仇敵の四肢を切断し目耳口を潰した中国三大悪女・呂雉が超絶美少女に!? 新たなる劉邦伝説『レッドドラゴン』

マンガサロン『トリガー』2016年09月11日 印刷向け表示
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レッドドラゴン (1) (カドカワコミックス・エース)
作者:池野雅博
出版社:KADOKAWA/角川書店
発売日:2016-08-23
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紀元前200年頃といえば、秦の始皇帝となった贏政により初めて中国全土が統一された時代。近年人気が爆発している『キングダム』で描かれている時代でもあります。

『キングダム』を読まれている読者はご存知の通りですが、後の始皇帝である政は賢王として世界良きものにするために闘い続けます。しかし、結果的になまじ賢かったが故に民主政治ではなく専制政治の道を選びました。

「最悪の民主政治でも、最良の専制政治に優る」

というのは『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーの言葉ですが、どんなに優れた王の治世があったとしても、そのたった一人の王が死んでしまえば体制は一気に変化してしまうのが専制政治の脆弱な部分です。ラインハルト・フォン・ローエングラムやカイル・ムルシリが統治していた間は民も束の間の幸せを享受できていましたが、残念ながらそれらは永続的なものとはなりませんでした。

始皇帝崩御後に二世皇帝として即位した贏政の実子・胡亥もまた、愚昧な王として有名です。贏政は文字・貨幣・測量単位などを中国全土で統一し、万里の長城を建設するなどの功績を残しますが、無理な徴用もあり結局民が苦しむことに変わりはなかったというのは皮肉なものです。

そんな乱れた時代の中で、「人が人として暮らせる当たり前の世の中を作りたい」として新たな時代を築こうとする盧綰と劉邦を中心に描かれるのが、この『レッドドラゴン』の物語です。

秦の始皇帝の時代の後と言えば司馬遼太郎や横山光輝による名作『項羽と劉邦』がありますが、ぜひそれらと読み比べていきたい作りとなっています。少年漫画寄りの現代的でスタイリッシュな絵柄によって、様々な新解釈を行いながら楚漢戦争前後の中国を舞台にした群像劇が描かれて行きます。

戦乱の時代を描いた物語の華といえば、勇猛な武将や英明な軍師。そして、それらの人物による軍略の駆け引きや一騎打ちでしょう。『レッドドラゴン』でも、冒頭から劉邦の知略と盧綰の武力が存分に輝きを放ちます。

飄々としながらも非常に切れ者である劉邦

剣戟の迫力が素晴らしい!

頭に血管が浮き出て鼻血まで出す猛将・董翳

章邯・司馬欣と共に「三秦」と呼ばれた董翳は非常に苛烈な男として描かれており、盧綰と董翳の闘いは一巻の大きな見所の一つです。

又、あの呂不韋の一族であり、則天武后、西太后と並び「中国三大悪女」(たまに『封神演義』でお馴染みの妲己が加わることも)とも称される呂雉が、クセのある魅力的な美少女に描かれているのもポイントです。

可愛すぎる女領主。裏表紙でもその魅力を溢れさせています。

呂雉は戚夫人を坊主にして奴隷扱いとし、殺人犯に輪姦させた後に四肢を切り落とし、眼球を抉り取り、薬で耳・声を潰し、豚の這い回る便所に捨て「人彘(人豚)」と呼んだという強烈な逸話があります。呂雉が内助の功を尽くしながらも劉邦の女癖の悪さは止むこと無く、またそれに付け込んだ戚夫人が太子の座を簒奪しようと目論んだということで、気持ちは解らなくもないのですが……。

「(呂雉は)頭も良さそうだし金持ちだしその上別嬪だ
何が不満なんだ?」
と尋ねる盧綰に対し、

オッパイだ
アレは貧乳…
いや…もっと不毛な
それこそ中原の大平原を思わせる絶望的虚乳」

とのたまうコミカルな劉邦の描写も、そんな史実を知っていると味わい深いものに感じられます。

直接的な闘いだけでなく、呂雉に協力を請うための舌戦を始め劉邦の交渉もまた見所です。

魅力的な人物が続々と登場して来て、遂にはあの一騎当千の男が……! という所で終わる一巻。楚漢戦争の時代はまだまだこれから着目すべき人物や闘いも数多いですし、劉邦たちがどのように解釈されて描かれるのか今後も楽しみです。

『三国志』や『キングダム』が好きな方は勿論、そうでない方も是非お手に取ってみて下さい。

 

文:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

 

項羽と劉邦 (上) (新潮文庫)
作者:司馬 遼太郎
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 これらと読み比べることで、面白さは倍増するでしょう。

 

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