すでにゲームは終わっているのに、ぼくだけ認めてない感じ。末期ガン患者の心の底を描く『ガンカンジャ』

菊池 拓哉2016年09月25日 印刷向け表示
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不治の病に苦しむ人々の闘病記というのは、読むと胃の奥の方がズーンと重くなるし、当然ながら愉快なものではない。
それでもぼくがこの作品のレビューを書きたいと思ったのは、そこに描かれている物語が安易な悲劇や感動譚ではないと感じたからだ。

 

ガンカンジャ 1 空は高くいい天気なのに
作者:フツー
出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
発売日:2016-07-29
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『ガンカンジャ』というタイトルの通り、これは末期の胃がんを患った青年を主人公とするマンガだ。作者のフツーさんは、大学在学時からがん患者を支援する団体の事務局長を務めており、過去には父親をがんで亡くしている。
作者のそんな経験もあってか、『ガンカンジャ』の登場人物たちが発する言葉には実像を帯びた重みがある。

 

末期ガンを患った息子にかける言葉が見つからず、ひたすら謝る母親。

 

彼氏がガンであることを知り、「ムカつくわよぉ…」と泣きじゃくる女性。

 

誰が悪いわけでもないとわかっていても、それを誰かのせいにできるのだとしたら人は幾分救われるものだ。怒りや憎しみの矛先が用意されている「不幸」には、まだ救いがある。
しかし、「末期がん」という現実はそれすらも許してくれない。そこにあるのは、ただただ残酷で手の打ちようのない不条理だ。

 

 

もしも自分が何の前触れもなく「あなたは末期ガンです。もう助かりません」と告げられたとしたら、「はい、そうですか」と受け入れることなどできるだろうか。あるいは、もしも自分の大切な人がそのような状況になったとしたら、一体どんな言葉をかけてやればいいのだろうか。

きっと、その答えはどれだけ考えても出てこないだろうし、当事者でないぼくがいくら想像を巡らせたところで、いまこの瞬間に闘病生活を送っている方々やその家族の苦悩に寄り添うことはできない。そもそも、今すぐに答えを出せるような問題でもないのだ。

しかし、それでも想像し続けることには意義がある。

『ガンカンジャ』を読んでからというもの、心の片隅を冷たいスプーンでぐりんとえぐられて、くぼみに重い鉛を嵌め込まれてしまったような感覚が残り続けている。もしかするとこのマンガは、「いかに生きるべきか」という答えのない問いを読者の心に打ち込む役割を果たしているのかもしれない。


『ガンカンジャ』は 2016年9月22日時点で2巻まで刊行されており、現在もレジンコミックスで連載が続いている。このさき主人公がどのように生と向き合い、人生を歩んでいくのか、読者として、そしてひとりの人間として、最後まで見届けたいと思う。

 

ガンカンジャ 1 空は高くいい天気なのに
作者:フツー
出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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ガンカンジャ 2 夢の中だけでも安らかに
作者:フツー
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発売日:2016-07-29
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