美しい体型のバレエダンサーがしてるストレッチってどんなの?『アヒルのバレエ』

佐藤 茜2016年08月26日 印刷向け表示
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アヒルのバレエ (リュエルコミックス)
作者:胡原 おみ
出版社:実業之日本社
発売日:2015-09-16
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「汚い。」
かなりのパワーワードだが、これが割と日常的に言われる世界がある。
SMではない。クラシックバレエだ。

『アヒルのバレエ』胡原 おみ(著)実業之日本社 33P

日本でバレエダンサーとして一般的に知られている熊川哲也だが、彼でさえローザンヌ国際バレエコンクールの舞台では解説者に「ひざ下が短い」とコメントされていると言われている(もちろん、彼の踊りは見事というほかないが)。

クラシックバレエの世界は、よく言えば率直、悪く言えば無神経なくらい、体型や動作について細かくコメントを投げかけられる。これはクラシックバレエの型が厳密に決まっており、そこからはみ出したものはすべて「出来ていない」とみなされることに起因する。例えば、右手を下から上へ引き上げる振り付けがあったとして、そのときの肩甲骨とひじ、手首、手先の位置はおろか、頭、首、背骨、骨盤、足先の位置までが決まっている、といえばわかるだろうか。

『アヒルのバレエ』胡原 おみ(著)実業之日本社 30P

更に、体型・体格によるNG(甲の高さなど)も存在する。訓練すればある程度はどうにかなるものもあるが、どうしてもできないものもある。そうするともう生まれ変わるしかない。注意するほうも一苦労なんである。

ともすれば厳しすぎる世界ではないかと思われるが、マイナス面ばかりではない。率直なコメントは、正しいポジション、ポーズ、ポージングができたときにもキチンと投げかけられるのだ。

「美しい。」

『アヒルのバレエ』胡原 おみ(著)実業之日本社 34P

これもかなりのパワーワードであり、特に日本では(ごく一部の美人を除いて)、言われることは少ないであろう。この言葉を得たときの満足感と高揚感ときたら!脳内麻薬ドバドバなんである。また不思議なのが、正しいポジションがとれると、本当にきれいに見えるのだ。おお、かくも偉大なる、バレエの歴史を積み上げてきた先人たちよ!

さて、本作、『アヒルのバレエ 』は、バレエ初心者のOLの果穂(かほ)と経験者漫画家の優(ゆう)が、大人になってバレエ教室に通うお話だ。作者の胡原おみ先生は、3歳からバレエを習い、現在も続けている方なので、とってもリアリティと愛がある。トウシューズを「この世で一番女性を美しく見せるクツだ」と紹介したり、ダンスだけでなく、ストレッチを細かく描いているなどなど。ストレッチ、簡単そうに見えるけど、やるととっても難しい(ぜひ試してみてください。びっくりするほどできません)。

『アヒルのバレエ』胡原 おみ(著)実業之日本社 15〜16P

果穂と優は同棲している同性カップルなので百合作品ともいえるのだが、ほかの異性カップルと同じような認識で話が進んでいくのも、またいい。ジェンダーフリーが進む事で、将来的にはこういった作品が増えていくのだろう。お話自体も、過去のコンプレックスと向き合って克服していく様子がなんとも勇気づけられて、キャラクターのことを応援したくなること請け合いだ。バレエなのに画鋲も入れられたりすることなく、優しい世界が広がっている。

また、特に気に入ってるのが、バレエの古典作品を一言で説明するコーナーだ。「合ってるけど!身もふたもない!」感がたまらないのである。もうこれだけでもどこかで連載して、バレエ作品を全部解説してほしくなった。

『アヒルのバレエ』胡原 おみ(著)実業之日本社 87P

ちなみにバレエのストレッチ、やってると気持ちよくなってくるので、デスクワークで凝り固まった筋肉をほぐすのにも、もってこい。

ただ完璧にポーズをすぐ真似できるかというと全然できないので(笑)、やっぱり美しい白鳥になるには水面下でむっちゃ努力が必要なんだな〜と再認識する。あと、「汚い」を「美しい」に修正していく作業に耐えられる精神力も。

バレエダンサーの美しいボディラインの秘密の一旦を覗ける作品。

オススメです。

(薄着の季節、気になるお腹を見つめ直しながら)

 

絢爛たるグランドセーヌ 1 (チャンピオンREDコミックス)
作者:Cuvie
出版社:秋田書店
発売日:2014-02-20
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 こちらはプロを目指す厳しさが更にどーんと追加されている。やっぱりスクワットを芸術に昇華しようとすると、そりゃもう大変なんである。

 

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