかける』高橋しん(著)小学館  1巻紹介文より)

あらすじだけ読むと、よくあるボーイミーツガール的なマンガではないか?と思われるかもしれない。しかしそんな凡庸さとはかけ離れた物語だ。まず、信じられないかもしれないが、読むと紙面全体から、まばゆいばかりの命の煌めきがほとばしっているのを感じる。例えるならば、朝日、それも元旦の光だろうか。一体これは何なのだろう?と思いながらも、光に導かれてどんどん読み進めてしまう。
 

とにかくキャラクターたちの表情が底抜けにいい。『かなたかける』高橋しん(著)小学館  1巻

残念ながら本作は電子書籍が出ていないため、一部キャプチャ画像が下手な撮影に頼る事になってしまい(本当にすみません)、その魅力の100万分の1も伝えきれていないだろう。しかし、これはマジな話なのだ。風光明媚な箱根を舞台に、発展途上の小学生が力の限り走る。たったそれだけ?いやもうこれ以上のロケーションとシチュエーションはないのだというくらいに、圧倒的な光をもって読み手の心を浄化していく。

『かなたかける』高橋しん(著)小学館  1巻

『かなたかける』高橋しん(著)小学館  1巻

思えば駅伝というのは、特殊な競技だ。走るのはまぎれもなく個人だが、”たすきをつなぐ”という行為があるため、団体競技に他ならない。戦っている間は誰もカバーできないのに、戦果はダイレクトに次の走者に、チームの戦果に響くのだ。次につなぐために走り、今の走者がくることを信じて待つ。紙面の光はおそらくこの競技の持つ特殊性が発生源だろう。孤独と連帯という相反するものがひとくくりになったことで生まれる、信頼の上になりたった戦いの、なんと美しいことだろうか!

その駅伝のリアルな光を描いたのは、ご存知、高橋しん先生。山梨学院大学出身の箱根駅伝・全日本インカレ・全日本大学駅伝に出場したプレイヤーで、物心ついたころから上の兄2人と共に朝6時に起きてランニング、寝る前は腕立て腹筋というから相当である。走っている間の選手のマインドや、競技のポイントなど、確かな実体験を元にした、他の追随を許さぬリアリティある描写の説得力には脱帽だ。走ってる間に、こんなに考えなきゃいけないことがあるなんて思わなかった。さらに、『いいひと。』や、『最終兵器彼女』で見せたような繊細ながらも現実的で、思わず友達になりたくなってしまうようなキャラクターが多く登場し、選手を応援するようにファンになってしまうこと請け合いである。

『かなたかける』高橋しん(著)小学館  1巻

話はまだ2巻。ようやく初めての駅伝大会で走り始めたところだ。駅伝を走るキャラクター達は今、小学生。その、小さな手足をめいっぱい伸ばして走るけなげな姿を無視することなんて誰が出来ようか!応援せざるを得ない!!

それにしても、キャラクターが走る姿を見るだけで泣く日がくると思わなかった。誰も死なず、不幸もなく、ただただ、右足と左足を交互に出して前に進むだけの原始的行為。しかしそれが、なんともいえずに涙腺を刺激する。

まるで走った後のようなデトックス感をもたらす作品。

オススメです。

かなたかける 2 (ビッグコミックス)
作者:高橋 しん
出版社:小学館
発売日:2016-06-30
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