弱者として食い物にされ風俗に堕ちていく「人間の弱さ」の解説書『ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!』 ホリエモンは実は「人間の弱さ」についての達人

角野 信彦2016年09月02日 印刷向け表示
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ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!
作者:堀江 貴文
出版社:小学館
発売日:2016-09-03
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これは、堀江貴文が『闇金ウシジマくん』について語ることで、「人間の弱さ」の類型について明らかにする本である。トルストイが『アンナ・カレーニナ』の冒頭で、

すべての幸福な家庭は互いに似ている。不幸な家庭はそれぞれの仕方で不幸である。

と言っている。「人間の強さと弱さ」に関して言えば全くこの逆、「強さ」はそれぞれの仕方、「弱さ」に関しては似かよっているといえる。「強さ」の源泉というのは、社会における希少性がもとになる、よって他人と似ている「強さ」を持っている人というのは基本的に存在しない。

一方で、「人間の弱さ」というのは、常に似かよっている。その「人間の弱さ」に関する博物館といえるのが『闇金ウシジマくん』というマンガである。そして、その「人間の弱さ」に実に造詣が深いのが堀江貴文なのだ。

この本でもとりあげられている、「洗脳くん」編の元ネタのひとつになった「北九州連続監禁殺人事件」の松永太という男は、被害者家族のなかから最初のターゲットを定め、無理やり肉体関係をもった上で、それを脅迫に使いながら、家族の財産を侵食していった。

道徳的な意味であっても、法律的な意味であっても「公開できないふたりだけの秘密」を持ってしまったら、それを悪用しようと思えばいくらでも可能だ。第一勧銀から数百億を超えるカネを引き出した伝説の総会屋、小池隆一の手口も全く同じ。

堀江が何かをマスコミから隠そうとしたり、ましてやウソをつくことが全く無いのは、こうした「人間の弱さ」をよく知り、どう対処すべきなのかをよく知っているからで、この『ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!』を読んで得られるのは、こうした種類のなかなか書籍にならない知識なのである。

僕は2004年にライブドアパブリッシングの設立のときに堀江とはじめて会っているが、「ウツの人間と酒を飲んで話してはいけない」など、実に細かく、従業員のケアに心を配っていたことをこの本で始めて知った。この本にもいくつか事例が書かれているが、世間の印象とちがって実によく社員の相談にのっている。その際に、相談にのる社員とそうでない社員の判断基準なども示されている。この本には、『闇金ウシジマくん』とコラボしたことで、堀江の今までに本になっていない一面がたくさん盛り込まれている。全ての堀江貴文の本を読んでいる人も、これだけは外せないという一冊になっている。

最後に、「人生はカネじゃなくて、それよりも何が重要なのか?」については、本を読んでみてほしい。そこで語られる、堀江の「人間の弱さ」を熟知した上での行動原理は、どんなビジネスマンにとっても有用なはずだ。9月3日発売なので、『闇金ウシジマくん』を読んでスタンバイすることをオススメする。

闇金ウシジマくん 26 (ビッグコミックス)
作者:真鍋 昌平
出版社:小学館
発売日:2012-11-30
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闇金ウシジマくん 27 (ビッグコミックス)
作者:真鍋 昌平
出版社:小学館
発売日:2013-02-28
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闇金ウシジマくん 28 (ビッグコミックス)
作者:真鍋 昌平
出版社:小学館
発売日:2013-06-28
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 本書でもとりあげられた北九州連続監禁殺人事件が元ネタのひとつになっている「洗脳くん」編の3冊。『闇金ウシジマくん』のリアリティのある怖さ、「人間の弱さ」の詳細な描写などの魅力が爆発する傑作です。

尼崎事件 支配・服従の心理分析
作者:村山満明
出版社:現代人文社
発売日:2016-01-05
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 興味があるかたはこちらもどうぞ。第二の北九州連続監禁殺人事件といわれる尼崎事件を心理学的に分析した本。HONZの内藤のレビューもあります。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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